一次調整力は、平常時と異常時(電源脱落)の双方に対応する調整力であるが、このことにより、本来異なる目的を達成するための要件が重複する状態となっていると考えられる。
平常時において周波数は常に上昇・低下を繰り返しており、この変動を周波数維持目標0.2Hz以内に維持するためだけに、一次調整力の全量を「10秒以内に」供出する必要性はないと言える。
他方、大規模電源脱落時に周波数が1Hz低下すると、連鎖的な大停電を招くおそれがあるため、異常時の基準としては「1Hz」に変更することが考えられる。
しかしながら、一次調整力の「平常時」と「異常時」それぞれに異なる商品要件を定めることは、実質的に新規商品を導入することに等しく、需給調整市場システムの大きな改修が必要となり、現実的ではない。よって広域機関では、早期に実現可能な手法として、「平常時」と「異常時」の共通的な供出可能量の見直しについて検討を行った。
現時点(2022年度)、一次調整力の必要量(全国平均値)は「平常時」1,136MW、「異常時」2,190MWであり、概ね1:2の比率となっている。つまり一次必要量全体のうち、平常時必要量は1/3であるため、一次全量の1/3の調整力が0.2Hzの周波数低下で応動すればよいと考えられる。調定率が一定であると仮定すれば、「(0.2Hzの3倍の)0.6Hz周波数低下で全量供出」に変更すれば、「平常時」に求められる応動要件を満足することができるといえる。
他方、「異常時」に求められる応動要件については、供出可能量の考え方を「0.6Hzの周波数低下継続時に供出できる量」と「1.0Hzの周波数低下継続時に10秒以内で供出できる量」のどちらか小さい方とすることで、両者を満足しつつ安全サイドとなる供出可能量の考え方とする。
以上より、一次供出可能量の考え方の見直し検討結果と、一定の前提に基づく供出可能量の試算結果は表6のとおりである。
一次調整力の現在の供出可能量「0.2Hzの周波数低下時に応動時間10秒で供出できる量」から、「0.6Hzの周波数低下継続時に供出できる量」に見直すことにより、揚水機を2023年度以前と同水準の供出可能量を見込むことが可能となる。
ただし、需給調整市場において揚水機の応札量が少ない理由は複数の要因があるため、今回の見直しにより、どれだけ応札量が増加するかは不透明である。
なお現在、市場未達時には余力活用契約に基づき、必要な調整力を確保しているが、余力活用においても、一次調整力供出可能量の考え方に準じている。よって今回の見直しは、需給調整市場の応札量拡大に寄与するだけでなく、余力活用電源の並列台数減少や余力活用コストの低減にも寄与すると考えられる。
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