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ソフトバンクモバイルとTSUTAYAの相思相愛で実現――「SoftBank SmartTV」の狙い(1/2 ページ)

» 2012年12月19日 10時00分 公開
[折原一也,ITmedia]

 ネットで映画やドラマ、アニメなどを見たいときにレンタルできる映像配信(VOD)サービスが今、盛り上がりを見せている。その1つの原動力となっているのが、約1年前から携帯電話キャリア各社が相次いで公式サービスとして提供を開始した、スマートフォン向けの映像配信サービスだ。

 ソフトバンクモバイルも次なる映像配信の一手として、スティック型の端末をテレビのHDMI端子に接続することで、月額490円(有料コンテンツを除く)で「TSUTAYA TV」のVODコンテンツや、「GyaO!」「UULA」「BBTV NEXT」のコンテンツが楽しめる「SoftBank SmartTV」を1月以降に開始する。

photo SoftBank SmartTVの仕組み。スティック端末にはUSB経由で電力を供給する必要がある

 携帯電話キャリアのソフトバンクがなぜ今、テレビ向けの映像配信サービスを立ち上げるのか。ソフトバンクモバイル プロダクト・マーケティング本部 サービスコンプライアンス統括部 コンテンツ推進室 新規サービス企画課 課長の山田恵祐氏、コンテンツを提供する「TSUTAYA TV」からは、事業部TSUTAYA TVユニット 営業チームリーダーの須藤和之氏に狙いを聞いた。

「TSUTAYAさんは我々の持っていないものを持っている」

photo ソフトバンクモバイルの山田恵祐氏

 なぜ今、テレビをターゲットとしたスマートTVサービスであるSoftBank SmartTV、そしてTSUTAYA TVをソフトバンク向けにスタートするのだろうか。

 「iPhoneを中心としたスマートフォンは常に人の半径1メートル以内にあるデバイスとして、我々としても映像配信を提供していますが、自宅にいるときはテレビの大きな画面で見たいものもありますよね。そうしたときに、テレビの世界とスマホの世界を、ソフトバンクとして作れるのではないか、というのがそもそものきっかけです。我々はライフスタイルを提案する側として真剣に考えた末に、TSUTAYAさんとの協業が始まりました」(山田氏)

 SoftBank SmartTVのサービス開始に向けた企画が始まったのは2012年5月。ソフトバンクモバイルとTSUTAYAの間で、TSUTAYA TVの持つソリューションなど具体的な話し合いが始まったのが7月で、そこからわずか3カ月後の10月にはソフトバンクモバイルから発表され、1月以降にはサービスインを迎える。「両者の魂やパッションが一致したので、できた。やりたいと思うことが一致した」(須藤氏)というほど相思相愛でスタートした。

 今回の協業でソフトバンクモバイルはSoftBank SmartTVという販路を提供するだけでなく、後で詳しく紹介するテレビ向けのGUIとスマホが連動して動作する、新しいプラットフォームを提供する。TSUTAYAはハリウッドの新作を最も手広く扱い、いち早く配信できるというアドバンテージを持つ。ソフトバンクモバイル側から見ると「我々の持っていないものをTSUTAYAさんは持っている。ゼロからハリウッドと交渉してくるとうのは、我々ではあり得ない。そこは、一番イケてる会社さんと組ませてもらった」(山田氏)ことが背景にあるという。

 一方のTSUTAYA TVは、すでに2008年からテレビ、2012年11月よりPC向けに映像配信を手がけている実績のある上で、SoftBank SmartTVの参入を決めている。

 「ソフトバンクさんの方から、スマートTVの領域に来ていただいたことも大きいですね。我々はテレビの領域で優位性とプライドを持っていたのですが、単体でテレビにLANケーブルを指してネット接続して、リモコンの十字キーで操作する点については、もう少し何とかならないかという思いはありました。今回は、ソフトバンクさんはとはお互いにやりたいところが一致しました」(須藤氏)

photo 多数の新作を用意する

 SoftBank SmartTVには、ほかにもソフトバンクグループ各社がてがける「GyaO!」「UULA」「BBTV NEXT」といった他の映像配信サービスも利用可能だ。「我々もグループの中で映像事業を展開している会社がありますので、1つの世界の中に全部を入れて、スマホでもなく、普通のリモコンでもない新しい世界観を展開していこうと思いました」(山田氏)。「他社が入ったら競合するから嫌だといったことは、気にしていません。我々の強みは新作が1タイトル400円で見られることです」と須藤氏が話すように、SoftBank SmartTVは当初からオープンなプラットフォームとして準備が進められた。

