モバイル受信――その鍵を握る「地上系システム」(2/2 ページ)

» 2004年07月16日 12時01分 公開
[西正,ITmedia]
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 東京都のように特に高層ビルが密集しているケースだと、1局のギャップフィラーでカバーできるのは半径600メートルから1キロ程度の範囲と考えられる。その場合、必要となる設置数は、どのレベルまで受信率を上げていくかにも依存するので、一概には言えないものの、地下への対応を除けば、関東生活圏(東京から50キロ以内)では、サービス開始までに約2000局の設置が必要になると見られている。

 地方都市の場合には、同じギャップフィラーでも、半径2キロから3キロ程度はカバーできるようなので、設置数も少なくて済む。この点で言えば、地方の場合、むしろ200万円で山間部のメディア過疎の解消ができるとすれば、コスト面では魅力的と言うこともできるだろう。

 一方、地上波デジタル放送の目玉商品として期待されているワンセグモバイルも、電波受信が前提である以上、ビル陰対策は不可欠であり、ギャップフィラーの設置が検討されている。モバイル放送のギャップフィラー設置が先行して進められているが、モバイル放送とワンセグモバイルで使用する電波が異なるため、ギャップフィラーの共有はできない。結局、ワンセグモバイルでも、きちんとした地上系システムの構築が課題となるはずだ。

 ただ、ギャップフィラーの設置については、携帯電話の基地局の時と同じ論理で、電波利用料が徴収されかねないという問題も存在する。とはいえ、地上波の中継局とモバイル受信のためのギャップフィラーを同じように扱ったのでは、地上系システムの構築は難しくなる一方だ。もしギャップフィラーに電波利用料を課すにしても、総務省はモバイル受信の防災機能としての性格などを評価し、実態に合った水準に設定すべきだろう。

 ちなみに、スカパーの放送を携帯電話機で受けられるようにするという試みは、同じように衛星放送からの電波をキャッチすると言っても、モバイル放送などと異なり最初から地上系のシステムだけで対応される。つまり、衛星波を受けたところから地上系で中継していくのであり、直接受信については考えられていない。携帯電話端末によるナビゲーションサービスなどと同じ仕組みだと考えればよいだろう。

西正氏は放送・通信関係のコンサルタント。銀行系シンクタンク・日本総研メディア研究センター所長を経て、潟IフィスNを起業独立。独自の視点から放送・通信業界を鋭く斬りとり、さまざまな媒体で情報発信を行っている。近著に、「放送業界大再編」(日刊工業新聞社)、「どうなる業界再編!放送vs通信vs電力」(日経BP社)、「メディアの黙示録」(角川書店)。

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