ユーザーインタフェースの真実

» 2004年02月12日 22時53分 公開
[斎藤健二,ITmedia]

 「ハードウェアからユーザーインタフェースが切り離された時点で、PCはモノとしての魅力を失った。すべての車でエンジンと運転席が同じだったら、誰がポルシェを買うの?」

 通信ジャーナリストの神尾寿氏が、「『パソコンの時代』は終わり『デジタル家電』『ケータイ』の時代になるか」と題したセミナーで話した言葉だ。

 PCの時代は終わろうとしているのだろうか。そしてそれはなぜなのか。その答えはいくつかあるが、1つが“ユーザーインタフェース”だ。

Wintelが携帯、デジタル家電にやってきたとき……

 今年のCESで印象的だったのは、デジタル家電にPCの巨人、IntelやMicrosoftが積極的に参入の意志を見せたこと(1月11日の記事参照1月8日の記事参照)。しかし、こと日本国内においては、Wintelのデジタル家電参入は歓迎されないと神尾氏。

 それはPC的なデジタル家電によって、多様性が破壊されてしまうからだ。「PCと同じ水平分業のモデルを、家電に持ち込もうとしている」

 WintelがPC業界で果たした功罪のうち、“功”は進化の早さとコストパフォーマンスだった。“罪”はPCをつまらないものにしてしまったことだ。

 IntelのCPUを使いWindowsを搭載することで、どんなメーカーでもそこそこのPCができあがる。これによってPCの低価格化・高性能化が急速に進んだが、逆に各メーカーの個性や持ち味といった差違化の要素は薄れてしまった。

 「OSやコアテクノロジーの部分が特定の企業に集中して、それをインストールすればそこそこのものができあがってしまう。技術的なノウハウや蓄積がないところでも作れてしまう。Dellに代表されるように、ハードウェアメーカーが流通業のようになってしまう」

 神尾氏が特に警鐘を鳴らすのが、あまりに一元化されたユーザーインタフェースの部分だ。ハードウェアやターゲットユーザーに関係なく、同様であるPCのインタフェース。そしてこの部分の進化は遅々として進まない。

 「PCってどれでも一緒でしょ。一般の人の興味を引けない。製品のコンセプトやブランドを作る上でも、競争を阻害するだろう。(もしデジタル家電がPCのようになって)インタフェースの自由度が失われれば、デジタル家電に対するユーザーの興味も失われる。5年後にはデジタル家電の特集なんて組めなくなってくる」

ユーザー視点では、差異性の源はインタフェース

 もちろん、企業利用においてはWindowsのように共通化されたユーザーインタフェースは、TCO(用語)削減に効果があるため必要だ。しかし、コンシューマー向け製品では、ユーザーインタフェースが差異性の重要なポイントになっている。

 「機能はそれほど重要ではない。重要なのはデザインとインタフェースであって、少なくとも性能ではない。携帯で言ったら、カメラが付いている付いていないが機能で、メニューがインタフェース。どんなユーザーに使ってもらいたいのか、コンセプトに基づいて作られているかがポイントになる」

 昨今、携帯電話でも“デザイン”の重要性が叫ばれるが、神尾氏は外装だけでなくメニュー周りまで含めて、デザインと呼ぶべきだとする。

 ハードウェアからインタフェースまでトータルで改良しなくてはならないのに、PCのインタフェースの改良はのんびりだ。「なぜか。1社(Microsoft)にまかせてしまったから。競争していたら違っていたはず。携帯やカーナビはここ数年で大きく進化している」

 デジタル家電でもそれは同じだ。外装に凝るだけでなく、そのデザインコンセプトに合ったインタフェースを実装する必要がある。ユーザーに初期設定を強いることなく、簡単に利用できるインタフェース。それこそ、垂直統合型のメリットであって、PCには真似ができない部分だ。

 携帯に慣れた最近のユーザーは、買ったあとでさまざまな設定が必要なPCに納得していない。「PCはネットにつながるのが当たり前。なのにどうしてADSLを別途申し込みして開通を待たなくてはならないのか」

 もっとも、そうはいっても家電がPC化していくのは避けられない流れなのかもしれない。神尾氏は「垂直統合モデルで差異性と多様性を失わせないようにするという理想は正しいが、現実的なビジネスとしては厳しいだろう」としている。

作るインターネットと使うインターネット

 講演の中では、コンテンツ業界の“あまりに自由なPCへの反発”なども、PCからデジタル家電や携帯電話へと時代が移りつつある理由の1つとして挙げられた。

 ともあれ、“万能の道具”としてのPCが、各種家電の進歩に従って限定された道具になっていこうとしているのは間違いない。

 ムーアの法則に基づいて進化してきたPCだが、今やユーザーはこれ以上の性能の進化を渇望してはいない。ユーザーインタフェースに代表されるように、使い勝手の面で、水平分業の弊害が目立ってきた。既に、コミュニケーションツールとしてもコンテンツビジネスの面でも主役は携帯だ。

 「サイトを作る人はPCを使うでしょう。しかしそれを見る、消費するユーザーは携帯に移っていく。作るインターネットと使うインターネットに分かれていく」

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年04月30日 更新
  1. 「iPhone 17e」と「iPhone 17」どちらが買いか? 2機種を使い込んで分かった“スペック表にない違い” (2026年04月29日)
  2. 「PayPayカード ゴールド」の特典変更は改悪? 損益分岐点を計算、年間100万〜220万円利用ならお得に (2026年04月28日)
  3. 相互交換が始まった「PayPayポイント」と「Vポイント」のお得な活用法 6月の“ルール変更”にも要注意 (2026年04月28日)
  4. ソフトバンクが「今回もやる」とGalaxy S26を月額1円で販売――販売方法を早急に見直さないと撤退を迫られるメーカーも (2026年03月08日)
  5. ダイソーで550円の「スマートフォン ワンハンドシャッター」はカメラ撮影に役立つ? 「ボタンを押すだけ」がポイント (2026年04月29日)
  6. 携帯電話のホッピング問題、「6カ月以内の継続利用を認める」方向で決着か 2026年夏に結論 (2026年04月23日)
  7. 血圧を測定できるスマートウォッチ「HUAWEI WATCH D2 ウェアラブル血圧計」 17%オフで約5万円に (2026年04月27日)
  8. 「Fitbit Inspire 3」が10%オフ 最適な睡眠をサポートするスマートアラーム搭載 (2026年04月29日)
  9. 修理費で13万円超えも 折りたたみスマホに「端末保険」が事実上必須といえる理由 (2026年04月27日)
  10. 「iPhone 17e」と「iPhone 17」は何が違う? 3万円の価格差をスペックから検証する (2026年03月10日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2026年