インタビュー
» 2012年11月30日 17時10分 UPDATE

“次世代社内掲示板”オフィスサイネージって知ってる?

「オフィスサイネージ」をご存じだろうか。デジタルサイネージが公の空間に向けて情報発信するものだとすると、オフィスサイネージは社内に向けて情報発信する“次世代社内掲示板”。このオフィスサイネージを導入したNTT東日本東京支店に話を聞いた。

[鷹木創,Business Media 誠]
st_ni01.jpg NTTアイティのデジタルサイネージ

 「オフィスサイネージ」をご存じだろうか。近年、ターミナル駅などで見かける大型の液晶ディスプレイやプロジェクターを使った「デジタルサイネージ」がパブリックな空間に向けて情報を発信するためのものだとすると、オフィスサイネージは社内という閉じられた空間に向けて情報を発信するソリューション。こちらも液晶ディスプレイなどを用いるが、表示する内容は主に社内で共有するべき情報となる。いわば“次世代社内掲示板”と言えるのがオフィスサイネージなのである。

 オフィスサイネージの一番のメリットは、ネットワークにつながっているためタイムリーに情報を配信できること。2009年ごろから導入企業も増えてきたが、そうしたメリットの一方で情報を発信するための機材や人的コストなどを重くみて導入をためらう企業も多かった。ところが最近、安価なセットトップボックスを用いた配信機材が登場したり、そもそも液晶ディスプレイの価格が下落したことを受けて、再びオフィスサイネージ導入の機運が高まっている。

東日本大震災の時も活躍

st_ni02.jpg NTT東日本東京支店の後藤玲子さん

 「東日本大震災で災害情報の共有に役に立った」と話すのはNTT東日本東京支店の後藤玲子担当課長(企画部経営企画部門広報担当)である。東京支店にNTTアイティのオフィスサイネージを導入したのが大震災の2日前に当たる2011年3月9日のことだった。震災当日の交通情報や被災情報などはもちろん、その後、東京電力が行った計画停電への対応も迅速になったという。

 「オフィスサイネージではなくてメールや回覧板でいいんじゃないか、という声もありましたが、社内メールで流しても未読のままになってしまったり、Webページを作っても閲覧できない人がいたりと試行錯誤していました。ミーティングや回覧板は伝わるまでに時間もかかります。ポスターは張り替えの手間やコストがかかるだけでなく、古い情報のまま放置されてしまうこともあります」

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 確かにメールやWebページは日ごろからPCやスマートフォンを業務で使う従業員であれば比較的アクセスしやすい。だが、1万人近い社員が約90拠点に散らばる東京支店の場合、屋外で業務をするスタッフやコールセンターのスタッフなど、必ずしもPCなどで会社内の情報に自由にアクセスできる人たちばかりではなかった。

 それに業務内容はもちろん、勤務する場所や形態、時間もそれぞれ。内勤だけでも事務や企画などと細かく分かれる。従来まではこうした違いを一括りにして社内情報を共有せざる得なかったが、各部署にオフィスサイネージを設置することで、その部署の人が必要な内容を、もしくはその部署に関連する部署の情報などを流すことでコンテンツの有用性を高めた。情報を送り出す先のターゲットを絞ったのである。

 「グループ分けは最大3000通りぐらいできますが、実際はそれほど分けていません。コンテンツの量は現在1日70件くらい入っています。すべてのコンテンツをみるには30分ぐらいかかりますが、放映枠を午前、午後、夕方などと分けて、適切な枠に必要なコンテンツを繰り返し放送することで接触率を上げています。例えば、朝はミーティングで言ってほしいことを流したり、お昼は社員同士のコミュニケーションを図るようなコンテンツなどちょっとゆるめな内容にしたりしています。夜は社員おすすめの居酒屋情報を流すこともあるんですよ」


なぜオフィスサイネージは「見る」のか

 「そもそもみなさん、テレビなどの映像が好きなんですよね」と後藤さん。確かに液晶ディスプレイの外観はテレビのように見える。業務で表彰を受ける社員をオフィスサイネージで紹介することもあるのだが、ここに映ると「私、テレビに出ちゃった」「あ、あの人が出てる」などと話題に登るという。

 テレビCMでも「続きはインターネットで」とWebページに誘導する手法と同様に、オフィスサイネージでも「詳しくは社内ホームページで」とすると反応がいい。大きな画面にパッと表示するオフィスサイネージは気軽にひと目を引くのが利点。メールやWebページ、回覧板など旧来のやり方はじっくりと読ませるのが利点。それぞれ組み合わせて使うことで、相互の効果を向上できるのである。


st_ni003.jpgst_ni004.jpgst_ni005.jpg 配信するコンテンツ例

 顧客サポートの面でも効果がある。例えば突然の雷があると通信の状況が不安定になることがある。するとコールセンターに電話が寄せられるが、コールセンターではうまく応対できないことがあるという。これは、コールセンターを分散させているため、局所的な豪雨などを実感できないセンターもある。結果、顧客からの電話にもちぐはぐな応対になってしまう。「そこで、オフィスサイネージで雷雨情報を流すことにしました。そうしたら応対が格段にスムーズになったんです」

