容量市場の2022年度メインオークション結果が公表、約定平均単価は1.7倍にエネルギー管理(5/5 ページ)

» 2023年01月31日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]
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JERAによる誤入札への対応

 メインオークションの応札期間終了後、JERAは監視等委員会に対して、応札した一部の電源が誤った算定方法に基づき応札価格を決定していたことを報告した。

 この原因は表計算ファイルの参照が誤っていたという単純ミスであり、JERAから自主的に報告が行われた点を踏まえ、意図的ではないと判断された。監視等委員会はJERAに対して文書指導を行い、再発防止を求めた。

 なお現行の入札ガイドラインには、このような応札の是正に関する規定が無かったため、今後、ガイドラインを改定することとした。

 今回の誤入札の検知は約定結果の公表前であったため、修正されたJERAの応札価格を元に、正しく約定処理を実施することが可能となった。

 もし約定結果公表後に同様の事案が発生した場合には、大きな問題となり得る。この場合、供給力を確保する観点から容量確保契約は維持しつつ、何らかの精算(容量確保契約金額の減額等)を行うなど、具体的な方法について今後の検討課題とされた。

オークション約定価格の変動

 容量市場メインオークションでは、第1回(2020年度)の約定価格が上限価格と並ぶ14,137円/kWとなったことが大きな話題となった。経過措置考慮後の総平均価格で見ると第1回が9,533円/kW、第2回が3,109円/kW、今回第3回が5,178円/kWである。

 資源エネルギー庁は「制度検討作業部会」の第75回会合において、容量市場制度で先行する米国PJMの容量オークションの価格変動を報告している。

 その決済価格は上下10倍ほどの変動を繰り返しており、年月が経過すれば自然に一定の水準に収斂するという単純なものではないことが分かる。英国の容量オークションの価格変動も同様である。

図7.米国PJMの容量オークション 決済価格 出所:制度検討作業部会

 そもそも容量市場も市場メカニズムに基づく仕組みであるため、需要と供給のバランスを正しく反映し価格が決まるならば、それ自体は制度が本来期待する姿であると言える。

 また『容量市場に関する既存契約見直し指針』においては、「発電事業者等が容量市場から収入を得ており、既存相対契約においてkW価値に係る費用が支払われている場合は、既存契約を見直して、相対契約に基づく取引価格から容量市場から得られる収入額を差し引いた上で、発電事業者等が差額分を受け取る等の精算が行われるよう、当事者間で協議の上、既存契約の見直しを行う」こととされている。

 実際に、東北電力はその規制料金値上げ申請において、容量市場に関する収入と支出はニュートラルであるという考え方を示している。

図8.東北電力 容量市場に関する料金原価織り込みの考え方 出所:東北電力

 東北電力の主張が認められるかどうかは不明であるものの、容量市場の最初の実需給年度(2024年度)が近付きつつある今、容量市場kW単価の大小だけなく、相対取引におけるkW単価やkWh単価にどのように反映されるかを確認すべきと考えられる。

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