iPhone 3G、スマートフォンそしてMVNO──2009年注目のキーワードは2008年の通信業界を振り返る(4)(3/4 ページ)

» 2009年01月05日 07時00分 公開
[房野麻子, あるかでぃあ(K-MAX),ITmedia]

NVNOはどういう方向で動くかに注目

ITmedia 次に2009年の注目トピックについて伺います。モバイルWiMAXやWILLCOM COREのサービスが始まるほか、HSUPAやLTEといった、3Gの高速化の動きがありますし、フェムトセルの導入などにも動きがありそうです。さらに端末メーカーの再編などもあるかもしれません。

 石川さんと神尾さんが、2009年に注目している「面白いんじゃないかな」という話題を挙げていただけますか?

石川 明るい話題になるかどうかわかりませんが、MVNOはどういう方向に落ち着くのかな、というのは興味深いところです。先日、ウィルコムがドコモのネットワークを借りるという話が出ていましたが、やっぱり「餅は餅屋」という感じですね。ネットワークをやっているところが、足りない部分を他から借りてサービスするというのが妥当なのかな、ということを考えると、全然違う業種が入ってきて、ネットワークを借りてサービスする、という総務省が狙っているようなやり方は、かなり難しいように感じます。

 Nokiaが展開する「VERTU」みたいなサービスもありますが、あれもやっぱりノキアという端末メーカーがやっているからこそ、なんとかスタートできるものでしょう。成功する、しないは別として、そうならざるを得ないのかな、と思うんです。ディズニー・モバイルにしても、MVNOと呼ばない仕組みを使いながらも、みんななかなか夢の世界に入ってくれないことを考えると、正直どうなるのかなあ、と興味深く見ています。いろいろなものが出てくるだろうし、さまざまな選択肢も登場するでしょうし、それで業界は活性化されると思いますが、ちゃんとユーザーが付いてくるのかな、というところは非常に興味深く見ています。成功するところが出てくるかもしれないし、みんな総倒れで終わってしまうかもしれないし。

神尾 “電話機”でMVNOをやらなくてもいいんじゃないでしょうか。MVNOがキャリアと同じ電話サービスをやる必要はないと思っています。「音声サービスでMVNOをやると、あまり発展性はないよ」というのは、米国のVirgin Mobileの例で分かったわけでしょう。特に日本は携帯電話料金がとても安いのです。ですから、MVNOで価格競争をする構図は不毛なだけです。MVNOはデータ系の新事業領域の創出・活性化を見据えるべきでしょう。

 例えばですけれど、コインパーキング事業者最大手のパーク24は、独自でデータセンターを作って、TONIC(トニック)というオンライン情報システムでコインパーキングの駐車場管理をしています。でもパーク24って、国内市場のシェアは4割弱しかないんですよ。残り6割のコインパーキングに、データ通信の管理システムを入れる、システム込みのMVNOが出てもいいと思います。

 このように通信サービス込みでITソリューションを提供したら、明らかにその業種の効率が上がるのに、規模が小さくてできない領域がいっぱいあるのです。そこに対して、新しいビジネスを提供するMVNOがどんどん出てくれた方がいいと思いますね。

 あとMVNO事業者はオペレーターの経験がないという話が出ましたが、それこそドコモやKDDIが子会社を作って、その子会社でMVNOをしたっていいと思うんですよ。

石川 確かにそうですね。

神尾 ドコモの法人のソリューションでは規模が合わない新規市場でも、5、6人規模の子会社だったらできる話は絶対あります。しかも、その人たちがドコモの社員だったら、ネットワークのことを知り尽くしていますから、すごく効率よくできるはずです。そう考えると多様な選択肢があるし、発展性があります。

 そういう意味では、今後広がってくる大容量のモバイル通信インフラを、どれだけ多くの新事業領域で使えるか、という点と、その中でキャリアがやること、MVNOがやることがどうなるかに注目したいです。MVNOによって市場がどんどん広がってくれれば、世の中にあるすべての機器が、モバイル通信インフラにつながることができる。そういう世界をぜひとも作ってほしいですね。キャリアが全部できるわけじゃないんだから、他社のMVNOなり、その市場に見所がありそうだったら、自社内でベンチャーを作って、そこにMVNOで回線を貸し出すなりすればいいんです。

 MVNOの一番のメリットは何かというと、サービスを創出できるということと、タリフ(料金表)を作れるところなんですよ。キャリアはタリフを細かくいじれません。つまり、個々の業種向けのタリフを作りづらいというところがあるわけです。例えば、プロカメラマン向けのデータ通信サービスというのをキャリアが作ろうと思っても、標準料金プランと違う料金プランは作りづらいんですよ。MVNOのメリットは、タリフの自由度なんです。バックボーンのコストに対して、自由にタリフ設計ができる。そこに注目してほしい。

 キャリアだと、たくさんタリフを持つと顧客管理システムが複雑化しますし、ほかのユーザーとの兼ね合いもあって、なかなか細かな料金体系は作れません。でもMVNOなら、同じキャリアの子会社でも、キャリアにない料金プランを作れる可能性があります。そういうのは、どんどん作ってほしいと思うんですよね。それこそ外国人向けのプリペイド専門のMVNOが出てきてもいいかもしれません。キャリアがなかなか柔軟なプリペイドサービスが作れないんだったら、そういう方法があるのかもしれません。

 私がディズニー・モバイルで不満なのは、何でソフトバンクと同じ料金プランでやっているのか、という部分なのです。例えば、基本料はディズニーリゾートの利用券を付けて年間10万円とかにしてもいいじゃん、と思うわけです。年間の基本料契約というのは、普通のキャリアはやっていないわけですから。でもディズニーやクレジットカード会社みたいなところだったら、年会費という作り方ができるかもしれません。後払いで月額という今のキャリアの基本的なタリフの仕組みとはまったく違うタリフを、MVNOだったら作れる可能性があるわけですから、そういう発想の自由さを持ってほしいのです。そうなったときにMVNOの価値が出てくるし、業界発展にMVNOのスキームが生きるようになってくるのかなと思います。料金プランだって、似たりよったりでは面白くないですからね。

ITmedia 結局各社とも一番安いプランが「980円」で横並びになりましたね。

神尾 そう。結局みんな同じ料金プランで、逸脱できないから、どうしてもそこがボトルネックになるんですよ。ですからMVNOがどういう流れに行くのかは注目ですね。

石川 そうですね。

神尾 流れ方次第だったらつぶれる可能性もあります。でも“既存キャリアにはできないこと”を積極的にやっていけば、大きな成長が見込めるかもしれません。今はどちらのシナリオも考えられます。

石川 本当にそうだと思います。同じ土俵で戦ったらキャリアが勝ちますからね。

神尾 厳しいようだけど、同じことをやっていたら、既存キャリアには勝てません。今のキャリアの事業規模じゃ逆立ちしてもできない領域は確実にあるので、そこをMVNOが取っていくという方向でいってほしいですね。

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