 テロップなどで緊急情報や故障情報を配信したり、配信する順番を急遽変更することも可能だ。導入直後は更新した情報の反映に時間がかかっていたが、現在では数分で反映するという。

コンテンツの「情報管理はしてない」

 東京支店で効果を発揮しているオフィスサイネージだが、導入やその後の運用での問題はなかったのだろうか。導入は広報担当が取りまとめたが、いかんせんスタッフは数人。「これまで導入事例がなかったので、社内コンセンサスを得るためにも、導入をスムーズに進めるためにもプロジェクトチームを立ち上げた」という。

 社内スタッフに「関係ない」と思われないように連携には気を遣った。プロジェクトチームには各部署から参加してもらい、支店全体で作り上げる体制を構築。使い方の説明やどういうことに利用するか、どうやって運用していくかをディスカッションし、各部署にオフィスサイネージのコンテンツを登録する権限を付与することに決めた。

 できるだけ内製することも方針だ。例えばオフィスサイネージを設置する台などの組み立てや配線の接続は各部署で行った。「当初は大騒ぎでしたけど、自分たちのツールという気持ちになったのでは」と後藤さん。現在は400台あるというオフィスサイネージへの配信コンテンツを登録できるスタッフは180人に達した。

 この180人は各部署をまとめる総括担当のスタッフがほとんどで、事務連絡を発信する担当者が多い。ちなみに後藤さんによると「情報管理はしてない」。というものそもそも社内向けの情報ということもあるが「部署の情報なんですから登録前に上司に相談するはず。仮に何か問題が発生したらすぐに登録を外せばいい。それができるのもサイネージのいいところ」ぐらいの気持ちで受け付けている。

 コンテンツのごく一部には数万円をかけるような“大掛かり”なものもあるが「ほとんどはPowerPointで作成すれば済む」という。当初はコンテンツの相談を受けてテンプレートも用意したが、「あっという間に使われなくなってしまいました」と苦笑い。テンプレートは使わなくなったがフォントサイズだけは「だいたい20ポイント以上になりました」。なお、東京支店で使っているオフィスサイネージは42インチがメインで、オフィスの大きさやレイアウトの都合によって、26インチや32インチのものも使っている。

単なる広報誌とは違う“効果”

st_ni03.jpg NTT東日本東京支店の柳さん

 「新商品の周知に効果がありました」というのは、NTT東日本東京支店の柳梨江子主査(オフィス営業部企画部門市場開拓担当)。柳さん率いるチームは美容院向けに「ビューティアルバムfor光iフレーム2」というデジタルサイネージを活用した商品を開発した。これはAndroidのタブレット端末に情報を配信する仕組みで、美容院に通う顧客の髪型をデジタルカメラで撮影して配信している。今まではイラストなどで髪型をイメージしてもらっていたが、実際の写真のほうがイメージしやすいというわけだ。

 ところが販売は苦戦した。担当の営業部だけでも約2000人の営業マンが所属する。新商品の特徴やセールスポイントを理解してもらうだけでも全員への周知には時間がかかるのだ。そこで、オフィスサイネージを使って認知度を上げることを考えた。ゴールデンウィーク明けの約2週間、30分おきに集中的に製品紹介を放映したことで、目に留めてくれる人が少しずつ増え、徐々に認知度を上げる助けとなったという。「社内からの問い合わせは驚くほど増えました。ビューティアルバムfor光iフレーム2のような新コンセプトの商品周知にも効果がありますね」(柳さん)。


st_ni05.jpg ビューティアルバムfor光iフレーム2

 このほか、社内勉強会やボランティア活動などの告知も効果が高いと後藤さんは話す。「小学校でネットの安全教室というものをやっているんですが、社員が先生役をするんですね。これまでの方法だと募集するのが大変で。でもオフィスサイネージで流すとすぐに募集が埋まるんです」。今まで興味あったけど、募集があることを知らなかったという人にリーチできているのかもしれない。

 後藤さんは「オフィスサイネージで新しい広報誌を作りたかった」という。「(東京支店の)1万人が見えているということはすごく重要です」と話す広報誌の“新しい形”はこれからが本番だ。

st_ni04.jpg オフィスにあるサイネージの前で。左から東京支店の山下雅史さん(広報担当。後藤さんとともにオフィスサイネージの導入を進めた)、柳さんのチームで新商品開発、販売に携わる坂本綾子さんと白戸冴子さん、そしてインタビューに応じてくれた後藤さんと柳さんだ

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