携帯の高機能化はキャリアを困らせる?

» 2004年11月22日 18時32分 公開
[杉浦正武,ITmedia]

 高機能化が進む携帯だが、この流れはキャリアにとって手放しで喜べるものでもないようだ。

 ドコモの常務取締役 プロダクト&サービス本部長、榎啓一氏は、通信事業者としては難しい時代になる――と複雑な胸のうちを明かす。11月19日の「ACCESS DAY 2004」で、パネルディスカッションに参加した榎氏の考えを聞いてみよう。

Photo ドコモの榎氏

携帯は「iPodになる」。しかし……?

 パネルディスカッションでは、携帯の進化の歴史をメインテーマに話が進んだ。「携帯がiPodのようになるか」という問いに榎氏は、「そうなると思う」と答える。

 「ただ、(音楽再生機能に加え)テレビとラジオも載せたとして、それでどうやってもうけるか?」(同氏)

 携帯のマルチメディア化は、即キャリアの収入にはつながらないと榎氏は分析。1セグメント放送対応機をリリースしたとしても、「液晶画面でテレビを見る時間が増えれば、パケット代は減るんだろうな、という気がする」と率直な意見を述べた。そこでどうキャリアのビジネスモデルを確立するかが、課題というわけだ。

 ただし、先行きの不透明さを嫌って“高機能化競争”から降りるわけにもいかない。そう榎氏が考えるのには、過去の経験がある。

 「携帯にカメラが載り出したとき、ドコモが最初に載せなかったので私はえらい怒られたのだが、あのとき考えていたのは『撮った写真をネット経由で送りはしないだろう』ということ」

 画像データをネットワーク経由で送受信しなければ、パケット代が発生しない。当然、キャリアの収入には結びつかない。だからカメラを載せる必要もないだろうとの判断だった。

 「そして、この読みはズバリ当たった。ユーザーは、写真を撮ってもたまに見返したり、待受にしたり、せいぜい友達に画面を見せるぐらいで送受信はさほどしていない」

 だが、1つの誤算があった。店頭で“カメラ付き携帯”とそうでない携帯が並んでいると、ユーザーはついついカメラ付き携帯に手を伸ばすのだという。

 「カーナビと一緒で、毎週末知っているスーパーにしか行かず、旅行などめったに行かないのにカーナビを買ってしまう。並んでいると、お得感があるからだ」

 もちろん、ローエンド端末をほしがるユーザーもいれば、ハイエンド端末をほしがるユーザーもいる。ただ総合的に考えれば、機能面での開発をやめるわけにはいかないという判断だ。

「飽和した市場は悲惨」

 榎氏はまた、「どの産業も(市場が)飽和すると悲惨だ」と指摘する。

 「料金値下げをして、事業者同士で客の奪い合いになる」。携帯の契約者数が8000万を超え、そろそろ成長もゆるやかになった携帯市場は、まさにこの状況に差しかかっている。例えばドコモは、FeliCa携帯の意義の1つは「解約率を減らすことにある」と説明するが(6月16日の記事参照)、これも「ほかのキャリアに奪われまいとする」戦いを意識したコメントといえるだろう。

 榎氏は同じパネルディスカッションで「いろんな機能を載せることで乗り切る。生き残る」とも発言している。この“生き残る”という表現は、上記の状況を考え合わせれば納得しやすい。

 「(携帯の進化は)トレンドとしてはこうなるが、高機能化すれば(端末の)値段も張るし、商売としては大変かなと思う。頭が痛い」。産業としては面白くなるだろうが、通信事業者は結構大変なのだ、と榎氏はボヤくことしきりだった。

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