ソフトバンク&イー・アクセスは、どんな移動体事業を考えているか

» 2004年10月21日 16時19分 公開
[新崎幸夫,ITmedia]

 ソフトバンクとイー・アクセスが、移動体事業への新規参入を表明している。いずれも免許は下りておらず、表明した段階にすぎないが(関連記事その1その2)事業計画は着々と進められているようだ。

 先週総務省で開催された「電気通信事業分野の競争評価についてのカンファレンス」では、「携帯料金が高いか安いか」「MVNOでの周波数割当状況」などを巡って議論がかわされたが(10月15日の記事参照)、ソフトバンクとイー・アクセスの“新規事業に対する考え方”がかいま見えた場でもあった。いくつか、コメントを抜き出してみよう。

「定額制」への考え方

 PHSはともかく、現状携帯電話のデータ通信に「ADSLのような定額制通信」を望むことは難しい。ドコモの「パケ・ホーダイ」にしてもauの「ダブル定額」にしても、ノートPCにカード型端末を接続して通信を行うようなケースでは、準定額制の料金体系をとっている。

 この理由として、ドコモ、auの関係者とも挙げるのは以下のような理屈だ。「ラストワンマイルが専用線接続されているADSLと異なり、携帯ではラストワンマイルが無線。このため、常時帯域を占有し続けるようなユーザーが出ると、ほかのユーザーに迷惑がかかってしまう」(2003年11月の記事参照)

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 とはいえ、実現できていないからこそユーザーニーズもあるはず。新規事業者として、実現に挑戦するのが筋だろう。実際、ソフトバンクの宮川潤一取締役は「定額制」にかなり前向きなコメントを残している。

 「無線が有限であることは理解しているが、それでも定額のブロードバンドサービスを提供してみせる」

 同氏がアピールしたのは、2.4GHzの無線LANと携帯を融合させること。「2.4GHzを有効利用しつつ、携帯の有限部分と組み合わせる」。これにより、ラストワンマイルの“負荷”を低減できるという。

 「我々は最初から“無線”を目標にしてやってきた。そのために(Yahoo!BBの)モデムの横に(無線LANカードを挿すための)穴ぼこを空けてある」。ユーザーに無線LANカードを送付するだけで、ユーザー宅を無線LANのアクセスポイント化する環境は整っているとうたう。

 イー・アクセスも、同様のことを考えている様子。同社COOの種野晴夫氏は、「ADSLとシームレスなサービスを提供する」とコメント。こちらは通信料金が「定額・低額であること」を今後のビジネス展開として明言している。

「コンテンツはやらない、黒子に徹する」

 ソフトバンクの宮川氏は会場で、何かにつけ「事業展開に支障があるので詳しくは言いたくない」「黙秘権を使いたい」(笑)などと繰り返し、詳細に触れるのを避けた。

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 これに対して、もう少し考え方を補足してくれたのがイー・アクセスだ。種野氏は、既存事業者の料金体系が複雑にすぎると指摘。「我々は、データ通信に適したすっきりしたものにしたい」と意気込みを話した。

 同氏はまた、iモードやEZweb、ボーダフォンライブ!のようにキャリアごとにコンテンツが分かれ、囲い込まれている垂直統合型のビジネスモデルを疑問視する。

 「我々はインフラ屋だと思っている。コンテンツに乗り出すことにあまり興味はない。PCにできるだけ近いかたち(=Webブラウザのみ搭載して専用コンテンツは存在しない)で、オープンにプラットフォームを提供したい」

 イー・アクセスは黒子に徹する考えだとした。


 両社とも「何Mbpsレベルではないが、数百Kbpsレベル」のデータ通信速度を保ち、低額・定額。音声も伝送するという事業を想定していることに間違いはない。固定事業者というバックボーンを考えれば、ADSLとのシームレスサービスも必須だ。

 なお、会場では既存事業者も揃ってシームレスアクセスの重要性に言及した。例えばドコモは「既に無線LAN対応のN900iLをリリースしている」と強調。今後、同カテゴリがひとつの競争分野になることを示唆した。

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