KDDIは普及モデルで巻き返し Androidは「来年導入を検討」

» 2009年10月23日 22時50分 公開
[山田祐介,ITmedia]
photo 小野寺正社長兼会長

 KDDIは10月23日、2010年3月期の中間決算を発表した。端末需要が冷え込む中、固定通信の赤字や、携帯端末拡販のための奨励金の積み増しなどが響き、同社の上期決算は減収減益になった。同社の代表取締役社長兼会長の小野寺正氏は会見で、端末調達コストの削減や、普及モデルの拡充などによって、下期の増益を目指す姿勢を示した。

 決算の内容は、連結決算の売上高が前年同期比1.4%減の1兆7231億円、営業利益が4.5%減の2510億円となった。移動通信事業も、売上高は前年同期比1.7%減の1兆3379億円、営業利益は前年同期比5.5%減の2720億円と減収減益になった。


photophoto 連結決算の概要(写真=左)と、移動通信事業の概要(写真=右)

下期は「基本ニーズに対応したミドルレンジ」に注力

 上期の端末販売台数は447万台と、前年同期比で14%減少した。同社は夏の端末ラインアップで“読書ケータイ”「biblio」や“HDムービーケータイ”「Mobile Hi-Vision CAM Wooo」をはじめとする機能特化型の端末を市場に投入したが、販売台数の維持はできなかった。また、こうしたハイスペックモデルの投入により、「端末の商品力は確実にアップした一方、端末調達コストも上昇した」と小野寺氏は説明する。

 しかし、通期の目標として掲げている“端末出荷台数1000万台”については、「現時点では変えない。我々が努力すれば、やっていける数字」と、強気な姿勢を見せる。下期では端末コストの低減を図り、「薄さや防水など、基本ニーズに対応したミドルレンジの端末を充実させ、平均の端末コストを引き下げていく」方針だ。秋冬モデルでは旧シーズンの上位機種をマイナーチェンジした「EXILIMケータイ CA004」や「SH004」をミドルレンジに据えているが、こうした施策も普及モデルを低コストに拡充するためとみられる。

photophoto 販売手数料の推移(写真=左)と販売手数料削減に向けた施策の概要(写真=右)

 また、端末在庫のコントロールも下期に取り組みを強化する。第2四半期ではシンプルコースを契約したユーザーの61%が「一括払い」で端末を購入しているが、これは抱え込んだ端末在庫を解消するために、販売店に対する奨励金を積み増し、結果として端末が安価に販売されたためだ。2009年3月期の販売手数料平均単価が3万9000円だったのに対し、2010年の第1四半期の平均は4万1000円、さらに第2四半期は新定額サービス(「指定通話定額」「ダブル定額スーパーライト」)の導入に併せて販売手数料を集中的に投入した結果、平均で4万4000円と上昇しており、業績を圧迫した。

photo 販売台数に対するコース選択状況の推移と、第2四半期におけるシンプルコースでの支払い方法

 しかし、端末在庫は9月末で83万台と「適正な水準」(小野寺氏)に戻ったとし、今後は適正な在庫の管理と販売手数料の削減に注力。通期の販売手数料を平均で3万6000円にまで引き下げる見込みだ。

 なお、同社は12月から、2年間の継続利用を条件に端末購入価格を減額する「フルサポートコース」のサポート額を2万1000円から1万6800円に引き下げるが、これが下期に与える影響は「ほとんどない」(小野寺氏)とみている。第2四半期ではフルサポートコースでの契約は全体の1割しかなく、多くのユーザーがシンプルコースでの購入にシフトしていることがその背景だ。

契約数、「IP接続のシェアはトップ」

photo 契約全体の純増とIP接続ベースの純増の推移

 電気通信事業者協会(TCA)が発表する契約数に関して、小野寺氏は「通信モジュールなどのARPUの低いものやデータ通信カードなどが混在しており、正味の比較が難しくなってきている」と指摘する。契約全体から見た同社の上期純増数は、38万で4キャリア中のシェアは18.2%となる一方、IP接続(携帯向けインターネット接続)の上期純増数は、31万9000で、シェアが38.8%と業界トップになることを同氏は強調した。また、解約率が前年同期比で0.03ポイント低下の0.72%となっていることにも触れ、改善をアピールした。

 MNPの純増数は8月、9月と拡大しており、新定額サービスの効果が現れていると同社は見る。しかし小野寺氏は「今後、MNPの利用率が大幅に上がるということは考えにくい」という見解も示した。

LTE導入時点でプラットフォームの見直しか? Androidは来年の導入を検討

 会見ではKCP+の課題や今後のプラットフォームに関しても発言が及んだ。小野寺氏は「最初のKCP+の動作が遅かったのは事実」と認めながら、現在は改良により動作スピードが改善されているとし、KCPに対して「遜色ないレベルにまで来ている」と自信を見せた。

 また、LTEの導入に併せて新たなプラットフォームの検討を行っていることも明かした。同社は現在、Linuxベースのプラットフォームを開発する団体「LiMo Foundation」に加入しており「LiMoも選択肢の1つ」(小野寺氏)として考えている。

 またAndroid端末を「来年導入する方向で検討している」というコメントも飛び出した。「端末のプラットフォームが1つに決定するということはないだろう。ただ、主流のプラットフォームが何になるかは、検討を進めていく」(小野寺氏)

 同社が筆頭株主となるUQコミュニケーションズの契約数が9月末で2万1700件と伸び悩んでいることについては、「エリア整備が当初の計画より遅れていることが問題。無料のトライアルで、自分の使う地域で使えたお客様は、ほとんどご契約いただいている。とにかくエリア整備が重要で、そこに対する支援を行っていく」とコメントした。

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