従来は本部、支社、物流網までを主軸オペレーションとしていたが、今後はICCで顧客から取引先まで全てを対象に含めるため、次の2つの施策をとるという。1つはバリューチェーンマネジメント。顧客起点の品揃えや発注業務のために、売上計画の精度をSCMで向上させ、販促やプロモーション、値引き戦略などを企業全体として同期化させる。
また、2つ目はリアルタイムマーケティング。顧客を巻き込んだ商品開発と、販売計画実現のための同期化したマーケティング施策を実施する。
「過去の情報を基にした需要予測は古い時代のマーケティングであり、これからはデマンドシェーピング(新たな需要を形成すること)をしていく時代。ケータイやインターネットを活用し、生産者主導から消費者主導への新たなCRMを実現させる」(横溝氏)
そのため、ローソン3.0では、店舗・SV・本部といった3層の情報構造による現場起点型に加えて、マルチベンダーで情報基盤を入れ替え、情報分析機能を本部に集約し、個別店舗の顧客対応能力を高めていく本部発信型のインテリジェンス機能を提供していくという。
横溝氏は、「定量情報をどのように見せるか、あるいは定性情報をどのように共有するかが大切」だと強調する。ローソンでは機会ロスと廃棄ロスを削減するため定量情報をいかに見える化して次のアクションに結びつけるかが課題だったという。情報を集める方法はいくらでもある。しかし、集めた後にクレンジングして使えるデータとすることが難しいというわけだ。
特にSCMではデータの精度が計画の成否を左右する。そのため、ICCにおいて情報を効率的に集め、使える形に加工する仕組みと、一元的に分かりやすく見せる工夫によって、情報に基づいた施策を実行する情報分析プラットフォームの構築を計画している。
「しかし、データを自社の強みにするのは簡単ではない。世の中は急速に変化しており見方も非線形に変わる。この大不況においては、自社のセンシティビティを磨いてアクションを的確に実施できる企業が勝ち残る」
また、定性情報の共有にはセールスフォース・ドットコムを活用。クラウドソリューションによって、本部方針の浸透からベンダーとの情報共有、有能なオーナー候補の発掘、顧客の苦情共有といった定性情報のリアルタイムな共有と分析を可能にすることで、将来的には1200社のベンダーや12万5000人のクルーともコミュニケーションを可能にしていくという。
さらに、ローソンのICCにはいくつか特長あるシステムが使われている。その1つの「FOCUS」は、ローソンのデータ基盤として現行の商品販売動向や店舗発注速報、商品客層分析などの情報系画面を網羅的に保有するシステムだ。店舗日単位で400日、店舗週単位で104週の50テラバイトのデータベースを抱え、仮説・検証、進捗確認を月次・週次・日次で行う。
また、「SLiM」は基礎データをFOCUSから引き出し、LINUXのコマンド・シェルスクリプトを使って、業務改革に必要な社内アプリケーション開発や運用をアジャイルに実施するシステム。フラットファイルでのデータ管理、全店舗分のレシートデータを保持するデータベースとしての役割も持つ。
加えて、アクセンチュアと組みBPO(アウトソーシング)によって、マーケティング施策のROIを実施している。ローソン会員800万人の購入実績データの一部(約1億レコード)を利用し、BIで分析した定量的評価結果を施策期間中の収益押し上げ効果として測定。特定セグメント顧客が購入しやすい商品をリストアップし、販促の対象商品選定の参考にしているという。
CIOに着任した当時、横溝氏は経営と同期するIT部門を目指したが、現在は経営を変革するIT部門を目指しているという。
「経営課題に片足を置き、もう片足をITに置き、経営課題を解決するIT施策を自らの頭で考えることが重要」と持論を語る同氏は、IT施策を経営戦略に仕立て上げ、それを実行し、経営改革の効果を継続的に創出することをビジョンに、選ばれるローソンを実現していくという。
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