なぜAppleは「半導体」と「製品」のトップを統合したのか クック退任より重要な「CHO新設」と究極の垂直統合本田雅一のクロスオーバーデジタル(2/4 ページ)

» 2026年04月22日 16時00分 公開
[本田雅一ITmedia]

クックCEOの15年で完成した「半導体設計の内製化」

 もっとも、このCHOというポストができた背景には、その職務を組み立てられるだけの技術資産がAppleにそろったことがある。そこを理解するには、クックCEO時代における15年の半導体内製化の歩みを押さえておく必要がある。

 クック氏が2011年にCEOを引き継いだ時点で、MacはIntel製CPUに、iPhoneはSamsung Electronics製SoCにそれぞれ大きく依存していた。そこから15年をかけて、Appleは主要な半導体のほぼ全てを自社設計する企業へと変貌した。

 AチップシリーズやMチップシリーズに加え、Apple Watch向けのSiP(System in a Pack)である「Apple Sチップ」、AirPods向けのSoC「Apple Hチップ」、UWB(広帯域無線)通信を実装するためのSoC「Apple U1チップ」、Apple Vision Proのセンサー入力を担うSoC「Apple R1チップ」まで、カテゴリーごとに専用半導体を用意している。2024年末からはiPhone用モデムの内製化を進めて、Qualcommとの距離を取り始めた。

C1モデム AppleはIntelからセルラーモデム(携帯電話ネットワーク用モデム)事業を買収し、5年がかりで自社設計のセルラーモデム「Apple C1」をリリースした

 この半導体の内製化(厳密には自社設計化)こそが、Appleの競争優位の基盤である。2020年にM1チップ搭載の「MacBook Air」「MacBook Pro」が登場して以来、IntelやAMDのCPUは少なくともノートPCにおける電力効率の勝負で後手に回ってきた。2025年秋に登場した「M5チップ」は、その差をさらに広げる方向に進んだ。

 LLM(大規模言語モデル)による推論をローカルで日常的に回す準備が、ノートPCの側でも整いつつある。

M5チップ Mac向けApple Siliconの第5世代である「M5チップ」ファミリーは、パフォーマンスと効率性をより高めている

 もちろん、こうした半導体の内製化を経営判断として支えたのはクックCEOだ。だが技術面で主導してきたのはスルージ氏であり、それを製品として束ねてきたのがターナス氏の部隊だった。今回、AppleがCHOというポストを新設するのは、スルージ氏とターナス氏の仕事上の関係を、そのまま組織構造に反映したものと見るのが自然だろう。

苦戦した面がなかったわけではない

 一方で、“クック時代”の後半には、新カテゴリーを創出する観点で苦戦も見えた。Apple Vision Proは野心的な取り組みだったが、販売は伸び悩んだ。そして自動運転車を自社開発する「Apple Car Project」は、10年の期間と約100億ドルを投じた末に、2024年をもって中止された。

 Apple Intelligenceは度重なる延期に見舞われ、次世代の「Siri」の核となるAIモデルには、Googleの「Gemini」をライセンス契約に基づき利用する決定が下された。これらは、ターナスCEOが引き継ぐ“宿題”でもある。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年04月22日 更新
  1. 2026年版Surfaceはどうなる? 正面衝突を避けるMicrosoft、10万円切り「MacBook Neo」対抗への秘策はあるか (2026年04月21日)
  2. “世界初のPC”って何だ?――「VAIOの日」(8月10日)に発表へ ノジマ野島社長が明かすVAIOの現在地 (2026年04月22日)
  3. ノートPCの拡張性を大幅に向上、デスクトップ並みの環境を構築できる「UGREEN Revodok Pro 314」が43%オフの1万2590円に (2026年04月20日)
  4. エレコム、Type-Cドック機能を備えたアルミ製タブレットスタンド (2026年04月21日)
  5. 「REGZA」ブランドからワイヤレスイヤフォン登場 国内初の「RGB Mini LED搭載液晶TV」も追加投入 (2026年04月21日)
  6. ノジマが約1100億円で日立の家電事業を傘下に 2026年度中(予定) (2026年04月21日)
  7. Windows Serverに「帯域外更新」 4月更新の適用で「ドメインコントローラー」が繰り返し再起動する事象を受けて (2026年04月20日)
  8. 「SwitchBot スマートデイリーステーション」を試す “今日何着ていこう?”を解決する電子ペーパーお天気端末 (2026年04月22日)
  9. ジョブズ氏の帰還からAI時代へ――Appleが描く「パーソナルAI」の未来は原点回帰なのか (2026年04月20日)
  10. レノボ、27.6型スクエアディスプレイを搭載したCore Ultra搭載一体型デスクトップなど2製品 (2026年04月21日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2026年