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生活の中に溶け込み、ほとんど見えなくなる“スピーカー”とは本田雅一の「男の白モノ」(2/2 ページ)

» 2013年11月25日 20時48分 公開
[本田雅一,ITmedia]
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「現代の二股ソケット!」となる得る可能性と不足する部分

 製品を評価するまでは、「これこそ現代の二股ソケットではないか!」と思っていた。若い方々はご存じないかもしれないが、電球と豆電球を簡単に切り替えられる二股ソケットを開発したことが、パナソニックが企業として成長するきっかけだった。だから「まさにパナソニックだからできた製品!」と絶賛したいところだが、しかし、使い始めてみるといくつかの点で使いにくさを感じた。

 まず、同時に登録できる機器が1台であること。もちろん、同時に再生できるオーディオソースは1台だけなのは分かる。自動接続されるのは、最後の1台だけでも致し方ない。しかし、ペアリング情報そのものを1台分しか覚えていないので、一度別の製品とペアリングすると、別の機器はリモコンのBluetoothボタンを押してペアリングし直さなければ、音を出せない。もちろん、そうして別の機器をつなぐと、元の機器から再生するときにも再ペアリングだ。

 NFCが利用できる「SC-LT200」なら、付属のカード(NFCタグ)にスマホをかざすだけでいいのでは、というかもしれないが、NFC内蔵スマートフォンの普及はまだ途上だ。また、iPhoneがNFCを採用していない現状を考えると、ちょっともったいない仕様だと思う。一人で使う部屋ならまだいいが、リビングルームのBGM用になんて場合には、家族全員分のペアリングを憶えてほしいなぁ、とボクならば思う。

NFC対応の「SC-LT200」にはカードタイプのNFCタグが付属し、対応するスマートフォンとならワンタッチ接続が可能だ

 もう1つ残念だったのは、「SC-LT205」の電源が落とされてしまうと、次回、起動した時に元の接続が自動復元されなかったことだ。本体の電源を落とさなければ、Bluetoothの電波が届かない範囲にスマートフォンが出たとしても、近付くと自動でつながったが、電源が落ちてしまうとダメなのだ。

 では、本体の電源を落とさなければいいじゃないか、というのはもっともな話。実際、「SC-LT205」は常時通電されることを前提に作られていると思う。「SC-LT205」への通電スイッチ(取り付ける前の照明スイッチがSC-LT205のオン/オフスイッチとなる)はオンになっていないと音を出すことができないからだ。照明の点灯、消灯は「SC-LT205」のリモコンで行うようになる。

 これを徹底できればいいのだが、ついつい電源をオフしてしまい、自動でつながらなくなり、そして手動で接続するなんてことに。ここもNFCを使えば……だが、以下同文となるので省略したい。

 もちろん、照明のスイッチだった部分を小さなものに交換し、「SC-LT205」のリモコンを壁のすぐ脇に取り付けておく、なんてことで対応できるかもしれないが、「SC-LT205」の音量調整も同じリモコンで行うので悩みどころ。やりたいこと、意図は分かるのだけど、実際に使ってみると“あと一歩”という部分が残っている印象だ。このあたりは是非とも次回作に期待したい。

生活の中のオーディオとして充分な音質?

 さて、最後に音質について。

内部構造。L/Rを対角に2カ所ずつ配置している(左)。SC-LT205に付属するBluetoothトランスミッター。スマートフォンとの接続には不要だが、これにより手持ちのテレビやオーディオ機器の音もワイヤレスで楽しめる(右)

 パナソニックはこの製品に関して、筐体(きょうたい)を四分割した上で対角にあるエンクロージャーに同じ信号を入れる(L/R/L/Rとチャンネルが一周する)ようにしているため、振動が打ち消されて上階への迷惑になりにくいと話している。これはその通りで、石こうボードの天井でも鳴きが発生したり、振動が気になることはない。

設置イメージ

 音質に関しては、もちろん、数千円のiPod用スピーカーなどよりはバランス良く鳴ってくれるとは思うが、良い音かというと、そうは言い切れない。もちろん、シーリングライトの裏側という限られたスペースで鳴らしているので、高音質や高い音楽性などはまったく期待していない。しかし、せっかくスピーカーに2万なにがしのコストをかけてくれるのだ。”生活空間を演出する音”ではあってほしい。リアリティーや鮮度ではなく、心地よさ、自然さを感じる音。心落ち着き緊張感を与えない音。それを目指してほしいと思うのは欲張りだろうか。

 部屋の形は多用であり、「SC-LT205」の下にぶら下がる照明の形もさまざまだ。元より細かなチューニングなど求められない。しかし、限られた条件の中で心地よさを提供してくれるようになれば、言うことなしである。

 と、やや辛口になったが、そのアイデアとやる気には基本的に賛同したい。電気設備とオーディオ&ビジュアル。2つの領域を股にかけて製品を提供する企業は意外に少ない。生活全体のクオリティーを上げる……シーリングスピーカーだけでなく、さまざまな分野で、パナソニックにはそんな役割を期待したい。

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