通信オペレータごとに見る、サービスの現状と今後欧州携帯市場の勢力図(3)(1/2 ページ)

» 2004年05月24日 16時46分 公開
[末岡洋子,ITmedia]

 これまで端末メーカーの影響が大きかった欧州市場だが、データ通信サービスへの移行期にさしかかった今、オペレータの動向も見逃せない。

 大手オペレータは、どのようなバックグラウンドの元、どんなモバイルサービスを展開しているのか。3Gサービスのロードマップはどうなっているのか──。「Vodafone」「T-Mobile」「Orange」「mmO2」「KPN」の5社について見ていく。

  • 各社3Gロードマップ
通信オペレータ 3Gサービス
Vodafone 6カ国でビジネス向けデータ通信サービスを提供中。コンシューマー向けに独とポルトガルでVodafone live! with 3Gを提供
T-Mobile 英・独・オーストリアでビジネス向けデータ通信サービスを提供中。コンシューマー向けに独でサービスを提供
Orange 英・仏でトライアルを実施
mmO2 独でデータ通信サービスを提供
KPN 独E-Plusが6月にデータ通信カードサービスを提供

英Vodafone

 英Vodafoneは、欧州のみならず世界でも最大手といえるオペレータだ。世界26カ国で携帯電話事業を展開、加入者数は2003年末時点で1億3000万人を数える。欧州でも主要各国に進出しており、各国パートナー企業への出資比率を増やしてVodafoneブランドに塗り替えたり、提携を通したブランディングを行うなどの戦略をとっている。

 2002年秋には、iモードを意識したポータルサービス「Vodafone live!」を開始。ユーザー数が開始後1年間で300万人に達するなど好調だ。またスポンサー活動(サッカーやF1など)やマーケティングに力を入れていることでも有名だ(2002年8月の記事参照)。

 2003年、同社の現在の礎を築き、英ビジネス界でやり手との評価の高かったサー・クリストファー・ジェント氏が引退。新CEOアルン・サリーン氏の手腕に注目が集まっているが、これまでのところ強気の戦略は変わっていない。その一つが海外展開だ(2月25日の記事参照)。

 海外進出では、2004年初旬の米AT&T Wireless買収提案が記憶に新しい(2月18日の記事参照)。買収には失敗したものの、「米国市場を諦めたわけではない」とCEOのアルン・サリーン氏は述べている。同社の現在のターゲットといわれているのは仏市場で、仏2番手SFRへの出資比率を43.9%まで高めている。しかし最大出資会社の仏Group Cegetel(メディア企業仏Vivendi Universalの子会社)が強い抵抗を示している状況だ。ただSFRが2003年、「Vodafone live!」を開始したことや、Vivendiの経営体制が危ぶまれてきたことから、最終的にVodafoneの手中に落ちる可能性は十分にあるというのが大筋の見方だ。

 3Gも、これまでのところ攻めの姿勢で挑んでいる。まずは2004年2月に本拠地英国をはじめとした6カ国で、データ通信カードを使った「Vodafone Mobile Connect 3G/GPRS Datacard」を提供開始した。

 当初コンシューマ向け3Gサービスは「秋から年末にかけて」(同社広報)としていたが、5月には計画を前倒ししてコンシューマー向けサービス「Vodafone live! with 3G」を発表した。まず最初に独とポルトガル市場でSamsungの「Samsung Z105」を対応端末としてサービスを開始。第二弾端末としては「Sony Ericsson Z1010」(3月20日の記事参照)が登場予定だという。

 「Vodafone live! with 3G」対応端末の「Samsung Z105」
 コンシューマー向け3G端末として登場予定の「Sony Ericsson Z1010」

 Vodafoneが欧州通信オペレータの2番手、T-Mobileの本拠地である独市場でコンシューマー向け3Gサービスを発表したことから、T-Mobileも、予定より早く3Gサービスを発表することになった。人気商品の「Vodafone live!」の3Gバージョン「Vodafone live! with 3G」では、テレビ電話や動画ダウンロードなどの新機能が加わっており、今後段階的に強化していくという。

