「1アプリ1単価に限界」――ハドソンに学ぶiPhoneアプリの難しさと“次の手”(2/2 ページ)

» 2009年12月22日 21時53分 公開
[山田祐介,ITmedia]
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photo 無料からの誘導も厳しい

 一方、無料版から有料版にユーザーを誘導する手法も多く見られるが、こちらも簡単には成功しない。柴田氏は「『エレメンタルモンスター』をはじめ、いろいろと無料からの誘導を試したが、0.99ドルの最低価格以上にするととてつもなく誘導率が下がる」と厳しい見方を示す。


photo アドネットワークは「コンテンツ次第」で、響くか響かないかが決まる

 さらなる施策として17タイトルをアドモブのアドネットワークに対応させたものの、「一般的なWeb広告媒体と同程度の効果」というのが柴田氏の実感。有名タイトル「ボンバーマン」の誘導広告には大きな効果があったが、それ以外のタイトルでは誘導率はそれほど高くないという。ユーザーの購入したアプリとジャンルの近いアプリ広告を表示すると誘導率が高まり、「土日にコンバージョン率が高まる」といった傾向もあるようだ。

 また、コミュニティでユーザーを囲い込み、作品の話題性を長続きさせるために“ソーシャル対応”も試みている。DeNAの出資企業Aurora Feintが提供するソーシャルゲーミングプラットフォーム「OpenFeint」をボンバーマン TOUCHなどに実装し、さまざまなアチーブメント(達成度に応じてアイテムや称号といった得点を与えること)に対応させた。OpenFeintは「デバッグからチェックまで、全部込みで3日で組み込めた。機能が盛りだくさんなわりに組み込みが楽なので、開発者に喜ばれている」という。

photophoto 「1カ月そこそこ」でアプリのライフサイクルが終わってしまう現状を、ソーシャル対応によって「3〜5カ月に伸ばしたい」と柴田氏

ハドソンの次の手は“フリーミアム” プラットフォームを超えたオンライン対戦も

 こうした試行錯誤のすえ、同社が今後の戦略として注力するのが“基本無料のポイント課金”――いわゆる「フリーミアム」のビジネスモデルだという。その第1弾として「うまくいけば年内にリリースされる」というのが、オンライン対戦に対応した麻雀アプリ「ネットジャン狂」だ。

photophotophoto 発売後1カ月はオンライン対戦を1日3回まで無料にするという
photophoto

 同ゲームはApp Storeでのダウンロードに加え、ローカルでの対局、1日1回のオンライン対戦(半チャン)が無料。ただし、1日1回以上のオンライン対戦にはアプリ内課金が発生する。ユーザーは100ポイントを100円で購入し、1回の対戦につき30ポイントを消費する仕組みだ。ランキングや上がった役のリストを提供してユーザーのやる気を刺激するほか、メダルをかけた対戦もできる。

 さらにオンライン対戦を盛り上げる大会などの各種イベントを催すとのことで、柴田氏は「できれば週1回ぐらいのペースで仕掛けていきたい」と、運営にかなりの力を注ぐ心構えだ。「運営は我々のような会社の最も強力な武器の1つ」とも語り、大手メーカーならではの差別化ポイントとして期待を寄せる。

 また、来春にはオンライン対戦がプラットフォームを超えて楽しめるようになるという。「ネットジャン狂はアプリ側にグラフィックのデータしか持たせていないので、iPhone以外のプラットフォームにも簡単に移植できる。コストの面や複数のプラットフォームに素早く展開することを考えれば、今後はサーバを中心としたコンテンツ配信になるのでは」と柴田氏はコメント。同社は今後、追加課金モデルを軸としてタイトルを配信していくという。

 2010年3月までは追加課金対応のアプリをさらに2タイトルリリースし、春以降には「非常に大きなコンテンツ」の発表が控えているなど、具体的なロードマップもすでに敷かれている。とくに春以降のタイトルに関しては、「これができたら、“ネトゲ廃人”がやめられなくなるのでは」と自信を見せる。作品のヒントとして柴田氏は同社のファンタジーMMORPG「Master Of Epic」の名を上げたが、「それだけではない」という。


 社員20人のiPhoneアプリ開発企業Tapulousが、月間売り上げ100万ドルに近づいたなど、企業規模を越えて成功のチャンスがあるかに見えるiPhoneアプリビジネスだが、柴田氏の講演では企業が従来モデルでアプリ事業を続ける難しさが浮き彫りになった。しかし、ネット対戦をフックに追加課金を導入し、クラウド化によってプラットフォームを超えた対戦が楽しめる「ネットジャン狂」には、新たなアプリビジネスの可能性を感じる。

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