店頭訴求力の高い冬春モデル+iPhone――したたかなラインアップで冬春商戦に臨むソフトバンクモバイル神尾寿のMobile+Views(1/2 ページ)

» 2009年11月18日 18時27分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 11月10日、ソフトバンクモバイルが2009年冬モデルと2010年春モデル合計22機種を発表した。詳しくはニュース記事に譲るが、ソフトバンクモバイルはこの冬春商戦においてラインアップを大きく二分割。主力モデルに「Wi-Fi(無線LAN)」を標準搭載し、高速通信と大容量コンテンツをアピールする一方で、エントリーモデルとしてシンプル&カラフルでポップなモデルを用意した。

 ドコモの905iユーザーを筆頭に多くの人々が端末の「買い換え期」を迎える中で、ソフトバンクモバイルの新製品とサービスは新たな顧客獲得につながる競争力を持っているのか。ソフトバンクモバイル冬春モデルの端末とサービスから探った。

Photo 冬春モデルを発表するソフトバンクモバイル 代表取締役社長の孫正義氏

ケータイWi-Fiのメリットと課題

 本題に入る前に、読者のみなさんにお詫びしなければならないことがある。一部で報道されたとおり、ソフトバンクモバイルは今回の新製品発表会を当初予定から急きょ変更し、NTTドコモの新製品発表会同日に行った。しかも、その時間帯はドコモの発表会開始前であり、ソフトバンクモバイルの発表会終了からドコモの発表開始まで、ほとんど間がないという強引なものだった。

 このような事情により、両方の会見を掛け持ちした筆者は、すべての新製品を手にとって試すことができなかった。今回のコラムは発表会の内容をもとに書くが、新製品のインプレッションや評価が完全ではないことをあらかじめお伝えしておきたい。

 それでは、ソフトバンクモバイルの新製品・新サービスを見てみよう。

 冒頭でも述べたとおり、ソフトバンクモバイルは今回、主力ラインアップの大半に最大54Mbpsのワイヤレス通信が可能な「Wi-Fi機能」を標準装備。「ケータイWi-Fi」という名称で、料金プランや動画や電子書籍など大容量コンテンツを用意した。

Photo ケータイWi-Fi向けには、動画や雑誌などさまざまなコンテンツを用意

 ソフトバンクモバイル 代表取締役社長の孫正義氏は、Wi-Fiの最大通信速度が3Gよりも速いことを取り上げて、「Wi-Fiは3Gの約10倍のスピードが出る。3Gが鼻で呼吸するとしたら、Wi-Fiは口で呼吸するようなもの。大容量コンテンツの利用が、これからのケータイは3GとWi-Fiの両方を搭載しているのが当然だという時代になる」と強調した。

 この孫氏の発言は、独特のレトリックで誇張されているものの、一面の真実はついている。3Gの高速化やLTE時代の到来などモバイル通信インフラの大容量化は進むが、これらは“高速移動中での利用”まで想定しているため「高品質・高コスト」なのは否めない。3GやLTEのビット単価は加速度的に低減していくものの、移動しながらの利用を想定せず、面的なエリア構築の必要もなく、さらにバックボーン回線にADSLやFTTHなど固定網ブロードバンドを使うWi-Fiの“低コスト”には勝てないのだ。3GとWi-Fiの組み合わせはハイブリッドカーのようなもので、お互いのメリットを生かし合い、デメリットを打ち消し合えば、携帯電話やスマートフォンの利用環境をよりよくすることができる。

 しかし、その一方で忘れてはならないのは、携帯電話・スマートフォンにとって「Wi-Fi」は補完的な通信インフラでしかないことだ。ハイブリッドカーでいえば“小容量バッテリー+モーター”であり、道路でいえば渋滞回避用の“バイパス”のようなもの。主役である3Gインフラがしっかりしていて、その上で組み合わせてこそ価値のあるものだ。

 そうした観点で今回の発表を見ると、孫氏のプレゼンテーションは3GとWi-Fiがあたかも同格であるような話しぶりであり、正確性を欠いて錯誤を招きかねない恐れもあった。もし店頭で、同様のサービス説明が行われれば、「3Gより速いWi-Fi=ソフトバンクのケータイは通信スピードが速い」とユーザーが誤解しかねないだろう。

 ソフトバンクモバイルが多くの端末にWi-Fi機能を標準搭載し、それに合わせて大容量コンテンツを用意する、というアプローチは評価できる。だが、同社には「3Gインフラが、ドコモやKDDIより貧弱」であり、「iPhoneユーザーの増加によって、3Gのインフラが逼迫している」という厳しい現実がある。3Gインフラに積極的に投資し、エリア拡大と高速通信技術の導入を急がなければならない状況なのだ。今回のケータイWi-Fiを家庭内や一部のスポットエリアでの「バイパス」として使うにしても、肝心の「一般道」である3Gインフラが片側一車線のデコボコ道では、“Wi-Fiで高速通信”と言われてもユーザーは鼻白むだけだ。

 さらにソフトバンクモバイルの「ケータイWi-Fi」は、料金面でも不満の残るものになっている。既報のとおり、ケータイWi-Fi向けの料金パック「Wi-Fiバリューパック」では、月額利用料490円(2010年12月31日まで加入で永年無料)がかかるだけでなく、専用パケット定額料として月額4410円が課金される。3Gのパケット通信サービスで2段階定額が主流になる中で、“使っても使わなくても上限額を払う”パケット定額制の導入は時代錯誤である。Wi-Fiにトラフィックをバイパスして3Gインフラの負担を軽減しながら、さらにパケット定額制の部分では上限額で課金してデータARPU低下を防ごうという姿勢には、あざとさすら感じてしまう。孫氏が質疑応答で主張したように「アクティブユーザーの多くは、パケットし放題の二段階定額の上限に達している」というならば、潔く従来の2段階定額に加えて、ケータイWi-Fiの基本料だけ課金だけすればよかったのではないだろうか。

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