自己弁護するNokiaのCEO、転換期を迎える欧州端末メーカー3GSM World Congress 2004

» 2004年02月27日 11時48分 公開
[末岡洋子,ITmedia]

 25日、基調講演に登場した端末メーカー最大手のフィンランドNokiaの会長兼CEO、ヨルマ・オリラ氏は、「今年中旬の3G端末発表はタイミングとして適切」と述べ、前日の英Vodafone CEOのアルン・サリーン氏の発言に反論した。

3G導入で“WAPの失敗”を避けられるか?

 サリーン氏は「3G端末をずっと待っている」とNokiaら端末メーカーの対応の遅れを非難したほか(2月25日の記事参照)、端末全般について「分厚く、すぐ熱くなるし、バッテリ持続時間が短い」と攻撃していた。

 オリラ氏はこれに対し、「にわとりが先か、卵が先かの問題」と弁護。「信頼できるネットワークがないとテストができず、そのために(GSMやGPRS端末よりも)長いリードタイムとなった」と続けた。

 「Vodafoneのサリーン氏は、サイズ、性能、特徴の点でコンシューマのニーズを満たすデバイスが必要という点で正しい。3G端末が本当に顧客に魅力的なものになるには、もう少し時間がかかる」(オリラ氏)。ちなみに、両者は初日のNokiaの発表会で、3Gを共に成功させようと仲良く握手をしている(2月24日の記事参照)。

 携帯電話の機能が音声通話からデータ通信を含むようになり、モバイル市場のビジネスモデルは変わりつつある。3Gでは高速なデータ通信が実現することから、音声からデータへのシフトが加速するといわれているが、端末、オペレーター、コンテンツプロバイダ(メディア)側がビジネスモデル確立を巡って模索状態にある(2月10日の記事参照)。特に、日本と違って端末メーカーとオペレーターの連携が弱い欧州では、各プレイヤーがばらばらに動いたために失敗した、WAPという前例がある。

 今度こそ「WAPの失敗はなんとしてでも避けなければならない」(GSM Association CEO兼役員のロブ・コンウェイ氏)という声があちこちで聞かれる。だが、具体的な回避策はあるのだろうか?

 Nokiaのオリラ氏はこの日、同社のフォーカスエリアとして、マルチメディア、エンタープライズ、音声の3つを挙げた。例えば、マルチメディアでは、サービスを容易に探し、有効化し、使うためのインテリジェンスやメモリ容量などの要素をうまく集めることが課題という。3つ目の音声はいまだに携帯電話最大のアプリケーションであり、依然としてオペレーターの収益の9割を占めている。オリラ氏は、データが3割に達するのは2007年と予測する。

 「今年はモバイル業界リニューアルの年だ。ユーザーエクスペリエンス、エンタープライズのモビリティ導入、音声、すべての面でリニューアルする。伝統的な見解を捨てなければならない」(オリラ氏)

 調査会社英ARC Groupのシニアコンサルタント、キャレン・ウェルシュ氏は、端末メーカーはこれまでとは違う状況にあると語る。

 端末の価値を左右する要因が変わっている。これまで、関係者が1つの線で結ばれていた“バリューチェーン”から、今後のトレンドとして、オペレータ、コンテンツプロバイダ、アプリケーション開発者、販売店とさまざまな要因がそれぞれと関わりあう“バリューWeb”を指摘する。日本のように、端末がオペレーターのブランディングとなることを好まない欧州メーカーだが、業界全体が手本としているiモードやFOMAの成功の陰に、端末メーカーとオペレーター、コンテンツプロバイダの協調、協業関係があることは事実だ(2001年11月の記事参照)。

未だ見えない協業のやりかた

 26日の基調講演では、英大手小売店のCarphone WarehouseのCEOが端末メーカー、オペレーター、コンテンツプロバイダの各関係者を非難した。Nokiaは英国の3Gオペレーター、3用に「Nokia 7600」を発売したばかりだが、「Nokiaの3G端末が供給不足。ニーズを満たせない」といい、3G離陸には端末が不可欠との見解を示した。また、「Vodafone live!」などオペレーターのブランディングについては「料金が高い。独占的なコンテンツが少ない」と言い、「価格というものが分かっていない。関係者は全員欲張りすぎだ」と非難している。

 「3Gの年」「データ通信」とはいうものの、関係者がどこで協業し収益を分け合うか、モデルはまだ見えていない。

 ウェルシュ氏は携帯端末の今後の課題として、「マルチ機能、マルチサービス、マルチアプリケーションと複雑になっている。また、他の機器との相互運用性も求められる。端末メーカーの課題は、これらの機能を分かりやすく端末に盛り込むこと」と分析し、フレンドリーなOS、バッテリ持続時間、解像度、処理能力が取り組み事項と述べる。

 2003年、世界で出荷された携帯電話の台数は約5億3000万台。現在トップはNokia、2位以下Motorola、韓国のSamsung、Siemens、英Sony Ericssonと続いているが、トップ5が占める割合が高くなり「ブランド化が進んでいる」と言う。

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