ゲリラ雷雨を把握するサポーター投稿メディア――ウェザーニューズの気象革命(前編)松村太郎のノマド・ビジネス(2/2 ページ)

» 2008年10月09日 07時15分 公開
[松村太郎,ITmedia]
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民間リポーターが“肌で感じた気象状況”を予報に生かす

Photo ウェザーリポーターから寄せられる情報の解析画面

 「ウェザーニューズのサービス会員で、気象観測に協力してくれる『ウェザーリポーター』が2万人を超えました。リポーターからは日々、空の写真や肌で感じた気象状況が平均して3000通ほど集まってきます。晴れの日は少なく、雨や台風の時には急激に数が増えます。そんなリポーターに対して『雲を監視してください』というメールを出すところから、ゲリラ雷雨の観測が始まります。そのメールに対して、GPS情報付きで、今その場所がどういう状況かという反応が返ってきます」(上山氏)

 ウェザーリポーターに対してはGPS情報とともに、曇っているか雨が降っているか、もし降っていたら「ぽつぽつ」「ぱらぱら」「ざーざー」のうち、どんな降り方をしているか――を選んでもらう。一見、おおざっぱなこの情報が集約されると、雨の分布や勢力、移動速度、方角が分かり、「10分天気予報」が実現する。そして、加工された情報をケータイのWebを通じてリアルタイムに返している。

 このように、会員ユーザーを“簡単な観測地点”として情報を送ってもらうことによって、今までの気象観測や数値予報では再現できなかった超狭所、超短期の気象予報を実現できるようになったのだ。

Photo 一般からのリポートを採り入れたレーダー画面

コミュニティでゲリラ雷雨から身を守る

Photo リポートを投稿した隊員に送られるメール

 ウェザーニューズはモバイルサービスの中で、毎年、季節ごとのプロジェクトを実施する。春のさくらプロジェクトに始まり、梅雨には雨プロジェクト、秋は紅葉前線を追いかけ、冬には雪のプロジェクトがある。その中で、今年の夏はゲリラ雷雨に対する監視をプロジェクトとして実施したそうだ。

 「ゲリラ雷雨防衛隊というコミュニティを作りました。月額315円を支払う会員の中から隊員を募集したところ、『地域の役に立ちたい』という人が集まりました。自分で空模様や雲を見ても分からないですが、その写真を送って専門家に見てもらうことで気象予報に役立て、地域貢献につなげるという仕組みです。隊長であるウェザーニューズ社員は急に、1万人の部下を率いる観測組織を持つことになりました」(上山氏)

 気象観測は「人が観測すること」に意味があるそうだ。例えば雲の厚さは目視でしか確認できず、「5分前は暑かったが、急にひやっとした風が吹いてきた」という体感でしか分からない変化は、気象観測のロボットや数値ではなかなか計れない。また、気象観測には地域の特性も関係してくる。

 ゲリラ雷雨防衛隊のメールを受けてからは時間との戦いで、可能な限り早く、その地域に住んでいる人にメールで伝える。こうして作られたゲリラ雷雨のサービスには、月間のユニークユーザーで100万人ほどが集まる。特に東京の雷雨となると、数時間で30万件のアクセスが集まるモバイルサービスに成長しているそうだ。

 このサービスは、「ゲリラ雷雨から身を守りたい」というユーザーが活用し、ユーザーから寄せられた情報を加工することで実現している。ユーザーには「監視報告、ありがとう」というお礼のメールとともに、その日のゲリラ雷雨のレビューを返し、これが参加者の“次の監視にも参加しよう”という意欲につながるという。

 「情報が欲しいと思っている人がいて、同時に誰かの役に立ちたいと思う人がいるからこそ成立しているサービスです。もちろん優秀なレーダーなどのテクノロジーで観測や予測を実現することは可能ですが、レーダーの設置には1台あたり数億円に加えて土地代、運用費がかかります。民間企業なので、都市部だけでも配備するのは難しいです。そんな中でユーザーのニーズにいかに素早く応えられるか。その答えが気象観測という体感できる面白さを持つ世界観を広げることと、そこに共感するコミュニティ形成だと考えます」(上山氏)

 気象観測の面白さに共感し、活用するコミュニティ。ゲリラ雷雨メールのサービスの裏には、ウェザーニューズが持っている共感モデルが存在していた。いよいよ表出し始めた「気象革命」。後編では、地域を対象にしたより具体的な事例と、同社が「BtoS」と呼ぶウェザーニューズのコンシューマービジネスのこれまでとこれからをご紹介する。

プロフィール:松村太郎

Photo

東京、渋谷に生まれ、現在も東京で生活をしているジャーナル・コラムニスト、クリエイティブ・プランナー、DJ(クラブ、MC)。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。1997年頃より、コンピュータがある生活、ネットワーク、メディアなどを含む情報技術に興味を持つ。これらを研究するため、慶應義塾大学環境情報学部卒業、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。大学・大学院時代から通じて、小檜山賢二研究室にて、ライフスタイルとパーソナルメディア(ウェブ/モバイル)の関係性について追求している。


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