もう1つ、Copilotキーの役割を縮小せざるを得ないという事情を引き起こすトリガーとなっているのが「AIエージェント」の存在だと筆者は考える。
当初、MicrosoftはCopilotキーの搭載を検討し始めた2023年から2024年にかけて、Windows OSの基本画面やその上で動作するアプリから「AI的な機能(Copilot)」を逐次呼び出すための仕掛けとして、Copilotキーのような仕組みが必要になると考えていたのかもしれない。
標準アプリへの「Copilotボタン」の積極的な搭載もその一環であり、そうしたAIの実行環境としての「AI PC」や「Copilot+ PC」の仕様策定につながったのだろう。そうした便利なAI機能をローカルとクラウドのどちらで動かすにしろ、橋渡しとしてのCopilotキーの重要性が高まるという認識だったはずだ。
だが現在、AIの世界はさらにその想像を超え、“単機能”として呼び出すものから、“AIエージェント”を通じて特定の目的遂行のために複数のアプリをまたいで人間が普段行っている作業も含め、“まとめて実行”してしまうスタイルへと移行しつつある。
つまり、従来のPCでの作業の合間にチャットボット(Copilot)を呼び出して作業の一部を任せるのではなく、“オーケストレーター(Orchestrator)”と呼ばれるAIエージェントの統括者が人間が行っていた作業も含めて複数の機能(AIエージェント)を適時呼び出し、「人間の代わりに(オーケストレーターと呼ばれる)AIエージェントに一連の作業を全てバックエンドで任せてしまう」という流れになるわけだ。
下記は先日開催されたAMDのAIイベントでのスライド資料の抜粋だが、2026年にはチャットボット中心の世界からAIエージェントが一連の作業を代行する形にトレンドがシフトするので、PCやサーバのアーキテクチャもそれに合わせて最適化する必要があるという話題に触れている。
「AMD AI Advancing 2026」で公開されたスライド資料。従来の作業スタイルでは推論の実行にGPU(またはNPU)の比重が特に大きかったが、今後はAIエージェント中心の世界となることでCPU上でのAI処理の実行の比重がますます高まるというこれが何を意味するのか。これまでは作業の一部を肩代わりさせるために単機能として毎回人間が“CopilotのようなAI機能”を逐次呼び出していた。しかし、AIエージェント中心の世界では1回指示を出せば、一連の作業の途中で何度か呼び出されるであろう“CopilotのようなAI機能”は、全て“オーケストレーター”として機能しているAIエージェントが呼び出してしまうことになる。
つまり、それだけCopilotキーを押す機会が激減してしまう。便利機能として実装されたCopilotキーが、市民権を得る前に“より便利な機能”によってその役割を終えてしまう未来が見えつつある。
おそらくだが、このAIの進化スピードはMicrosoftも予想し得なかった話で、数年先のトレンドを最先端企業であるMicrosoftでさえ読み切るのは非常に困難だという、“別の意味での象徴的な出来事”だったのかもしれない。
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