いち早くiPhone、iPadの取り扱いを開始し、業務活用の市場を開拓してきたソフトバンク。社員自らが端末を使いこなし、そこで得た知見を営業に生かすことで導入を支援してきた。こうした取り組みにより、iPadの法人顧客数は2年で18倍に伸びるなど、好調に推移しているという。
こうした中、11月22日に開催されたMCPCソリューションフェアで講演を行ったソフトバンクモバイル 法人モバイルソリューション統括部の杉田弘明氏は、今後の法人市場で成長のカギを握るのはソリューションだと話し、いかによいパートナーを見つけ、いかにタイムリーに便利なサービスを提供できるかが重要だと説明。ソフトバンクが注力しているパートナー連携の事例として、4つの取り組みを紹介した。
1つ目はGoogleとの連携による法人向けGoogle Appsの販売だ。ソフトバンクテレコムを中心に営業を展開しており、ソフトバンクモバイルの通信料と一緒に支払えるサービスを独自に展開。2011年の第1四半期に8000契約規模だった獲得ID数は、2012年第1四半期には累計24万IDに達するなど好調に推移しており、今や世界でトップの販売プロバイダになっているという。
2つ目は、ソフトバンクテレコムとヤフーとの連携によるO2O型集客サービスの「ウルトラ集客」。ヤフーの集客力を生かしてリアル店舗への誘導を図る取り組みだ。Yahoo! JAPANサイト上のキャンペーンページからスマートフォンでバーコードを取得し、店頭のクーポン発券機にかざすと、割引やお試しサービスを受けられる紙のクーポンが発見される仕組み。両社はこうしたサービスの提供を通じて得られるクーポンの発券・利用履歴や顧客属性などのデータに注目しており、「ビッグデータとして活用し、顧客に還元するところも含めてヤフーとビジネスを始めている」(杉田氏)という。
3つ目はVMwareとソフトバンクテレコム、ソフトバンクモバイルの3社が提携して提供するBYODソリューションだ。BYODは、社員の私用端末を業務で利用するというスマートデバイスの導入方式で、企業が端末の購入コストをかけることなく業務に活用できることから注目を集めている。
VMwareとソフトバンクが提供するBYODサービスは、VMwareの仮想化ソフトウェア「VMware Horizon Mobile」をベースとしたもので、業務用データを私用端末内の個人データと完全に切り離した形で共存させられるのが特徴だ。杉田氏は「OSの上にOSを載せているような技術を使う。Mac上でWindows OSを動かすソフトがあるが、これがスマートフォンの中で実現するイメージ」(杉田氏)と説明する。
2012年度は無償のトライアルサービスとして2台の「RAZR M 201M」と合わせて提供し、その後商用サービスを開始する予定。iOSへの対応も検討しているという。
4つ目は米PayPalとの提携で提供するスマートフォン対応のクレジットカード決済サービス「PayPal Here」だ。クレジットカード決済システムは、専用端末や通信回線の設置に一定のコストがかかるほか、料金の回収に時間がかかるなどの課題があり、中小店舗にとってハードルが高い面があった。こうした課題を一気に解決できるのがPayPal Hereだと杉田氏は説明する。
PayPal Hereは、専用の小型カードリーダーをイヤフォンジャックに差し込んだスマートフォンを決済端末として利用できる、クレジットカード決済システム。スマートフォンとモバイル回線、1200円前後のカードリーダーがあればすぐに導入でき、代金の回収期間も3〜6営業日程度で済むことから、「中小店舗や訪問販売など、まだまだ提案の余地がある」と杉田氏は期待を寄せる。
すでに専用カードリーダーは一部のソフトバンクショップで販売されており、11月上旬からは紙のレシートを発行できる専用プリンタの販売も開始。対応カードも、VISAやMaster、AMERICAN EXPRESSに加え、JCBなどの日本のカードブランドへの対応も進めていく考えだ。
今後、スマートデバイスの活用範囲はさらに広がっていくと予想され、多様なニーズに対応するためにはパートナーとの連携が欠かせないと杉田氏。今後も「“新しい何かを生むソリューションとスマートデバイス”を掛け合わせて提供することで、ビジネスの世界を変えていきたい」と意気込んだ。
ソフトバンクモバイルが、2011年から同社の法人顧客向けに展開しているのが「モバイルソリューションマーケット」。スマートデバイスを導入した企業が、追加でソリューションの導入を検討する際に役立つサイトだ。
マーケットサイトには、ワークフローやセキュリティ、オフィスツール、SFA・日報など、14ジャンル49種のスマートデバイス対応のソリューションが用意され、企業の導入担当者は動画や資料を見ながら検討できる。気に入ったソリューションは、その場でWebから申し込むことができ、利用料金を通信料とまとめて支払えるようになっている。価格も中小企業が無理なく導入できる価格帯のものがそろっているのがポイントだ。
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