【ショットノート×カードBS法で考えた】運動嫌いの人に、運動習慣を付けさせるには? (後編)アイデア発想実践記(2/2 ページ)

» 2012年04月03日 11時00分 公開
[シックス・アパート 中山順司,Business Media 誠]
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キレイにグルーピングもできた

 2回のセッションで出た3人のアイデアをグルーピングした結果、下記の通り、大きく3タイプに分けることができました。

グループ 仕掛けの内容
(1)モチベーションアップ系 本人のやる気を高める仕掛け(異性からの評価、褒美、友人と競争、トレーナーを付ける)
(2)習慣化系 無意識のうちに、いつの間にか運動してしまっている仕掛け(掃除、ゲーム、ボランティア、スポーツ、ペットの散歩)
(3)エクストリーム系 言い訳できない、逃げられない状況に追い込む仕掛け(自衛隊入隊、強制合宿、長期休暇の取得、田舎に引っ越す、スポーツイベントに勝手にエントリーされる)

反省点とメンバーのコメント

 今回は、メンバー同士の発想に大きなブレがなく、似通ったアイデアが見られました。よく言えばグルーピングしやすく、悪く言うと劇的な相違はさほどなかったというわけです。グルーピングしていく過程で、活発な議論(化学反応)が起こせたことは、大きな成果だったと思います。手法は違えど、回を重ねるごとに手応えを感じています。

 以下、各メンバーのコメントです。

中山

セッション1で出た他のメンバーのアイデアをテコにできたため、セッション2の方がむしろ簡単に感じられた。セッション1は、ゼロからのスタートとなるので、いきなり脳のエンジンがトップスピードに乗らない気がする。カードBS法をするときは、少なくとも2回以上はセッションを繰り返すのがよいと思う。


鷹木

発想の軸を自分の中で仕組化することで、うまく横展開できたのがたくさんアイデアを出せた理由かなと。セッション1も2も、同じ気持ちで行うことができた。


上口

セッション時間が長くはないため、どうしても焦りを感じることがあった。一端焦りが生じると、発想が偏り気味になり、自分の発想の枠を壊せないもどかしさを感じた。


 今回学んだことは次の3つでした。

(1)追及せずに、深掘りしよう

 苦し紛れに出したアイデアなどは、ただの思い付きだったり、考えの浅いものである場合があります。そういうとき、発案者に向かって「それって、こういう意味?」「こういう状況ではどうなるの?」と追求しすぎると、発案者は「いやー、そこまでまだ考えてなくて……」と意気消沈してしまいます。その代わり、深掘りしてあげましょう。「こんな要素を足したら面白くない?」と盛ってあげるのは、大歓迎です。

(2)誰の発案であるかは気にしない

 深掘りする際、オリジナルのアイデアが誰のものであったかは、あまり意識しない方がよいです。アイデア主をリスペクトするのは構いませんが、変に遠慮したり、いじり倒すことをためらうと、面白いアイデアには化けません。メンバー間に上下関係があると気にはなるでしょうが、極力避けるよう心掛けましょう。

(3)手と口を動かし続けると、場のリズムを失わずにすむ

アイデア出しをしていて一番うれしいのは、「連鎖反応が起き、次から次へとアイデアが止まらなくなるゾーンに入った状態」です。逆に苦しいのが沈黙と停滞。口も手も止まってしまうと、そこからドライブをかけるのは一苦労。そんなとき、ちょっとつまめるお菓子があると、手持無沙汰になりません。お菓子が直接の手助けにはならなくても、くだけた雰囲気を演出してくれます。手の汚れにくい一口サイズのチョコやアラレなら、進行の妨げにはならないでしょう。


石井さん監修コメント 「会議のプロセスに『集団→個人』とデザインしよう」

 アイデアを生み出す時に「個人発想」と「集団発想」の2つが交互に生じるように、ブレストの構造を組むと、ずっとブレストを続けるだけよりも生産性が上がるケースがあります。個人作業の時間を「黒」、集団作業の時間を「白」と仮に表現するならば、ゼブラのように白・黒・白・黒、と繰り返す方が、白・白・白・白……とやるよりも良いケースがあります。会議のプロセスを設計する際には、進行上にゼブラを意図的に作り出してください。

 この個人と集団の変化の中で効果が特に高いのは、「集団→個人」の所です。大抵の会議はこのおいしいところを捨てています。「会議までにアイデアを考えてこい→持ってきたのをレビューしあってブレスト→解散」となりますが、これは、もったいない。

 はじめが、個人なり、集団なり、どちらの場合であっても「集団で話し合う(ブレストをする)」の後に「個人発想の時間」を設けると、チームの創造力をよりよく使うことができます。

 文中で中山さんが書いている「二度目の発想時間」がまさにそれに当たります。

 このエッセンスはカードBSに限らず成り立ちますので、普段行う普通のブレストでも「ブレスト(7分)→1人ThinkingTime(5分)→ブレスト→1人……」というゼブラを作ると面白い現象が見られるでしょう。ぜひ試してみてください。

 なおカードBSの場合、書いたアイデアがカード状の紙に残るので、発表するたびに窓ガラスや壁にテープで貼っていくのもいいでしょう。ラウンドを回していくうちに「あれ、さっきのあのアイデア、えーっと、なんだっけ、確かこの辺に……」という感じに皆が窓を見てブレストをするようになります。

 人間は空間記憶の能力が発達しているので、先の発言を時系列的に空間の左端から右端へ向かって張っていくとかなり円滑に昔のアイデアを参照し、活用できます。なお、壁一面がアイデアで埋まっていく姿はそれだけで参加者の「俺たちはやれている」というムード感を醸成でき、より創造的思考を促進できます。

 ゼブラの幅や繰り返しを調整すると、発散の広さや、展開の深さをある程度コントロールできます。集団で深堀状態になりすぎて幅が出せないと感じたときには、1人発想作業をはさみます。1人発想作業は、方向性の集中を徐々にゆるめてアイデアの多様性を作り出してくれます。

 アイデアの発展方向があまりに外れすぎて戻ってこれないときに、急きょ「ここからは8分ぐらい、アイデアを1人でカードに書き溜めてほしい」と舵を切る感じで進めるといいでしょう。その方向へのとらわれが解けるぐらいの時間に調整して、また場を集団(ブレスト)に戻して、再出発するといいでしょう。

 よくある、うまくない進行は、方向性を変えたいと思っているリーダーがブレスト状態をブレイクしないままに、恣意的にアイデアの方向性を捻じ曲げて方向性を新たに付けようとする、引っ張りすぎるやり方です。この方法は、下手をするとメンバーのモチベーションをそいでしまいます。それが絶対に間違っているとはいえませんが、リーダーのヒューマンスキルが低いと、大抵は「言わされブレスト」になり発想の乏しい時間を迎えます。

 「どうもこの方向性ではあかんなぁ」と場が苦しい感じになって進行に迷ったら「ゼブラを作る」と思い出してください。休憩ではありません。発想作業は続行させつつの、ブレスト状態のブレイクです。


 まだまだ寒い季節で、運動をおっくうに感じている読者がいたら、ぜひここに挙げたアイデアのいずれかを試してみてはいかがでしょうか。

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