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» 2004年04月06日 15時35分 UPDATE

なぜ、名古屋の地下鉄で携帯は禁止になったか (1/2)

名古屋市の地下鉄で、改札付近ではPDCの携帯がつながるが、ホームでは使えなくなりつつある。心臓ペースメーカーへの配慮が原因というが……。「携帯とペースメーカー」議論を、いま一度考えてみよう。

[杉浦正武,ITmedia]

 名古屋市の地下鉄で、ちょっとした異変が起きている。それまで各駅のホームで携帯の電波がつながっていたものが、次々とつながらなくなっているのだ。

 もっとも、これは携帯キャリアがとった措置によるもの。東海地区の携帯キャリア4社で構成する「社団法人道路トンネル情報通信基盤整備協会」(トンネル協会)の東海事務局は、地下鉄内に設置しているアンテナの出力調整などを行ない、「ホームでPDC方式の携帯をつながらなくさせる」工事を進めている。9月末にも、69駅で工事が完了、電波が入らなくなる予定だ。

 背景には、名古屋市交通局が“埋め込み型ペースメーカー”などの悪影響に配慮し、キャリアに工事の要請をおこなったことがある。心臓ペースメーカーと、携帯。これまでたびたびメディアをにぎわせてきた問題を、本件の詳細を確認しながら再び考えよう。

そもそも「使えないはずなのに使えていた」

 なぜ、今回のような工事を行う必要があったのか。トンネル協会東海事務局長の吉原正史氏は、実は“地下鉄のホームで携帯電話がつながる状態”が、当初の想定から外れたものだったと振り返る。

 トンネル協会とは、携帯のアンテナ敷設にあたり当局と交渉を行うべく、携帯4キャリアが窓口を統一化するため設立した団体。東海事務局長の吉原氏は、NTTドコモ東海のネットワーク企画部長も兼任している。同氏は、地下鉄内に各キャリア共用のアンテナを設置すべく、名古屋市交通局と折衝を続けてきたと話す。

 「1994〜1995年にかけて、交通局にいろいろとお願いをして、800MHzと1.5GHzのPDC方式携帯電話のアンテナを、改札階に設置してよいことになった。ただ、これはあくまで改札階で携帯を使ってよいというもので、ホームでの利用を認めたわけではなかった」

 心臓ペースメーカーを利用するユーザーの立場にたって考えると、改札付近のように携帯利用者から距離をとることが比較的容易な場所では、電波が届く状況も許容できる。一方、混雑した電車内のように「逃げ場のない状況」で携帯を利用されることは、深刻な脅威というしかない。

 しかし、いざ設置してみると各駅ともホームまで電波が届き、当然ながら多くのユーザーがホームで携帯を使うことになった。

 このため、交通局側は当初から「ホームには電波が届かないようにしてほしい」という要請を行っていた。しかし、電波を届かなくするには、設置場所を変えるにせよ、何らかの対策を講じるにせよ、工事に手間がかかるという問題がある。いったん69駅に設置してしまったものを、そう簡単には変えられないということで、当初は「携帯ユーザーのマナーで解決できないか、というアプローチを取っていた」(吉原氏)。

 そんな中、2003年から名古屋市交通局は、各駅でバリアフリー化工事を実施する。併せて、駅の改修工事や、新線の敷設工事などもあり、また「韓国で地下鉄火災事件が発生したことから、防災設備の見直しも行われることになった」(吉原氏)。それなら、懸案事項であった“ホームにPDC方式の電波が届かなくしよう”ということで、冒頭の工事も2003年秋から始まっている。

 どの駅から始めるかといった順番は決まっていないが、5月までには約20駅のホームが“圏外”になる見込み。「たとえば金山駅では、改修工事に伴いアンテナ設備自体をとっぱらっており、電波がつながらないはず」(吉原氏)。交通局からは9月までに残る49駅についても工事を行うよう、要請されている状況だ。

Photo 名古屋市にある「栄」駅にて、3月24日撮影。同駅ホームではまだ、電波がつながっている
Photo 同日、「金山」駅にて撮影。吉原氏の話したとおり、電波はつながらない

2GHzのW-CDMAはOK

 ただし、ここで1つ断っておく必要がある。上記の措置は、PDC方式の携帯電話に対するもの。実は、2GHz帯を利用するW-CDMA方式の携帯電話は、従来どおり地下鉄ホームでも利用が認められているのだ。

 なぜ、そうなるのか。カギは、2002年に総務省が発表した「電波の医用機器等への影響に関する調査研究報告書」(2002年7月の記事参照)にある。

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