先行する巨大アプリマーケットに勝てるか――WACの副社長に聞く、戦略とロードマップMobile World Congress 2011(1/2 ページ)

» 2011年02月24日 20時22分 公開
[末岡洋子,ITmedia]

 Mobile World Congress 2011で発表された大きなトピックの1つが、Wholesale Applications Community(WAC)の商用サービス開始だ。WACは、モバイル業界団体のGSM Association(GSMA)が旗振り役となり、モバイル端末向けアプリケーションの開発や流通を標準化することを目的に発足した団体。年内に通信オペレーター8社が、WACをベースとしたアーションストアの提供を開始するという。

 米AppleのApp Storeや米GoogleのAndroid Marketが注目を集める中、WAC陣営はどう対抗するのか――。WACでデバイス&製品担当副社長を務めるエリック・デ・クルーン(Erik de Kroon)氏に聞いた。

WACとは

 WACはGSMAに加入する通信オペレーター数社が、2010年のMWCで立ち上げたモバイルアプリの業界団体。開発者に標準のモバイルプラットフォームを提供し、開発されたアプリをカタログ化する。メンバー企業(オペレーターや端末メーカー)は、このカタログにあるアプリを集めて、自社でアプリケーションストアを展開できる。開発者のメリットは、1度アプリを開発すれば、複数のWAPアプリケーションストアで展開できるという点だ。

 AppleやGoogleのアプリストアがブームを巻き起こす中、通信オペレーターはアプリブームのメリットを享受できず、このままではダムパイプ化(土管化)しかねないという共通の課題を抱えている。WACはこの問題を解決するものとして、期待されている。

 WACは2010年7月に会社組織となり、9月に初期版の仕様を公開。その間、ソフトバンクらが進めてきたモバイルウィジェットの標準団体Joint Innovation Lab(JIL)と合体し、現在、約70社が参加している。

 今回の商用サービスの発表では、Vodafone(英国)、Telefonica(スペイン)、中China Mobile(中国)仏Orange(フランス)、Verizon Wireless(米国)、MTS(ロシア)、SMART(フィリピン)、Telnor(ノルウェー)の8社が年内にWACアプリケーションストアを提供すると発表した。端末側では、韓Samsung、韓LG、英Sony Ericsson、中ZTE、中Huaweiの5社が自社端末にWACランタイムを採用することを表明した。このほか、事業社側として、スウェーデンEricssonが顧客向けに提供するホワイトレーベルのeストアでWACを採用することも明らかにしている(TelnorのWACストアはEricssonが手がけることになる)。

Photo 2月14日に開催された商用サービス発表イベント。米AT&T、韓KTなどが集まった。左から2番目はWAC CEOのピーター・シュー(Peter Suh)氏
Photo 商用サービスの概要


9月にWAC 3.0の仕様を公開、キャリア課金に対応

Photo WAC デバイス&製品担当副社長のエリック・デ・クルーン(Erik de Kroon)氏

―― (聞き手:末岡洋子) 2010年にMWCの発足を発表し、1年で商用サービス開始を発表しました。速いペースで展開していますね。

エリック・デ・クルーン氏(以下クルーン氏) その通りです。市場が急速に動いているので、われわれも迅速に動く必要があります。そうしなければ、成功しないと考えています。

―― 今回、商用サービスの概要とともにロードマップも発表しました。その詳細について教えてください。

クルーン氏 現在の仕様はWAC 1.0で、HTML4ベースですが、2月14日にHTML5をベースとしたWAC 2.0を公開しました。2011年9月には、WAC 3.0の仕様を公開する計画です。2.0を拡張してネットワークAPIなどを加えたものとなります。

 HTML5を利用することで、ユーザーによりリッチなコンテンツを提供できるようになります。3.0では、ネットワークAPIにより、オペレーター課金(携帯電話の利用料金とコンテンツ料金を合算して通信オペレーターに支払う方式)や位置情報機能の利用が可能となります。

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