既報のとおり、NTTドコモからFeliCa携帯「iC」シリーズが発表された。「iモード登場以来の大きな進化」(NTTドコモiモード企画部長の夏野剛氏)の言葉どおり、携帯電話市場にとって大きなインパクトになるのは必至。今後、auやボーダフォンもこの分野に参入してくる公算は大きい。
そのような中で、重要なプレーヤーになるのが、FeliCaのライセンスとホスティング事業を行うフェリカネットワークスだ。同社はドコモとソニーの合弁会社として誕生し(2003年10月27日の記事参照)、カードから携帯電話まで広くFeliCaの普及を目指している。FeliCaは今後、どこまで拡がるのか、同社の河内聡一社長に聞いた。
フェリカネットワークスの親会社であるドコモは、FeliCa携帯を新たなサービスの柱にすることを明言している。まずはiCシリーズでスタートし、早ければ年末の登場が予想される901iシリーズには「標準的な機能として搭載する」(NTTドコモ 夏野部長)方針だ。となると、今後、気になるのはauやボーダフォンの動きだ。両社ともFeliCa携帯の実現を示唆する発表や試作機展示を行っているが、親会社にドコモを持つフェリカネットワークスが、“ドコモ以外”と協力体制を築けるのだろうか。
「FeliCaの普及は『オープン』なスタンスを重視し、この部分に腐心しています。まずはドコモからFeliCa携帯が出ましたが、我々はauとボーダフォンにも参入してほしい。ドコモ以外だからライセンス条件が不利になったり、一部のサービスや機能が使えないといったことはありません」(河内氏)
フェリカネットワークスの資本には、FeliCaの生みの親であるソニーのほかに、NTTドコモとJR東日本が入っているが(5月20日の記事参照)、これはFeliCaの早期普及のために各分野のトップ企業と資本関係を持っただけであり、排他的な意味ではないという。
「プラットホームとしては、とにかくオープン性が第一です。そのために(フェリカネットワークスの)コーポレートカラーも、どこか一社の色が出ないように配慮しているくらいですよ(笑)」
しかし、リアル連携を前提とするFeliCaでは、「ドコモ以外」のFeliCa携帯が登場した時、それまで築かれたインフラ上での互換性が完全に取れるのかという疑問がある。またauは、アプリ技術として独自のBREWを採用している。これらの点は問題にならないのだろうか。
「重要なのはFeliCaインタフェースで、この部分はオープンな仕様として共通化されています。サービス事業者が対応するアプリを用意すれば、どのキャリアのFeliCa携帯でも同じようにサービスが利用できます。BREWに関してもFeliCaインタフェースと連携する点では問題ありません。サービス事業者がBREW版の(FeliCa)アプリを用意するかがポイントになります」(河内社長)
例えば、JR東日本の「モバイルSuica」はドコモだけでなく、auもFeliCa携帯の用途として挙げているが(6月16日の記事参照)、これは「Javaベースのiアプリと、BREWベースのEZアプリとして、モバイルSuicaアプリが用意される」と解釈できる。ドコモ以外でFeliCa携帯がどこまで拡がるかは、それぞれのキャリアの方針と、サービス事業者がアプリを用意するかにかかってくる。
FeliCaの普及で、キャリアと端末以外に重要なのが、FeliCaを使ったインフラやサービスを提供する企業だ。FeliCaは携帯電話のコンテンツ/サービスビジネスにどのような影響を及ぼすのか。
「FeliCaを使ったビジネスは今までのコンテンツビジネスとは若干異なり、おのずとプレーヤーも変わってくると思います。具体的には、JR東日本のように(既にFeliCa利用の)サービスや実績がある事業者から参入してくるでしょう」
JR東日本以外では、航空会社やガソリンスタンド、コインパーキングといったロードサイドビジネス会社も、FeliCaのサービス事業者として有望だ。
「仙台では、あるスーパーマーケットがポイント機能付きのFeliCaカードを発行して集客効果をあげました。こういったリアルな店舗を持った事業者もFeliCa携帯向けサービスを用意するメリットがあります」
1999年のiモード誕生以降、携帯向けコンテンツビジネスはひとつの市場を作った。リアル連携を実現するFeliCa携帯はその裾野を拡げるだけでなく、これまで携帯電話との関わりが薄かった業種・業態まで携帯電話ビジネスに参入させる力がありそうだ。
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