なぜ今、モバイルメールマーケティングが活発化しているのか?傾向から探る「メールマーケティング」のコツ 第1回

» 2009年10月26日 15時29分 公開
[北村伊弘(エイケア・システムズ),ITmedia]

「いまさらメール」か「いまこそメール」か

 進化の著しいモバイルの世界。モバイルプロモーション手法においても新たなものが生み出されている中で、効果的な販促方法を模索している企業も多いのではないかと思います。

 目的に応じて採用すべきプロモーション手法が異なるのは言うまでもありませんが、その中でも近年「メールマーケティング」を最も重要な販促手法として捉える企業が少なくありません。メール配信ASPサービスを提供するエイケア・システムズのユーザー状況からは、ここ1、2年で携帯を対象としたメールマーケティングを開始する企業が急激に増えており、一企業あたりのメール配信流量についても劇的な増加傾向が見られます。

 では、なぜ今になってモバイルメールマーケティングが盛り上がっているのでしょう? メールマーケティング自体は国内では10年ほど前から存在しており、「いまさらメール?」と感じる人もいるかもしれません。

 「新規顧客の獲得コストに対して既存顧客へリピート購入を促すコストは5分の1、あるいはそれ以下」といったことをよく耳にしますが、昨今の不況下においては、費用対効果の高い「既存顧客へのリピート促進」に重きが置かれがちです。その結果、リピート促進に適したメールマーケティングが活発になっているというのが、ひとつにはあるでしょう。

 しかし、それよりも大きな理由が別にあると私たちは考えています。それは、「メールマーケティングとモバイルの本質的な親和性の高さ」です。先にも述べたようにメールマーケティング自体は古くからある手法ですが、当初のPC向けメールマーケティングでは発揮しきれなかったポテンシャルが、携帯を対象とすることで発揮できるようになった――つまり、携帯の普及が「いまさらメール」ではなく「今だからこそメール」という状況を作ったといえるでしょう。

 それでは、その「メールマーケティングとモバイルの親和性の高さ」とは一体どのようなことなのでしょうか?

情報伝達のリアルタイム性

 メールマーケティングの優れた点として、「プッシュで情報を伝達できる」こと、つまり、「送り手の望むタイミングで受信者側へ情報を伝えることができる」ことがよく挙げられます。しかし、PC向けメールは、厳密にはこの利点が当てはまりません。なぜなら、送り手がメールを送った時点で必ずしも受け手がPCを起動し、その前に座っているとは限らないからです。対して、ほぼ常時所持され、常に電源も入っている携帯端末ならば、これが可能になります。例えば、臨時のセール情報を伝えたり、あるいは、TVやイベントと連動させたクロスメディア的な取り組みなど、リアルタイムな効果を狙ってプロモーションの幅を拡げることができるのです。

情報の所持

 特徴の2点目として、「コンシューマーはメールを受け取った後ただちに削除しないことが多い」、つまり「一定期間は端末内に企業が伝えた情報が保存される」、ということがあります。現在の携帯端末は相当な数のメールを保存しておくことが可能ですし、受け手がよほど不快に感じた場合などを除いては、あえてメールを削除するのは面倒です。そもそも、受け手が望まないメールを送り続けることは現在法律で禁止されていますし、原則として受け手が能動的にメールの受信を許諾した場合のみ、メールを送ることができることになっています。

 つまり、企業が発信したメッセージは多くの場合、受信者の所持する端末内に保存されることになります。このことを活かせば、例えばクーポンメールを送り、いつ通りかかるか分からないお店への誘導などもしやすくなります。

情報の到達率の高さ

 3点目の特徴として、「モバイルメール」がコンシューマーにとって、親しい人との間で行われる一般的なコミュニケーション手段になっていること、つまり、企業からの情報と知人からの情報が、同レベルで目に触れる機会を持てることが挙げられます。テレビのCMやWebサイトのバナーなどの一般的な「広告」では、情報の受け手は「見なければいけないもの」と「見なくても良いもの」を簡単に判別できます。一方、メールではその区別が付きづらくなります。それを逆手に取ったものが、いわゆる「知人を装った迷惑メール」です。こうした迷惑メールのせいで、全てのメールマガジンが迷惑なものと拡大解釈されてしまうこともありますが、裏を返せばメールがそれだけ高い情報伝達力を持っているということでもあるのです(なお、現在は携帯キャリア側の受信制御や、法改正などの取り組みの成果もあり、携帯端末向けの迷惑メールは減少傾向にあるようです)。

 また、モバイルにおいてはコンシューマー同士で「デコメ」、すなわちHTMLメールを送り合うことも定着し始めており、こうした背景から、PCでは広く普及するにはいたらなかった企業発のHTMLメールが、モバイルにおいてはデコメというカタチで急速に拡がり、メールの欠点であった「情報量」の問題をも解消しつつあります。

 以上に挙げた「情報伝達のリアルタイム性」「(コンシューマーによる)情報の所持」「情報の到達率の高さ」という要素を考えれば、企業のモバイルメール利用が拡大していることもうなずけます。

 メールマーケティングの現場では、実際にこれらの特性をうまく捉えながら、さまざまな企業がさまざまな目的のもと、適正な送信のタイミングや、メールの件名、あるいは本文の構成などを工夫しています。次回以降では、メールマーケティングの目的別(業種別)に、具体的にどのような工夫がなされているのか、エイケアが収集したデータを基に検証していきたいと思います。

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