T-Mobile

 Deutche Telecomのモバイル部門。欧州では独のほか、英・オランダ・オーストリア・チェコなどに進出しており、Vodafoneに次ぐ加入者数を誇る。英国ではここ数四半期間、加入者数でVodafoneを上回っており、最新の四半期ではOrangeも押さえて首位に。オランダでも加入者数を伸ばしている。また、CDMAが主流の米国でもGSMオペレータとして健闘しており、累計加入者数で第5位となるなど存在感を強めているようだ。

 当初は英市場の“One 2 One”など世界各国で異なる名称で展開してきたが、2003年2月に全ブランドを「T-Mobile」に統一。2003年6月にポータルサービス「T-Zones」を展開し、2004年には音楽ダウンロードの強化を図っている。T-Mobileは、Vodafone live!やiモードなど他オペレータのデータ通信サービスに対するT-Zonesの優位点として、端末による縛りがない点を強調している。

 3Gサービスは、データ通信カード「Multimedia Net Card」と3Gサービスのパッケージプラン「T-Mobile Communication Centre」を4月末に発表、英・独・オーストリアの3市場で展開している。コンシューマ向けサービスは、5月から独市場で開始。対応端末は「Nokia 7600」(2003年10月の記事参照)だ。

 コンシューマー向け3Gサービスは、ユニークな形のNokiaの3G端末「Nokia 7600」(2003年10月の記事参照)を採用

 同社にとって大きな実験であり、他のオペレータとの最大の差別化ポイントになっているのはWiFi(無線LAN)だ。今年末までにWiFiホットスポットを1万カ所設置する予定だという。同社CEOのレネ・オバーマン氏は、イベント「3GSM 2004」で、「ワイヤレスLANと3Gは補完関係にある。3Gだけを提供するオペレータは失敗し、大きなチャンスを逃すことになる」と言い切っている。

 同社が発表した「T-Mobile Multimedia(TM3)」は、ユーザーがWiFi、3G、GPRS(2.5G)を状況に応じて自由に切り替えながら無線通信を利用するという、WiFiを全面的に受け入れたもの。このWiFi積極戦略は、これまでのところ、(特に米国で)新規加入者増に結びついていると評価されている。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2025年12月17日 更新
  1. 資さんうどんが「PayPay」の取り扱いを停止 他のキャッシュレス決済は引き続き利用可能 (2025年12月16日)
  2. ドコモ、“スマホ新法”の詳細は「公取委に問い合わせて」 施行前に自社サイトで案内 (2025年12月15日)
  3. 500ポイントもらえる「東京アプリ」のテストに参加する方法は? 1.1万円相当のポイント付与に向けた最終検証がスタート (2025年12月15日)
  4. ベルキン、Apple Watch用急速充電プラグとUSBケーブルを内蔵したモバイルバッテリー発売 (2025年12月15日)
  5. 6.83型の大画面と6500mAhのバッテリー搭載「Xiaomi POCO F7」がタイムセールで4万5980円に (2025年12月16日)
  6. 3280円のドコモ純正スマホポーチ 日用品も収納でき、多機能フックも搭載 (2025年12月16日)
  7. しなの鉄道が2026年3月14日から「Suica」に対応 「モバイルSuica定期券」も購入可能だが“トレードオフ”も (2025年12月15日)
  8. “NHK受信料”の督促に温度差 警察には「丁寧な周知」も、国民には「法的措置」 (2025年12月14日)
  9. 公共の場所でスマートウォッチに話しかけられますか? 「Pixel Watch 4」のGeminiで感じた“利便性”と“羞恥心” (2025年12月15日)
  10. 「ゆうちょPay」2026年末に終了 “特色”を十分に発揮できず、開始から約7年で幕引き (2025年12月15日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー