10月27日から2日間にわたって開催されたSymbian Foundationのイベント「Symbian Exchange&Exposition 2009」。スマートフォン市場のシェア争いが激化する中、Symbianはどのような戦略でシェアトップの座を維持しようとしているのか。Symbian Foundationでディレクターを務めるリー・ウィリアムズ(Lee Williams)氏に聞いた。
ITmedia(聞き手:末岡洋子) Symbianの市場シェアが縮小している現在の状況を、どう見ていますか。
リー・ウィリアムズ氏 まず、調査会社によってスマートフォンの定義が異なる点は理解していただきたいですね。Gartnerなどの調査ではハイボリュームのSymbian搭載機を含んでいないものもあり、誤解を生んでいます。
しかしながら、Appleなどのスマートフォンメーカーが大きな成功を収めており、Symbianの成長がスマートフォン市場全体の拡大ペースに追いついていないということは認めざるを得ません。
強調したいのは、エコシステムとしてのSymbianを見ると、出荷台数やフォームファクタは増加しているということです。Symbianのエコシステムは、ミッドレンジやハイエンド市場に拡大しています。
ITmedia Symbianは、どんな戦略でスマートフォン市場全体の成長ペースに追いつこうとしているのでしょうか。
ウィリアムズ氏 戦略は2つあります。
1つは、デバイスメーカーに参加してもらうことです。ここでは、台湾や中国のODMが非常に重要になります。これらのODMは、OEMそして通信オペレーターにさまざまな技術や製品を提供するからです。ODMにSymbianを採用してもらうことは、重要な戦略です。
2つ目は、プラットフォームに改善を加え、イノベーションを加速することです。Foundationでは参加企業の貢献を促進しています。
Symbianへの貢献を確約した企業は、Nokia、NTTドコモ、Samsung、Sony Ericsson、Texas Instrumentsなど11社あります。11社もの企業がプラットフォームの構築に参画し貢献するモバイルプラットフォームは、ほかにはありません。このような環境は、プラットフォームの進化を加速させると信じています。
ITmedia SymbianはAndroidなどと比べると、一般ユーザーの知名度が低いのですが、これは障害にはならないのでしょうか。
ウィリアムズ氏 もちろん問題です。しかし、これまでSymbianという商標は、ほかのブランドの“材料”として使われてきました。つまり、知名度が低いのは意図的なものでした。
われわれは現在、これを変えようとしています。現在、Symbian FoundationのWebサイトでは、一般ユーザー向けの情報を多くそろえています。一般ユーザーにSymbianを通して得られる体験がどのようなものかを伝えるもので、今後もバイラルマーケティングなどを通じてこの取り組みを拡大します。ここでは、アプリケーション開発者も対象となります。
同時にメンバー企業と協業し、一般ユーザーにメッセージを伝えていきます。日本の企業からは、Symbianの名前を表に出すようなイベントを開催する話も挙がっています。
こうした取り組みを進めることで、今後は一般ユーザーにも、“Symbianとは何か”を知ってもらえるようになると思います。
実は、Symbianの知名度は地域によって異なります。英国では“Symbianの携帯電話”として知っている人が多く、日本ではFOMAと関連付いていると思います。
ITmedia NTTドコモやNokiaなどのメンバー企業が、ほかのプラットフォームも採用する動きを見せています。このような競合をどう見ていますか。
ウィリアムズ氏 Androidは非常に新しいOSで、Symbianが提供する機能やメリットに追いつくにはかなりの時間がかかると予想します。
私は、プラットフォームそのものというより、エコシステムが重要になると思います。エコシステムにリーチできること、継続的に投資を回収できること、提供したい機能を迅速に提供できること――これを実現するエコシステムがSymbianにはあります。
競争はプラットフォームというより、エコシステムで起きており、Symbianはここで非常に優位な立場にあります。Androidもいつかエコシステムを確立すると思いますが、現在はまだ確立されていません。
われわれは、エコシステムを重視しています。メンバー企業と日常的にやりとりし、活発に動いています。たとえば、今回のイベントに合わせてスタートした「Ideas.symbian.org」は、アイデアを募るプロジェクトで、アプリケーション開発者やデバイスメーカーは、一般ユーザーのアイデアや要望を直接見ることができます。これにより、市場のニーズをダイレクトに知ることができます。このような取り組みは、他に例がありません。
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