世界のモバイル市場はいま、移動体と固定網を融合した「モバイルコンバージェンス」サービスや、3Gネットワークといった新たなネットワーク・システムの普及拡大期に入っている。
キャリアグレードのネットワーク製品を多く手がけるNortel Networksに、今後のモバイル業界を展望してもらった。話を聞いたのは、Nortel AsiaのVice President マイク・マーフィー氏と、ノーテルネットワークスのワイヤレスビジネスデベロップメント事業部長、エマニュエル・ソーケ氏だ。
ITmedia Nortel Networksの事業概要を、簡単に説明してください。
マーフィー Nortelは、GPRS、CDMA 2000(1x EV-DO)、UMTSという3種類の次世代ワイヤレス技術をすべて提供する唯一のベンダーだ。CDMAのマーケットでは米VerizonやChina Unicom、GSMでは独T-mobile(GPRS&EDGE)、UMTSではVodafone Spainや仏Orangeなどの採用例がある。
ITmedia 日本のキャリアでは、まだ採用例がないようです。
マーフィー 我々は北米で事業を開始し(Nortel本社はカナダのオンタリオ州)、ヨーロッパ、中国、オーストラリアと事業を拡大してきた。
日本で採用されていないのは単にタイミングの問題で、我々がHSDPAの技術を開発していることを考えれば、(NTTドコモなどに)採用のチャンスはあると思っている。ソフトバンクのような新しいワイヤレス企業が、今後参入してくることもチャンスになる。
ITmedia ソフトバンクのワイヤレス事業に、興味を持っていると。
マーフィー 孫サンの構築しようとしているサービスは興味深い。多様なサービスを1種類の支払いで可能にするもので、ちょうど米国のCATV事業者がデータ通信サービス、通話サービス、TVサービスを提供しているのに似ている。
ソーケ 孫サンのやろうとしていることは、適切な料金のモバイルサービスだ。私は日本の携帯と香港の携帯を持っているが、香港の携帯のほうがはるかに料金が安い。
ITmedia ソフトバンクもそうですが、コアネットワークをIP化して、そこにモバイルと固定網のサービスを融合させる、いわゆる“モバイルコンバージェンス”を志向するキャリアが増えつつあります。
マーフィー パケットベースのCo-Network(共通ネットワーク)は、いろいろと言われているがまだスタートしていない段階だ。技術的には可能であり、次のステップだと思うが……。無線のSIPコールサーバと有線のSIPコールサーバの仕様が異なるなど、問題はある。ただこれは時間が解決するだろう。
いつとは明確に言えないが、数年後には各オペレータがモバイルコンバージェンスのプラットフォームに移行すると思う。Nortelがワイヤレス部門と有線部門を統合したのも、こうした動きに対応するためだ(*編集部注:Nortelは10月から、ワイヤレス部門と固定網部門を統合した新体制を発足している)。
ソーケ このような新ネットワークを構築するには、ゼロから作るほうが早い。ソフトバンクが、最初のモバイルコンバージェンス事業者になる可能性もあるだろう。
ITmedia 世界の3Gネットワークの動向についても教えてください。NortelはGSMとUMTSのデュアルバンド基地局をリリースする予定ですが(11月17日の記事参照)、これはGSMのような現行ネットワークから、UMTSのような次世代ネットワークへ移行するための“過渡期的製品”に映ります。ある種、次世代サービスへの移行が遅れている証拠にも思えますが。
マーフィー UMTSの普及には、2つの問題がある。1つは端末コストで、GSMなどの端末に比べるとまだ高い。もう1つは周波数の問題で、UMTS向けの帯域は2.1GHz帯などに限られているのが現状だ。もっとも、韓国、オーストラリア、シンガポール、マレーシアなどでは政府主導で周波数見直しの動きもある。
ITmedia それらの国では移行が進むと?
マーフィー ただ、NortelのCDMA製品を採用している豪Telstraを例にとってみても、多くのGSMユーザーを抱えている。これをすべてUMTSに移行するには「帯域も足りない、端末もない」という状況なので、時間がかかるだろう。
日本はアドバンスドマーケットであり、3Gネットワークに移行しつつあるが、それでもかなりの時間を要した。日本以外の国では、さらに時間が必要だろう。
ITmedia 日本市場への抱負を聞かせてください。
ソーケ メッセージとしては、Nortelは日本市場に強くコミットメントしていくということ。それから、VoIPコンバージェンス・ネットワークででリーダーシップをとるということだ。
ITmedia 日本でどれくらいシェアをとるか、目標は?
マーフィー&ソーケ 100%だ。
(文中敬称略)
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