「東京ゲームショウ(TGS)」と聞くと、さぞかしゲーム関連のブースが多いのかなと思う人もいるかと思うが、実はゲームソフトやPCを含むゲームハードウェア“以外”の出展も増加傾向にある。
TGS2026でも、その傾向には変わりなかった。その典型例として、XPPenやHUIONといったペンタブレットメーカーの出展がある。
ペンタブレットを含めて、デジタルイラスト関連のイベントといえば「コミックマーケット(コミケ)」をはじめとする同人誌即売会を思い浮かべる人も多いだろう。なぜ、ペンタブレットメーカーは“ゲーム”のイベントに出展したのだろうか。
取材を進めると、クリエイターのTGSへの来場スタイルや、実機展示に関する課題を踏まえた、メーカーの合理的な狙いが見えてきた。
ペンタブレットの訴求をするなら、やはりコミケのような同人誌即売会がピッタリじゃないかと考えてしまう。しかし、XPPenやHUIONの担当者から話を聞くと、ピッタリだからこそ、訴求の場として適しているとは限らない側面があるようだ。
同人誌即売会では、ペンタブレットの主な顧客となるイラストレーターの多くが出展者、つまりサークル側として参加する。そのため、自身の出展スペースの運営に追われがちで、企業ブースを回る時間を確保しにくいという。また、特にコミケでは会場の大規模化に伴い、企業ブースとサークルスペースの間を移動しにくくなっていることも課題となっている。
ただ、コミケではサークルとしての参加者が配置されるホールに、ペンタブレットの体験コーナーが設けられることがある。なので足を運ぼうと思えば不可能ではないものの、実際に出展側に立ってみると、自分のサークルスペースからほとんど動けないことが多いのだ。2026年8月のコミケにサークルとして参加した筆者としても、「(クリエイターが)企業ブースを回る時間が確保しにくい」という指摘に、実感をもって同意できる。
その点、TGSであればクリエイターも「一般来場者」として訪れるケースが多い。そのため、ブースを構えればクリエイターに製品の動作や描き心地をじっくり体験するしてもらえるのだという。
また、TGSはペンタブレットの実機を体験する場の“偏り”を是正する働きもあるようだ。
特に液晶ペンタブレットの展示や体験環境は、東京23区内(特に秋葉原周辺)や大阪市内(梅田や難波)に所在する大型家電量販店に偏りがちで、同じ家電量販店でも地方の店舗では展示されていなかったり、展示があったとしても比較できるほど機種がそろっていなかったりもする。地方では「実際に製品に触れて購入を検討する機会」が少ないのだ。
その点、TGSには大都市圏以外の地方から来場するクリエイターも多いので、実際に試せる場としてブース展示することにメリットがあるそうだ。一般公開日には、カラーバリエーションへの要望を始めとする「ユーザーの声」をメーカーが直接集める場としても活用しているという。
近年、イラストを描く過程をリアルタイムで配信するストリーマーも目立つようになった。加えて、TGSにはインディーゲームの開発者や背景デザイナー、教育機関の関係者も来場する。
このような背景から、ペンタブレットは「お絵描きツール」にとどまらず、「ゲーム制作やコンテンツ配信を支える入力デバイス」としてもニーズが高まっている。
一見“場違い”そうに見えて、実は幅広いユーザー層に訴求できる、またとない場所である――だからこそ、XPPenやHUIONはあえてTGSに出展しているのだ。
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