同報告書は、今回問題視されている「携帯電話が、心臓ペースメーカーにどの程度悪影響をおよぼすか」を実験したもの。800MHz/1.5GHzのPDC、W-CDMA携帯電話が、“どれほどの距離でペースメーカーに干渉するか”を割り出している(具体的な数値は、総務省の報道発表参照)。
それによると、800MHz帯PDCの最大干渉距離は、実機を利用した場合で11.5センチ。1.5GHzPDCでは、実機で4センチという結果だった。安全マージンなども考慮すると、総務省が従来から通告している「(携帯電話は)植込み型心臓ペースメーカから22センチ以上離すこと」という指針が、適切と確認された。
同じ報告書で、W-CDMAはどうだったか。「最大干渉距離は、(中略)実機で1センチであった」(報告書より抜粋)。つまり、ペースメーカーを装着するユーザーの肉厚程度の距離があれば、干渉はうけないことになる。これなら、混雑した電車で利用しても(マナーの問題はさておき)安全面の問題はない。
このため、「2GHzのW-CDMAは改札、ホームともにOKとなり、工事もかなり進んでいる」(吉原氏)とのことだった。
今回の名古屋市交通局の要請をめぐっては、意見が分かれるところだろう。地下鉄ホームでPDC方式の携帯利用を禁止することは、ユーザーの利便性を損なうことは間違いがない。
とはいえ、「密着した車内で、万一のことがあったらどうするのか」という名古屋市交通局の主張も、もっともだ。トンネル協会の吉原氏も、「『地下鉄では携帯を禁止するのが当たり前。ペースメーカー利用者にとっては、不安でしかたがない』という意見も、しばしばいただく」と話す。
この議論の難しさは、各地域の道路交通局でも判断が分かれているところにも現れている。現時点で東京、大阪の道路交通局は、すぐにもPDC方式の携帯利用をホームで禁止させようとする措置はとっていない。ただ、関東の17事業者は共通の利用ルールを作成し、「優先席付近では携帯電話の電源を切る」よう、利用マナーに協力するよう呼びかけている(2003年8月の記事参照)。
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