“100年企業”を目指すEvernote、2013年まではIPOせずチャレンジングに

Evernoteは米本社からフィル・リービンCEOを迎えて行った事業戦略説明会の中で、ここ数カ月の出資&買収状況を報告。IPO(株式公開)の時期についても触れた。

» 2012年05月17日 16時45分 公開
[上口翔子,Business Media 誠]
フィル・リービンCEO

 「2013年まではIPO(株式公開)をせず、100年続く企業になるための備えに注力する」――。5月17日に行った事業戦略説明会の中で米Evernoteのフィル・リービンCEOは今後の方向性についてこう話した。

 2008年6月に米国でスタートアップしたEvernoteは、2012年5月現在に世界で約3000万ユーザーを抱えるまでに成長。その間、Evernoteを中核としたファミリー製品の開発やマルチプラットフォーム化を図り、資金面では2011年7月に米Sequoia Capitalなどから5000万ドル、最近では2012年5月に米Meritech Capitalや中国のCBC Capital、NTTドコモ、そして楽天の三木谷浩史社長やsalesforce.comのマーク・ベニオフ(Marc Benioff)CEOなどによるCEO Clubといった複数の組織から計7000万ドルの出資を受けるなど、順調に事業を拡大している。

 M&Aについても、2011年8月に画像編集/共有アプリ「Skitch」を、2012年5月にiPad用手書きアプリ「Penultimate」を買収し、App Storeでは人気アプリにランクインにする好調ぶり。同じく2012年5月には中国向けの独自サービス「印象筆記(Yinxiang Biji)」を開始するなど、国際展開にも力を入れている。

 そんな中、なぜあえて今IPOを待つ宣言をするのか。フィル氏自身、周囲から「IPOはしないのか」と問われる機会が多いという。だが、「IPOは1つの目標だが、あくまで100年企業になるための通過点の1つ。今この時期こそ数々のリスクに対面しておき、あらゆる施策を試みながら将来の備えをしたい。スタート当初はまだ規模も小さく一度に大きなリスクは取れなかった。それが(チャレンジ)できるのが今だ」とその意図を話す。

 将来の備え――具体的には、Evernoteの機能強化および周辺アプリケーションの開発、開発イベントの実施といった取り組みだ。一部は2012年度内にも実現する見込みで、Evernoteが持つ共有機能の強化や、ビジネス向けへの展開を予定している。詳細は明かさなかったが、共有機能についてはUI(ユーザーインタフェース)の変更や、少人数でのコラボレーション機能の強化。ビジネスユースでは10人の小規模から1000人を超える大規模組織までが安心して使えるセキュリティやユーザー管理機能を備えたものを想定している。


  2012年度内の施策として共有機能の強化や、ビジネス向けへの展開を予定

 なお、Evernoteではかねてより各サードパティとAPI連係を図るパートナープログラム戦略を進めているが、その中でも日本企業は全体の約3分の1を占める。「SHOTNOTE(ショットノート)」のキングジムや「CamiApp(キャミアップ)」のコクヨS&T、「ScanSnap」のPFUなどの企業が名を連ねている。

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