「ほかにやっているところはない」テレビとスマホの完全連動

 SoftBank SmartTVは、月額490円でソフトバンクモバイルからスティック型の専用端末をレンタルし、テレビに接続して利用するサービス。スティック型端末はLinuxベースのOSを採用した独自のもので、薄型テレビのHDMI端子に接続するSTB型のサービスとなる。インターネット接続は、別途用意した家庭内のWi-Fiネットワークを経由する。ちなみに、スティック型の専用端末はAndroidアプリは動作するが、GooglePlayには対応していない。「アプリケーションはAndroid 2.3互換ですが、Android STBとして作りたかったわけではありません」と山田氏が話すように、ユーザーが自由にアプリを入れて利用することは想定していない。ただし、将来的なソフトウェアアップデートの機能は盛り込まれている。

photophoto USBスティック型の専用端末。メーカーはアイ・オー・データ機器

 最大の特徴は、本体にリモコンが付属せず、ソフトバンクモバイル製のスマートフォン(iPhone/iPad、Android 2.3以上の対応機種)向けに提供される、専用のリモコンアプリをWi-Fiでスティック端末と連携させることで、リモコンとして動作する仕組みにある。

 実際にSoftBank SmartTVのデモ機を操作してみていると、テレビ画面とスマホの画面が完全に連動して動作する仕組みの出来には驚かされる。テレビに接続したSoftBank SmartTVの画面とリモコンアプリにまったく同じGUIを表示し、タッチ操作でリアルタイムに同期するので、操作感覚はテレビでスマートTVというよりスマホに近い。手元のスマホを操作しながらフリック操作による画面切り替え、タップによる選択という操作は、タッチパネルの軽快な操作感と、テレビの大画面表示を見事に両立させている。また、キーワードによる作品検索など文字入力はメールなどで普段から使い慣れているスマホを使えることもあって、一般的なテレビ付属のリモコンと比較しても効率的に使える。

photophoto スマートフォンを操作すると、テレビ画面も連動して動く

 「完全にテレビとスマートフォンの1:1でペアリングして連動する状態。ほかにやっているところはありません」と山田氏は自信を見せる。ユーザーの使いやすさにこだわり抜いた、映像配信サービスとしては全く新しい操作体系を作り上げたわけだ。

 サービスプラットフォームとしては、各社の映像配信サービスを総合的に見せることにこだわった、ポータルとしてよく一体化した作りがなされている。各種メニューへのアクセスするタブが並ぶトップページから「TSUTAYA TV」「GyaO!」「UULA」「BBTV NEXT」「BBTV NEXT」といった映像配信のサービスに入ると、そこから先は運営元ごとのサーバにアクセスする形になり、例えばTSUTAYA TVのサービスを選択すると、内部的にTSUTAYA TVのアプリが呼び出され受け渡す形で動作する。実際の映像も、TSUTAYA TVで購入した作品は「TSUTAYA TV」のサーバから、最大1080iのフルHDクオリティでストリーミング配信される。

photo TSUTAYA TVの須藤和之氏

 一方で、アカウントと月額料金、決済に関する部分はプラットフォーム全体として一体化されている。ソフトバンクモバイルの電話番号をIDとして利用でき、決済はソフトバンクモバイルの携帯電話料金と同じ請求で支払いが可能だ。

 「映像配信をアプリケーションレベルでやっているところはあるし、ドングルタイプのシステムは海外にもいっぱいあります。我々はこの中にDRMや、スマートフォンとシンクする仕組みを組み込みました。あとは、お互いのやりたことを含めて、ビジネスモデルも含めたセットでないと、一個一個バラバラだと機能しません。そういう点で、SoftBank SmartTVはイケてますよね」(須藤氏)

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