現行の需給調整市場では、DRの参加要件としてリソース(需要家)の電圧階級を「高圧以上」と定めており、低圧リソースのアグリゲーションは対象とされていない。
仮に低圧リソースを対象とする場合、市場参加にあたってのアセスメントや入札・約定・精算にかかる市場ルールの策定が必要となる。このため検討会では、低圧リソースが需給調整市場に参加することにより、社会的便益が得られるかどうかを確認することとした。
具体的には第1ステップとして、低圧リソースのアグリゲーターが、卸電力市場と容量市場に加えて、新たに需給調整市場に参加することで追加的に得られる収入と費用を比較した。
一定の前提条件のもと、蓄電池やエコキュート、EV等の低圧リソースをそれぞれ3万台アグリゲートした場合の費用便益評価は図9のとおりである。「理想シナリオ」では「なりゆきシナリオ」と比べ、ゲートウェイやシステム費用、通信費用が低価格と仮定されている。
図9の結果から、費用便益評価はそれほど楽観的なものではなく、低圧リソースのアグリゲーターが需給調整市場参加でメリットを得るためには、コストダウン努力により「理想シナリオ」に近づける必要があることが明らかとなった。
また分析の第2ステップとして、一般送配電事業者による三次調整力②の調達費用削減効果が確認された。
ただし現時点ではいずれの分析も、一般送配電事業者のシステム改修費用や業務増加費用は試算の対象としていないため、社会全体で見たときに便益が得られるかどうかは、今後の検討課題とされる。また、同じタイプのリソースが大量に導入されることにより、期待収益が低下する可能性も念頭に置く必要があろう。
このようにDER活用の費用対便益評価は不透明な部分が残るものの、予想以上のスピードで導入が進むことも充分にあり得る。そのため、先行してDERの系統接続ルールを整備するなど、社会費用の抑制の観点から多面的な検討が進むことが期待される。
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