時速430キロのリニアモーターカーから携帯?

» 2004年05月06日 01時40分 公開
[山根康宏,ITmedia]

 日本では現在、山梨県の実験線にてリニアモーターカーの走行テストが行われている。最高速度時速500キロの世界を体験するには、定期的に行われている試乗会に予約して参加する必要があり、気軽にちょっと乗車……というわけにはいかない。また試乗できたとしてもそこは電車の車内と同じ。マナーを考えると「今、リニアモーターカーに乗っていてね」などと気軽に携帯電話で通話、というわけにもいかない。

商用営業中の上海リニアモーターカー

 一方、お隣中国の上海では、飛行場から市内への足としてリニアモーターカーが建設され、2002年12月31日に現在の路線である浦東新区の龍陽路駅(地下鉄2号線)と浦東国際空港駅間の30キロが開通した。世界初の商用営業中の高速リニアモーターカーだが、現時点ではまだ運転間隔の変更や突然の運休日もあるそうだ。

 最高速度は時速430キロで同区間を7分20秒で快走する。日本でリニアに乗れないのなら上海で乗ってしまえ、ということで携帯電話片手にさっそく試乗してみた。

 上海のリニアモーターカーの正式名称は「上海磁浮列車/Shanghai Maglev Train」。座席は普通席(Economy)と貴賓席(VIP)があり、貴賓席運賃は普通席の2倍。普通席運賃は片道50元(約650円)、当日の航空券所有者は40元、当日往復は80元。この値段でリニアモーターカーに乗れるのだから格安と思えるが、同空港から市内中心部までバスに乗れば運賃は4分の1。現地の物価感覚でいえばかなり高い乗り物ということになる。しかも乗車時間は7分ちょっと。1分=約100円という計算だ。

上海リニアモーターカー案内

 地下鉄の龍陽路駅を降りれば、すぐ真横にリニアモーターカーの駅がある。屋外のエスカレーターを上がり2階の窓口で切符を購入。普通席と貴賓席どちらにするか悩んだが、「たった7分だから」という貧乏根性で普通席を選択してしまった。

 改札の前にまずは飛行場と同じようなX線検査機に手荷物を通すのがちょっと物々しい。高速で走行するリニアモーターカーだけに、爆発物など危険品の持込を厳しくチェックしているのだろう。荷物検査後、自動改札を通りエスカレーターで3階のプラットホームに上がれば、6両編成のリニアモーターカーが出迎えてくれる。

荷物はX線検査を通す(左)。6両編成の上海リニア。2両は貴賓車(右)

 普通車の車内は3席×2列のシートが真ん中を境に反対側を向いている集団離反式で、車両の一番端の席は向かい合ったボックスシートとなっている。平日昼間というせいか、あるいは高い運賃のためなのか、車内はガラガラで乗車率は10%程度。しかしこれなら車内で自由に動き回ったり写真を撮ったりできそうだ。初めて乗車した乗客が多いのか、乗客はみなしきりに記念撮影をしていた。

 もちろん車内で携帯電話は自由に使える。さて、そうやってあれこれ車内探索をしているうちに発車時間となり、リニアモーターカーはゆっくりと出発。さっそくここで携帯電話(NOKIA 6650)を取り出し、通話テストの開始だ。

普通車の車内

 始めのうちはやや揺れや振動があり、ぐんぐんとスピードを上げていく感じ。時速100キロ、150キロ、200キロとみるみるうちに加速されていく。携帯電話の通話は相手によると「いつもどおりの音質」。しかしまだまだ新幹線以下のスピードだ。

 250キロ、300キロと速度が上がにつれ徐々に通話音質が悪くなってきた。そして370キロあたりでいきなり電話が切れてしまった。これが限界なのか? あわててリダイヤルしてみると若干ノイズが入りながらも相手の呼び出し音が鳴り、再びつなぐことができた。

時速431キロでも音声通話ができた

 車内に表示されている速度は時速431キロ。公定より1キロぶん速いが、これが最高速度だ。通話していると相手の声にはノイズがかなり乗っている。相手側も「かなり聞き取りにくいけど、なんとか会話はできるね」とのこと。

 ここで別の携帯電話(NOKIA 7650)を取り出し、パケット通信もテストしてみた。内蔵カメラで撮影した画像をGPRSを用いMMS(GSM版写メール)で送信。送信エラーもなく、無事送信することができた。相手との通話も、品質が悪いまま切れずに継続できている。そうこうしているうちに、速度が落ち始めた。上海リニアの走行距離は30キロ。最高速度を保てるのはせいぜい1〜2分程度なのだった。

最高速度431キロ!(左)
アンテナは立ったまま。写真撮影しているうちに速度は419キロに下がってしまった

 ここでいったん電話を切り、残りの数分は車窓からの景色を楽しんだ。上海リニアの営業エリアはまわりに建物もあまり見えず、体感速度は新幹線などと変わりがないようも感じる。しかし浦東空港駅の手前で大きなカーブがあり、そこではっきりと「G」を感じることができるのはリニアモーターカーならであろう。やがて空港の大きな建物が現れ、予定通り7分20秒で浦東国際空港へ到着。あっというまの乗車であったが、初めてのリニア乗車はかなり興奮できる。

 上海へ行かれたら、旅行の記念にリニアモーターカーに乗車してみるのもいいかもしれない。

7分20秒で浦東国際空港駅に到着

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2024年