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» 2012年10月18日 14時03分 公開

出先の受注、社内で即座に作業へ――ワークキャムの「多品種小ロット生産」「短納期」を支えるiPadとFileMaker (2/2)

[柴田克己,ITmedia]
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頻繁な「変化」に対応可能なDBとしてFileMakerを選択

Photo ワークキャム 代表取締役社長の野崎幸一朗氏

 同社では現在、営業担当者が受注時に入力する「仕事エントリー」DBをインタフェースとして、営業管理、見積管理、受発注管理、製作管理、在庫管理、材料管理、型枠管理など、経理を除くほぼすべての業務を行うシステムを「FileMaker Server 12」と「FileMaker Pro 12」によって構築している。

 ワークキャムでは、営業担当者が仕事を受けると、セキュアなVPN回線を通じて外出先からでも、すぐにFileMaker上にデータを入力できるシステムを構築している。担当者は、即座に見積書や発注書を出力し、自分でCADを使って図面を作成。案件データとひもづけて登録する。後はこのデータが、3D化、マシニング、成形といった工程で参照されて業務が進み、進ちょくが管理されていく。

 同社で働く人々は、このシステム上で一元的に管理されているデータを参照しながら業務を進めるため、急な内容変更や飛び込みの注文などにも迅速に対応することが可能となっている。

 まさしく、事業の「基幹」を担うこのシステムは、1996年の会社創業時から、同社の業務に最も合った要件を、社内スタッフの手によってFileMaker上に組み上げ、育ててきたものだという。

Photo システム管理を担当する飛田茂克氏

 野崎氏は、古くからのMacユーザーでもあり、かつてはHyperCardで業務システムの構築に取り組んでいたという。実際にFileMakerでシステムを開発するにあたっては、同社の業務に関わる要素を1つづつ書き出しながらフィールドを定義し、フォームを組んでいった。

 データベース(DB)ソフトとしてFileMakerを選んだポイントについて野崎氏は、「業務を理解した人間であれば、簡単にDBの作成ができ、実際に運用を行っている中でも、現場からのリクエストを反映しながら、細かくレイアウトやDB設計の変更を行える点」だと話す。

 15年以上をかけて改良や機能拡張を続けてきた同社のDBは、現在300以上のフィールドを持ったシステムへと成長している。現在、システム管理を担当している飛田茂克氏は「業務を常にスムーズに回していくために、このシステムについては現在も頻繁に修正を行っている。業務で使うDBは、こうした変更や設計の変化に、こまめに対応できるFileMakerのような仕組みでなければ難しい」(飛田氏)という。

Photo 名簿や日報、作業フローなど、さまざまなデータベースをFileMakerで開発し、統合して活用している

「業務のわずかな空白」を埋めて成果をあげたiPadとFileMaker Go

Photo 最新の情報が手元にあるため、データ入力などのミスが大幅に減ったという

 同社ではFileMakerで一元管理されたデータを参照しながら製作プロセスが進んでいくが、近年、それぞれの工程での作業効率と正確さを、さらに高めることに成功した。そのカギとなったのが「iPad」と、その上で動作する「FileMaker Go」の導入だ。

 従来、FileMakerで管理しているデータを各工程の担当者が参照する場合には、それぞれのフロアに設置されたPCを使って、情報の参照や入力、チェックを行っていたという。しかしながら、例えばマシニングの工程においては、作業担当者がフロアの特定の場所に設置されたPCで必要なデータを参照しつつ、一度メモをとり、その内容を改めて加工機械に入力するという形をとっていた。

 作業用の機械や商品、材料などが多数存在する事務所内では、PCが設置できる場所も限られ、やむを得ずそうした形になっていたわけだが、この「一度メモをとって移動」というわずかな過程で発生するヒューマンエラーが、結果的に現場でのトラブルや、作業者のストレスの原因になっていたという。

 同社では、前バージョンの「FileMaker Go 11」の発売を機に、フットプリントが小さく、可搬性が高いiPadを現場へ導入するための検討を開始した。その試験導入が好評だったことと、最新版の「FileMaker Go 12」が無料化されたことをきっかけに、5台のiPadによる本格的な展開に踏み切った。

 iPadの導入は、作業過程の「わずかな空白」を埋めるためのものだったが、その効果は「かなり大きい」(野崎氏)という。加工現場では、実作業の際に、iPadを手元に持ったままFileMaker Goのデータを参照できるので、全社での作業状況がリアルタイムに確認できるほか、型枠製作などにおける微妙な数値入力、研磨器具の確認といった重要事項の確認、前後の工程の確認などが「その場」で可能となったのだ。

 これは、作業を行う人の集中力を高め、ストレスを軽減するといった効果を生んだ。実際に「人的な入力ミスについては、確実に3%近く減少した」(野崎氏)というのは特筆に値する成果ではないだろうか。さらに、全体的に出勤しなければならない残業が減少傾向にあるというのも、経営者と社員の双方の視点で嬉しい効果だという。

 また、iPadについては、PCと比較した場合の導入コストの安さ、設置場所の柔軟さ、可搬性の高さに加え、ハードウェアとしての「壊れにくさ」にもメリットを感じているという。同社では、社内でさまざまな加工成形を行っているため、その現場ではどうしても材料の削りかすなどによる粉じんが多くなる。そのため、キーボードや冷却ファンなどの開放部分が多いハードウェアは頻繁に故障をしていたそうだ。コネクタ部やマイク/スピーカー部を除き、全体が密閉された構造になっているiPadについては、そうした加工現場での耐久性の高さにも期待していると話す。

システムの活用範囲を広げ、さらなる業績向上を目指す

Photo

 ITの積極的な活用で可能になった合理化されたビジネスプロセスによって、着実に成果を上げているワークキャム。同社では今後もiPadのようなスマートデバイスや、自社で育て上げてきたFileMakerによる業務システムの活用範囲の拡大を目指しているという。

 例えばiPadについては、営業担当者が客先へと持参し、訴求力の高いプレゼンテーションを行うといった形での活用も可能だろうと話す。

 「もし、3Dの図面などを容易に社外から参照できる環境が整えば、営業担当者が、これまでに手がけた案件の中から、見込み案件に近い成果物のデータを呼び出して、実際のできあがりに近いイメージを見せながら説明をできるようにもなるだろう。また、最終的には、顧客自身が、自分の発注した案件の進ちょく状況などを直接参照できるような仕組みに発展させて、より競争力を高めていきたいと考えている」(野崎氏)

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