成果につなげるには、何が足りないのか。ロボトム氏は会見で、日本企業がAIを推進する上で直面する課題を、大きく4つに整理した。
1つ目は「Trusted AI」、信頼できるAIである。会見資料によると、セキュリティ、コンプライアンス、プライバシーへの懸念を挙げた日本企業は47%で、APJCの46%と同程度だった。企業のデータを安全に扱えるかに加え、AIの出力をどこまで信頼し、業務で利用できるかも問われる。
2つ目は「AI Skill & Talent」、スキルと人材の不足だ。日本企業の38%が課題として挙げた。ロボトム氏は、技術者だけでなく、営業や戦略の推進を担う人材も含めて不足していると指摘する。AIを導入するにも、それを業務に組み込むにも、人が必要になる。
人材の需給ミスマッチは、政府も課題としている。経済産業省の「2040年の就業構造推計(改訂版)」では、十分な国内投資や産業構造転換が実現するケースを前提に、AI・ロボットなどの利活用を担う人材が約340万人不足する可能性を示している。将来の確定値ではなく、産業構造の変化と人材供給の間に生じ得るずれを示す推計だ。
3つ目は「Investment & Outcomes」、投資と成果の関係である。会見資料では、リソースの制約がAI施策に影響しているとする割合は33%だった。成果を見込めなければ投資を決めにくいが、投資しなければ検証や展開も進めにくい。ロボトム氏は、成果が保証されない中での判断には、AIを信頼できるかどうかが関わってくると説明した。
4つ目は「AI Infrastructure」、AIを動かす基盤だ。会見資料では、AI、データ、セキュリティを横断する実行基盤が不足しているとする割合として、63%という数字が示された。
GPUやCPUを備えた新しいAI基盤を構築しても、それだけで業務に使えるようになるわけではない。どのデータをどこに置き、学習や推論にどう使うのか。さらに、複数の処理を自律的に進めるエージェンティックAIとして動かすなら、その処理の流れをどう設計するのか。これらはインフラと深く結び付いていると同氏は説明する。
こうしたAIの活用とリスク管理の両立は、日本政府の指針にも通じる。総務省と経済産業省が3月31日に公表した「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」は、人間中心、安全性、公平性、透明性などを共通の指針に掲げる。AIを使える環境を整えるだけでなく、安全に使い続けるためのガバナンスも必要となる。
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