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» 2010年04月15日 18時30分 UPDATE

樋口健夫の「笑うアイデア、動かす発想」:脱税はレシート宝くじでも防げない? 台湾の脱税告発ビジネス

台湾では「統一発票」という“レシート宝くじ”で営業税(日本の消費税相当)を納める。宝くじの要素と相まって、税収が増えるのと同時に国民の満足度も上がるという制度なのだが、それでも脱税はなくならないのであった。

[樋口健夫,Business Media 誠]

 前回のコラムで、台湾が「統一発票」という“レシート宝くじ”を実施してきたことを説明した。大部分の企業や商店は発行した統一発票の写しに従って、税金を納める仕組み。日本の消費税にあたる営業税を徴収するためのものだが、宝くじの要素と相まって、税収が増えるのと同時に国民の満足度も上がるという取る方も取られる方もWin-Winな制度なのである。

 詳細は前回をご覧いただくとして、わたしは、すべての商店がきちんと統一発票を発行するのか知りたくなった。実際の商店やレストランにおける統一発票の発行状況を調べてみると、毎月の売り上げが20万元(60万円弱)以下の商店やタクシーは免除。昼食のお弁当屋のように支払い時にあわただしかったり、激しく忙しい場合も統一発票が免除となる。

 台北の市内で実際に2日間ほどいくつかの店舗で購入してみたが、すべてのコンビニやスーパー、喫茶店などで統一発票を受け取ることができた。市場の近くの大きな乾物屋で、乾燥ホタテ貝(約3000円)を買った時、レジで統一発票をくれなかった。店構えやお客の数からみても、とても月の売り上げが20万元とは思えない。なんどか「レシート」と尋ねると「ノーレシート」と返答を受けたが、食い下がると、手書きのレシートを書いて店の印鑑を押して渡してくれた。観光地のちょっとした店でもレシートを要求すると、手を振って「ノー」の一言だった。これは脱税につながるのではないか。

 本来、企業や商店にとっても統一発票を発行することでのメリットがある。それは、統一発票の定型用紙のお陰で、企業や商店の会計が単純化できたことだ。さらに商店にとっては、法人税も統一発票から計算が可能になる。これもまともに税金を支払っている企業や商店にはメリットが出てくる――はずなのだ。だが、どうしても税金を払いたくない企業はいるというわけである。

 台北にある台湾財政部(日本の財政部に相当)の担当者に聞くと、「売り上げ規模が小さくて統一発票を出さない店は、店頭に黄色い紙を張っています。統一発票を発行しなければならない大きな店で発行しなければ、通報があります。通報者には、報奨金として脱税摘発額の20%を支払います」

 「脱税の告発を専門の仕事にする人が出ませんか」と聞くと「職業的な脱税告発人もいます」という。面白い仕事が出てくるものだ。

 社用の購入品はどうなっているのだろう。その場合は、必ず会社の登録番号(会社名とは異なる)を統一発票に記入してもらうことになっている。その番号が入っていなければ、会社経費として認めてはもらえない。「上様」のようなお手軽な手法は通用しないのだ。

 一方、台湾で活動している日本企業の会計担当者は「逆に会社の登録番号をレシートに書いてあれば、多少不自然な内容の購入であっても、社用として通用してしまう実態が起こることも多い」という。検査する側にも人的な余裕がないので、見逃しが生じてしまうらしい。

 台湾は2013年には、統一発票の電子版を見込んで制度の見直しを図る予定だ。詳細は分からなかったが、日本でも“レシート宝くじ”を導入しようとするならば、台湾の経験を学ぶ必要があるのではないだろうか。

今回の教訓

 宝くじも脱税には勝てず……。


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著者紹介 樋口健夫(ひぐち・たけお)

 1946年京都生まれ。大阪外大英語卒、三井物産入社。ナイジェリア(ヨルバ族名誉酋長に就任)、サウジアラビア、ベトナム駐在を経て、ネパール王国・カトマンドゥ事務所長を務め、2004年8月に三井物産を定年退職。在職中にアイデアマラソン発想法を考案。現在ノート数338冊、発想数26万3000個。現在、アイデアマラソン研究所長、大阪工業大学、筑波大学、電気通信大学、三重大学にて非常勤講師を務める。企業人材研修、全国小学校にネット利用のアイデアマラソンを提案中。著書に「金のアイデアを生む方法」(成美堂文庫)、「マラソンシステム」(日経BP社)、「稼ぐ人になるアイデアマラソン仕事術」(日科技連出版社)など。アイデアマラソンは、英語、タイ語、中国語、ヒンディ語、韓国語にて出版。「感動する科学体験100〜世界の不思議を楽しもう〜」(技術評論社)も監修した。近著は「仕事ができる人のアイデアマラソン企画術」(ソニーマガジンズ)「アイデアマラソン・スターター・キットfor airpen」といったグッズにも結実している。アイデアマラソンの公式サイトはこちらアイデアマラソン研究所はこちら



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