現場とオフィスをつなぐ“魔法の黒板”――iPadアプリ「Drawon」が提案する情報共有の新スタイル(1/2 ページ)

» 2011年11月09日 09時30分 公開
[百瀬崇,ITmedia]

 画像や文書のファイルについて、電話越しの相手に説明したいが、どの場所について話しているかうまく伝わらず、「そこじゃないです!」といったやりとりが続く。かといってWeb会議を開くのもおっくうで、ストレスがたまる――。ビジネスの現場で、こんな経験をした人は少なくないだろう。

 こうしたシチュエーションで大いに役立つ可能性を秘めたソリューションがある。コノルのiPadアプリ「Drawon(ドローン)」だ。同アプリは、クラウドや企業の自社サーバに保管した画像/PDF/Office文書に対し、複数人が同時に文字や図を書き込め、それらの情報をリアルタイムに共有できる機能を備えている。

 具体的にはどういうことか――。冒頭に書いた、電話越しの相手とのやり取りを想定してみよう。

 まず、電話越しの相手とあなたが手元のiPadでDrawonを起動し、同じ画像や文書にアクセスする。電話相手に注目してほしいカ所があれば、その場所に手書きツールで赤線を入れる。すると、相手の画面にもその赤線が現れ、言葉で説明しなくても注目すべき場所が視覚的・直感的に分かる、というわけだ。いわゆる、リアルタイムコラボレーション機能である。


photo Drawonの利用画面。あるiPadで注釈を書きこむと、その文書にアクセスしている別のiPadにも注釈がリアルタイムに反映される

 この例は離れた場所での活用例だが、Drawonを便利に使えるシーンはそれだけではない。会議や打ち合わせなど、ドキュメントを複数人で共有し、内容の確認やブラッシュアップを図っていく現場において、こうした機能が役立つと開発元のコノルは考えている。

ビジネスアプリを、もっと簡単、直感的に

photo コノル代表取締役 溝田隆明氏

 コノルは世界で累計240万ダウンロードを記録した人気のiPad向けお絵かきアプリ「黒板」を開発した企業。このアプリ、黒板を再現したシンプルなお絵かきアプリなのだが、Bluetoothを活用して複数のユーザーが同じ黒板の上に絵や文字を書き込める機能を持っている。このノウハウをビジネス向けに拡張したのがDrawonだという。「コンシューマー向けに開発した黒板だが、意外とビジネスの場面でも利用されていることが分かった」と、コノル代表取締役の溝田隆明氏は開発の背景を話す。例えば、紙に残したくない暗証番号の確認に利用したり、共有ホワイトボードのような感覚で会議中に使う、といった活用法があったという。

 では、法人向けにDrawonを作る上で、同社はどんな点を重視したのか。それは、“ビジネス向けサービスでありながらコンシューマーアプリのようにストレスなく利用できること”だという。


photo Drawonのファイル管理画面。アイコンは大きくデザインされ、ファイル形式もひと目で分かる

 1つに、「直感的にコミュニケーションがとれるツールにする」という工夫がある。「ボタンを大きくするなど、iPadを使い慣れていない人でも利用できるようなデザインにすることに気を配った。またファイル形式によってアイコンの色を変えるなど、一貫性のある画面を心がけた」――デザインディレクタの丸山知美氏は言う。また、タッチパネルを介した“手書き編集”の直感性も、利用のハードルを下げる重要なポイントだろう。

 もちろん、ユーザーインタフェースがよければそれでいいわけではない。「黒板の描画エンジンをグレードアップさせて多機能化し、かつ書き心地のいいものに仕上げた」と同社テクニカルアドバイザの佐々木英剛氏は自信をのぞかせる。手書きの描画データは軽く作られており、3G回線でもスムーズに操作できるものになっているという。また、こうした手書きの編集記録は「コミュニケーションファイル」として独立して記録されており、元ファイルそのものが変更されることがないのも特徴だ。

 法人サービスの要である、セキュリティ面の配慮も行き届いている。管理者が登録したユーザーしか利用できないのはもちろん、フォルダ単位でのアクセス制限ができるため、特定の人に特定のフォルダだけを見せる、といった設定が可能だ。Drawonサーバーにデータを保管し、場所を問わずデータにアクセスできるようにするクラウド型サービスに加え、特定のローカルエリアでのみアクセスできるオンプレミス型サービスも構築できる。


photo 管理ユーザーがフォルダ単位でユーザーごとのアクセス制限を設定できる

 また、SSLの導入に加え、「アクセスのためのパスワードや管理側のデータベースにも暗号化を施しているので、企業ユーザーにも安心して利用してもらえるはずだ」と溝田氏は説明する。サービスをストップさせないよう、クラウド側のハードウェアの冗長構成も施している。

 一度開いたファイルはiPadのローカル環境に保管されるが、「iPadにデータを残さず、サーバー側のみに保存したいといった要望もある」(溝田氏)ため、今後のバージョンアップでそうした仕様にも対応していくという。

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