キャリアやメーカーの海外進出、超ガラパゴス研究会の提言は超ガラパゴス研究会リポート

» 2009年07月14日 20時51分 公開
[秋吉健(K-MAX),ITmedia]

 7月9日、ITや通信分野の各企業、大学の有識者による懇談会「超ガラパゴス研究会」の4回目の会合が開催された。

 今回の議題は、これまでの議論の中間報告として、主に通信分野における日本企業への提言をまとめるための草案作り。委員長を務める慶應義塾大学 政策・メディア研究科 特別招聘教授の夏野剛氏は第3回会合の議事録から、「国際的な先進性を持っているにもかかわらず、そのポテンシャルを発揮できていないのは非常にもったいない」と、日本の携帯電話と通信技術に関する意見をまとめ、これを草案作りのたたき台とした。

 提言のポイントとしては「国際市場参入について積極的でないキャリア」「国際戦略に乏しいメーカー」「経営、人材の課題」が挙げられ、この3点に関する意見が交わされた。

Photo 慶應義塾大学 政策・メディア研究科 特別招聘教授 夏野剛氏(左)これまでの会合で出された意見を元にまとめられた提言の草案(右)

 キャリアの姿勢については各委員から「海外進出したいと言ってはいるが、結局、何もしていない」「積極的に出られないのは日本のキャリアにアビリティがなく、自信がないからではないか」「キャリアに10年後の経営に対するビジョンがない」といった厳しい意見が次々と飛び出した。

 投資の面でも「海外進出について(企業内で)真剣な議論がなされていない」「目先の利益優先で日銭商売的な思考から脱却できていないため、兆単位の資金調達の手段すら分かっていない」「そもそも海外へ出て行くメリットすら感じていないのではないか」といった厳しい指摘が相次いだ。

 こうした意見を踏まえ、キャリアの姿勢に対しては「明確なビジョンと打ち手が見えていないがゆえに、積極的になれていない。キャリアには態度を明確にしてほしい」と提言することで委員の意見が一致した。

端末メーカーに対する提言は

 メーカーに対しては、垂直統合型のビジネスモデルでキャリアに依存してきた脆弱な体質そのものを改善する必要があるとする声が挙がるとともに、ビジョンの欠落を指摘する声も相次いだ。

 ほかにも企業ブランドの確立や、海外営業における人材の確保など、さまざまな問題点が挙がる一方、「エンジニアが悪いわけではなく、エンジニアにはセンスがあるが使いこなせていない」と、人材資源では十分海外に対抗できるポテンシャルを持っているという意見も。「海外企業は、開発者が社外にものすごい脈を持っている。外部の人脈を豊富に持つ人材を取り入れることで、改革はできると思う」といった前向きな意見も多数挙がっていた。

 また「例えば日産自動車はゴーン社長1人ですべてが変わった。企業のトップでなくとも、携帯電話部門の責任者に外部からの登用などがあるだけでも変われるかもしれない」など、“経営陣の改革が不可欠”と指摘する声もあった。

 さらにiPhoneが携帯電話業界にもたらした衝撃を例に、“携帯電話に対する考え方”も大きなターニングポイントの時期を迎えているという意見もあり、「日本のメーカーはこれまで、ハードウェアメーカーだった。これからはソフトウェアメーカーが勝つ時代」とする提言としてまとめられた。これはハードウェアの進化によって成長してきた日本のメーカーに、従来のモデルから変革するよう求める提言として草案に盛り込まれる。

 経営、人材面の議論では「出身、経歴などの多様性が必要。企業内で育てた人材だけでは勝ち残れず、フィロソフィを変えなければいけない」「単一世代からの脱却が必要。外の人間の流入によるマインドセットの変化は必要」など、現状の企業体質を根本から変える覚悟と努力が必要である点を強調した。

 委員の中には「“大企業が変わる”というのは幻想。大きな勘違い」「企業の外部から社員の半数を取り込むくらいの覚悟がいる」といった厳しい意見もあったが、最終的には「海外企業では8割から9割が外部からの中途採用や引き抜きが基本なのだから、逆に考えれば半分は(企業の)中育ちでいいということでもある。企業内で育った人間にも大きなメリットがあり、それを上手く活かせる経営こそが日本企業の目指す姿ではないか」とする意見でまとまった。

 今回の議論は業界への提言としてまとめられ、超ガラパゴス研究会が公式に発表する予定(発表時期は未定)。各業界の中枢を担う現役プレーヤーの声がどのようにまとめられ、どんな形で生かされるのかに注目が集まる。

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