手首の負担を減らす“逆チルト”が秀逸! Razer初の多機能エルゴキーボード「Pro Type Ergo」はオフィスの救世主に(4/4 ページ)

» 2026年06月26日 12時00分 公開
[瓜生聖ITmedia]
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Synapseでカスタマイズ

 Razer製品のカスタマイズは、ほぼ全て先ほど挙げた設定ソフトのSynapseで行う。本機の場合はキー設定とライティング設定が中心となる。キー設定はSynapseのデバイス別タブからカスタマイズを選択するが、マクロはマクロタブから設定した上で、デバイス別タブのカスタマイズで割り当てる。

 ショートカットする手段も用意されているが、今、自分がどの階層の設定ツールを使っているのか分かりづらい。

 ライティングについてはさらにややこしい。Synapseのデバイス別タブでライティングを選択すると、クイック効果と高度な効果のいずれかを選択する画面が表示される。

 クイック効果ではブリージング、スペクトラムサイクリングなど4種のエフェクトから選択し、高度な効果を選択した場合はさらに別アプリRazer ChromaのCHROMA STUDIOで作成した設定を選択する。

 Razer製品を既に使っている読者にはなじみ深いツールかもしれないが、オフィスユーザーにはちょっと分かりづらい。もっとも、そういうユーザーのためにクイック効果が用意されているのかもしれない。

photo カスタマイズは設定ソフト「Synapse」で行う

 キー設定についてはかなり幅広い設定が可能で、単なるリマップの他、ランチャー、Windowsナビゲーション、Windowsショートカット、マウス操作、テキスト入力、マクロなどが設定できる。

 テキスト入力は日本語にも対応している。仕組みとしては、入力テキストをいったんクリップボードに保存してペーストし、その後元のクリップボードの内容を復元する動作を行っているようだ。

photo 一般キー含め、各キーに割り当てられる機能は非常に豊富だ

 マクロを新規作成する画面では、マクロ内に追加できる「アクション」として遅延、キーボード機能、マウス機能、マクロ(マクロ内マクロ)、起動、コマンド実行、テキスト機能、ループの8種類が並ぶ。これはもはや単なるキーシーケンスの再生ではなく、軽量な自動化ランチャーと呼んだ方がしっくりくる表現力だ。「コマンド実行」が選べるという時点で、キーボードの設定アプリの守備範囲を大きく超えているといえるだろう。

photo マクロに登録できる機能/操作は豊富だが、どれを使うべきか迷うかも

 逆に意外な制限もある。「キーボード機能」のキー登録では、Winキーを含む修飾2個+通常キーの組み合わせを受け付けないようだ。

 例えば、Win+Shift+S(スクリーンショット)キーは、キーボード機能としては設定できない。だが、これは同じキーボード機能でもナビゲーションから右を選択、修飾キーを含める、Shift、Windowsキーで設定できる。

 また、マクロでWinプレス、Shiftプレス、Sプレス、Sリリース、Shiftリリース、Winリリースと設定することでも可能だ。実用上の問題はないものの、この設定方法にたどり着くのは少々難易度が高いように感じた。

photo スクリーンショットのキー設定は意外に難しい

 前述の通り、ライティング設定の高度な効果はRazer ChromaアプリのCHROMA STUDIOタブで行う。本機のRGBライティングはキーごとではなく、19に分割されたゾーン単位で行うが、この分割ラインがやや分かりづらい。

 カラーパターンを編集してみると、その分割は縦じま状になっていることが分かる。横方向にエフェクトを流すウエーブやスペクトラムサイクリングが映える設計で、逆に縦方向に変化を付けるアニメーションには向かない。もっとも、オフィスユースという大前提を踏まえれば、十分に多彩な表現が可能といえる。

photo ゲーミングキーボード譲りの美しいライティング
photo ライティングは19分割されたエリアで指定

ゲーミングブランド発のオフィスキーボード

 冒頭で触れたMicrosoft Naturalの系譜は、1994年の初代から2013年のSculpt Ergonomicへ受け継がれた後、Microsoft自身がキーボード事業から手を引いたことで途切れたかに見えた。だが、同様のスタイルを持つスプリット型エルゴキーボードは2019年の「Logicool ERGO K860」など、他社からも断続的に発表されている。

 その系譜から見ると、Razer Pro Type Ergoの特徴は指の動きの少ないロープロファイルで設計し直したこと、およびキーリマップや5系統接続、1000Hzポーリングといった現代の技術を盛り込んだことになるだろうか。

 業界の方向性に目を移すと、ここ十数年はオフィス系ベンダーがゲーミングへ進出する流れが圧倒的に主流だった。東プレの「Realforce GX1」、ロジクールのGシリーズ、エレコムのELECOM GAMING、Kingstonから生まれたHyperX(現在はHP)──いずれも既存の周辺機器ベンダーがゲーミングという成長市場に新たな顧客を求めて参入した形だ。

 一方で、ゲーミングからオフィスへ向かう逆方向の例は驚くほど少ない。明確な戦略でこの方向に取り組んでいるブランドはなかなか見当たらない。

 その理由は定かではないが、1つにはゲーミングキーボードには高性能/高機能が切実に求められ、その見返りに高価格帯でも受け入れられることが挙げられる。そのようなキーボードを既に作っているゲーミングキーボードメーカーがオフィス向けキーボードを作ったとき、消費者はそこに何を求めるだろうか。その問いに本機でRazerが示した答えは何だったのか。

 30年越しの系譜の続きを、しばらく観察してみたい。

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