いわゆる「無償貸与」や「無償配管」、紹介料支払い等の利益供与などのLPガスの商慣行を巡る課題は、LPガス事業者だけでなく、不動産関係者・建設業者との取引関係に起因するものであり、近年は不動産・集合住宅オーナーから要求されることも多いと指摘されている。このため、先述の通報フォームに寄せられた情報等を端緒として、国土交通省・地方整備局、資源エネルギー庁・地方経済産業局が連携し、不動産関係者に対する個別ヒアリングを全国各地で実施している。
液化石油ガス法が直接対象とするのはLPガス事業者であるため、「無償貸与」等を行った場合、LPガス事業者はライセンス剥奪等の罰則があるのに対して、「無償貸与」等を求めた不動産関連業者には罰則が適用されないという不均衡な状態に陥っている。
資源エネルギー庁は国土交通省や消費者庁等の関係省庁と連携しながら、商慣行の改善に向けた取り組みを進めているが、改正施行規則の施行後も、不動産業者からLPガス事業者に対してエアコン等の「無償貸与」や紹介料等を強要する事例は後を絶たないことが報告されている。
不動産関連業者の自主性に委ねるのみでは実効性に乏しいと懸念されるため、国土交通省には、法的規制の強化も含めた対策が求められる。
資源エネルギー庁は2025年2月、賃貸集合住宅のオーナーを対象に、LPガス省令改正の周知も兼ねたアンケート調査を実施した。回答数は約1,000者である。
もともと「無償貸与」等の利益供与を受けていないオーナーもいることに留意が必要であるが、LPガス施行規則改正の内容について「知らなかった」と回答したオーナーは48%であった。
LPガス省令改正を踏まえ、優良なLPガス事業者では、2024年3月以前に締結した既存契約の見直しや、賃貸集合住宅オーナーに「無償貸与」した設備の買取り等を求める交渉を進めている。
アンケート調査では、過去に「無償貸与」された設備等についてLPガス事業者から契約条件変更の打診等があったと答えたオーナーは42%であり、このうち、「無料で貸与された設備等をリースに切り替えるなど、自ら費用負担することとなった」が4割程度、次いで「無償で貸与された設備を自身で買い取った(全額精算又は分割払い)」(36%)との回答であった。LPガス事業者による商慣行是正に向けた取り組みが、一定程度の成果を挙げていることがうかがえる。
施行規則の改正により、LPガス業界の商慣行が全体として大きく改善したことは高く評価すべきであるが、まだグレーゾーンが残されていることや、悪質な取引が地下に潜り、一層不透明さを増した面もあることが課題として指摘されている。
また、優良なLPガス事業者の多くは、オーナー等との既存契約の積極的な見直しも進めているが、一般的に契約期間は10〜15年程度と長期であるため、改正施行規則を踏まえた契約の見直しが本格化する時期は、2030年代前半と想定されている。
これまで以上に、LPガス事業者やオーナー等、資源エネルギー庁や国土交通省等の関係省庁が一体となり、取引の適正化に向けた取組を進めることが期待される。
目標は「2050年に100%グリーン化」 LPガスの脱炭素ロードマップ
迫るLPガス商慣行の是正に向けた省令改正、ガイドラインの内容も改定へ
問題視されるLPガス業界の商習慣、是正に向けた制度改正の内容が具体化Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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