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» 2004年06月04日 00時00分 UPDATE

雲行きがあやしくなってきた?:鷹山「ボイススポットフォン」の現状

「2004年4月1日東京の電話が変わります」……。こんなキャッチコピーでサービスを開始したボイススポットフォン(以下VSフォン)だが、利用者からの評判をとんと耳にしない。調べてみるとそれもそのはず、同サービスの申込者に対して端末の配布がまだ完了していないのである。

[江戸川,ITmedia]

 VSフォンは、鷹山が提供するPHSサービス「アステル東京」のインフラを活用した、屋内向けワイヤレス電話のこと。一般のPHS端末とは違い、据え付け型として設計された電話機には、受話器と本体をつなぐカールコードがあり、本体右奥からは一本のアンテナが突き出している。見た目はコードレス電話機の“親機”というところだ。

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 VSフォンは電話機内部にはPHSと同様の回線番号を持ち、3時間ほどの連続通話に耐えるバッテリーを内蔵する。充電用としてACアダプタの接続は必須ながら、PHSのように持ち歩いて使うこともできないではない。だが、すべての基地局には対応していないようで、PHSとVSフォンのサービスエリアを比べると後者のほうが狭くなっている。

 VSフォンに使われる電話番号は、PHSのそれとまったく同じ。アステル東京のPHS契約から、機種変更としてVSフォンに移行することも可能である。電波の弱さを解消するためのパワーアンテナにも対応するなど、製品そのものは一種のPHS端末といってもいいだろう。

 VSフォンが既存のPHSと大きく違う点は2つある。1つは準定額制ともいえる料金体系。100回までの通話が月額料金に含まれているので、使い方によるコストメリットが大きいということ。そしてもう1つが端末の購入方法だ。VSフォンは一般の店頭売りがされておらず、鷹山のお客様センターに電話をかけて、申込書を送付してもらう必要があるのだ。

申し込みから購入まで

 筆者もVSフォンを試してみようとYOZANお客様センターに電話をかけてみた。端末代金が代引きになること、料金の請求はクレジットカードか口座引き落としになり、コンビニなどの請求書払いには対応していないことなど、いくつかの注意点を確認し、住所によるエリア確認を済ませた後に申込書を発送してもらった。

 申込書が届いたのは電話の翌々日。都内の郵便事情を考えれば標準的な速さだ。申込書や約款が“コピー用紙”だったのには少々驚いたが、事務手続き上で何も問題はない。パワーアンテナの無料レンタル申込書と、契約申込書、口座振替依頼ハガキ、それに運転免許書のコピーを添えて、同封の封筒に入れて返送した。

 同封されてきた案内によると、「弊社にてこれらの書面を確認の後、ボイススポットフォン電話機をご指定の住所に代金引換の宅配便にてお送りさせていただきます」となっている。休日に届いてしまっては大変だと、翌日から1万290円を用意して到着を待っていた。

 だが、書類の返送から一週間近く経っても、商品の届く様子はない。不審に思ってお客様センターに電話したところ、とんでもない事実を突きつけられたのである。

在庫はあっても、遅い納期

 商品未着の問い合わせに対し、「4月初旬に申し込まれたお客様には5月末より、5月以降に申し込まれたお客様には6月中旬以降、順番にお届けする予定です」との返事である。筆者は確かに5月後半の申し込みだから、今手元に来ていなくても不思議はない。だが、これまでにそんな説明は一度も受けていないのである。

 手元に届いている案内や資料、さらには同社のホームページまで探してみたが、納期に関する情報はない。その点をセンターに詰め寄ると「どこにも掲載はございません」という。唯一の例外として、アステル東京ユーザーへの機種変更のお勧めには、“端末は5月中を予定”と書いてあるらしい。

 店頭販売でも通信販売でも、在庫が確認できたら即出荷する。これはもう我々一般消費者の常識である。では在庫がないのかと再び問えば「在庫はあります」という。では、どうして受付から出荷までにそれほどの時間がかかっているのだろう。「屋内での利用になるため、電波が届くかどうかの再確認を時間をかけてやっています」と言うが、調査員が個別に出向いているわけではない。単にコンピュータ上の地図でエリアの確認をしているだけだ。

 これほど待たせるからには、相当の申し込みがあるのだろうか。であれば、納期に関する問い合わせも相当数に上ると思われるが、電話で対応した担当者はこれまでに同種の問い合わせは受けていないという。

顧客不在のVSフォン

 では、百歩譲って“納期が遅い”のは仕方がない。では、自分の順番はどの辺りなのか。端末はいつ届くのか、出荷の連絡はもらえるのかと聞けば、前述の返答が繰り返されるばかりである。個々の問い合わせはおろか、出荷全体の状況について、ホームページ上での説明も予定していないらしい。

 これとて、通常の通信販売であれば、受注した時点で確認のメールが届き、出荷する際には運送会社の問い合わせ番号付きで連絡が届く。VSフォンも宅配便で出荷するようだから、こうした運用ができない理由はないだろう。だが人手がかかることを嫌ってなのか、検討する素振りすら見せないのが残念である。

 VSフォンという新発明によって、固定客をつかみ、そして囲い込もうとしているはずの鷹山。これまでにも、PHSと無線LAN、そしてポケットベルの一体型サービスなど、技術的に面白いアイディアを同社が手がけてきたのは事実である。だが、ビジネスとして成功した実績はない。

 VSフォンの成功は、利用者からの体験報告の多さにこそあると思うのだが、残念ながら筆者自身もまだその報告をできずにいるのであった。

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