Project Zenithがターゲットとするのは、ローカル環境でAIコーディングをするような開発者だ。以前に、Microsoft社内での外部フロンティアモデル利用による支出の増大にまつわる話を紹介したが、AIコーディングでは膨大なコードをプロンプトに取り込むためトークン消費が膨大になり、結果としてクラウド経由のAI利用では1つの開発案件に膨大な支出が要求されるという課題がある。
特にAIコーディングでの開発においては何度もリトライ作業が発生するため、その間に消費されるトークンもばかにならない。これがもし、ローカルAIである程度コーディングやテストを済ませてしまい、必要最低限の部分だけクラウドAIに任せることができればトークン消費を最小限で抑え込むことが可能だ。
もう1つ、ローカル環境でのAIコーディングで大きいのはソースコードを外部に出さない点だ。ソブリンAIという考え方もあるが、物理的に外部のネットワークにソースコードを預けないのであれば、企業秘密の観点からはセキュリティ上のメリットになる。
特に、こうした開発環境で外部ネットワークとの接続やソースコードの持ち出しをポリシー上禁止している企業もあり、そうした環境においてProject ZenithのようなローカルでのAIコーディングを推進する製品は強みとなる。
実際の反響を開発者コミュニティーやRedditなどの掲示板で眺めていたところ、面倒な作業を最初から調整してくれるのは歓迎するという反面、設定をいじっただけのOSを新製品としてハードウェアと抱き合わせで売るなという元も子もないような意見もあるなど、さまざまだ。
また、MXCの存在に将来的なAIエージェント開発環境としての可能性を感じたり、同容量のメモリを搭載したMacを購入するよりも安上がりなAIコーディング環境が得られるという点で歓迎できるという、前向きなコメントも見られる。ただ、このMacとの比較では割とシビアな意見も見られる。
最大の問題は、ユニファイドメモリのアクセス帯域にある。下記は最上スペックのメモリや構成を選択した場合の帯域幅だが、Ryzen AI Max+ 395でM4 Maxと倍近い差がある。M2 Ultra/M4 Ultraに至っては3倍以上だ。
NVIDIA RTX Sparkでは選別品で毎秒300GB近い数字が出るようだが、それでもM4 Maxに及ばない。毎秒256GBクラスの帯域の場合、70Bのパラメータを持つ密モデル(Dense)で毎秒数トークンレベルとなってしまい、実用的な速度は難しいとされており、おそらくは30Bクラス以下のモデル、あるいはMoE(Mixture of Experts)と呼ばれる部分最適化されたモデルの利用が中心になると考えられる。
実際のところ、メモリ容量が等価条件であれば帯域が全ての性能を決めてしまうため、支払った金額に応じた性能が得られるという点で、まだしばらく“ローカルAIマシン”としてのMacの優位性は揺るがないだろうと思われる。
一方で、フルスペックのMacを購入するまでもなく、比較的安価な価格帯でローカルAIマシンが入手できるという点で、Microsoftが提案するProject Zenithのような仕組みは多くの開発者にとっては朗報だろう。
少なくとも、一般的なグラフィックスカードのメモリでは実行できないようなAIモデルが動作し、将来的なツールなどの拡充も期待できる点が大きい。
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