FIFAワールドカップ2026の開幕に伴い、全試合をライブ配信するスポーツ配信サービス「DAZN(ダゾーン)」についてネットで炎上し、「DAZN SOCCER(サッカー専用プラン)」の料金表示が物議を醸している。
DAZNは同プランで「月額980円」という安さを前面に出しているが、実際は途中解約できない年間プランであり、総額2万6340円の支払いになる仕組みだ。これに対し、SNSでは「だまされた」「ダークパターンではないか」という批判が相次いでいる。
公式サイトの情報やSNSの声から、今回の騒動の背景にある複雑な料金体系と、問題視されることを詳しく見ていこう。
DAZNでは現在、W杯全試合を視聴する手段として、主に2つのプランを用意している。1つは全世界のプレミアムスポーツなど全コンテンツが視聴できる「DAZN Standard」。もう1つは、サッカーコンテンツに特化した期間限定のDAZN SOCCERだ。
W杯に向けたキャンペーンの登録画面には、DAZN Standardの月間プラン(最初の3カ月間は月額1980円)と、DAZN SOCCERの年間プラン(最初の3カ月間は月々980円)が並んで表示される。
W杯の期間中だけ見たい場合、月間プランを選べば大会終了後に解約できる。例えば2カ月利用なら総額3960円(1980円×2カ月)だ。しかし、画面上では年間プランの「980円」という文字が目を引く作りになっている。どちらのプランにも「W杯全試合」と書かれているため、「同じW杯が見られるなら、安い980円の方にしよう」と判断してしまいがちだ。ここが大きな落とし穴になっている。
実は年間プランしかなく、途中解約ができない。最初の3カ月間こそ月々980円で済むが、4カ月目からは通常の月々2600円に戻り、1年間で総額2万6340円を支払うことになるのだ。
SNSで多くのユーザーが怒りの声を上げているのは、この料金プランの見せ方が消費者を錯覚させるダークパターンではないかという疑念があるからだ。ダークパターンとは、Webサイトやアプリで、ユーザーが自分に不利な選択を無意識にしてしまうように誘導するUI設計の手法を指す。
今回のDAZNのケースでは、次の2つの要素がダークパターンの典型例として挙げられ、指摘されている。
第一に、視覚的階層(ビジュアルヒエラルキー)の悪用だ。最も魅力的な「980円」という価格を大きく強調する一方で、「年間契約であること」「途中解約ができないこと」「総額が2万6340円になること」といった重要な契約条件は、文字が小さく一目では分かりにくいレイアウトになっている。
第二に、選択肢を並べることによる錯覚だ。「1980円(月間プラン)」と「980円(年間プラン)」を並べ、「980円の方がお得だ」と誤認させる誘導構造になっている。通常、サブスクリプションサービスで単月の利用を考えているユーザーは月間プランを探すが、金額の安さに気を取られ、契約期間の縛りを見落とすように設計されているという声がSNSで上がっている。
今回の問題の背景には、プラン体系そのものが複雑になりすぎている点もある。
現在、DAZNには無料の「Freemium」、月額980円の「Global」、基本プランのStandard、特化型のSOCCER、「BASEBALL」という5つのベースプランがある。さらに、支払い方法によっても選択肢が分かれる。例えばSOCCERプランの支払い方法はクレジットカードやPayPal、Google Payなどに限られ、モバイルキャリア決済が利用できないといった制限が設けられている。
また、DAZN for docomoやAmazon IAP、AppleのApp Store経由など、間接的な支払い方法を利用しているユーザーは、プランの変更や後述する「一時停止」機能を使う際、直接契約のユーザーとは異なる複雑な条件を課される。この複雑さが、自分に合ったプランを正しく選ぶ際の大きなハードルになっている。
契約システムでは、解約(退会)のハードルの高さも以前から指摘されていた。
利用を最大6カ月間休止できる一時停止機能がある。しかし、この機能は全ユーザーが利用できるわけではない。Apple経由やAmazon IAP決済、Google Playアプリ内課金で支払っているユーザー、DAZN for docomoなどの提携サービス経由のユーザー、そして年間プラン(一括払い、月々払い含む)を利用しているユーザーは、この一時停止機能を使えないのだ。
つまり、今回問題になっている年間プランを誤って契約してしまうと、一時停止で支払いを止めることもできず、1年間払い続けるしか道はない。SNSでは、カスタマーサポートに誤って契約したと伝えて解約を申し出ても、拒絶されたという報告も上がっている。
DAZN SOCCERは、最初の3カ月間月額980円という安さを前面に出しているが、詳細を確認すると途中解約が不可能な「年間プラン」のみの提供となっている。そのため、W杯開催期間中だけといった短期的な契約はできず、最低でも総額2万6340円の支払いが発生する。ユーザーの短期利用のニーズと乖離(かいり)した、誤解を招きやすい契約形態に対しては、多くの批判の声が上がっているYahoo!リアルタイム検索のデータを見ると、今回の件に関するSNS(X)の反応は、ネガティブな声であふれている。
「W杯を見るために980円払おうとしたら2万6340円請求された」「完全にだまされた」といった怒りの声や被害報告が後を絶たない。「決済に使っているクレジットカードを止めるしかないのか」と困惑する投稿も多く見られる。また、消費者庁や公正取引委員会の対応を求める声や、景品表示法や特定商取引法に抵触するのではないか? という意見も出ている。
一方で、冷静な分析や自己責任論も一定数ある。「契約前に規約や条件をしっかり読まないのが悪い」「年間プランと書いてあるのだから詐欺ではない」という声や、「普段からサッカーファンを相手にダークパターンを用いているが、W杯で初めて登録する一般ユーザーがこのわなを回避するのは難しい」「商売やマーケティングの観点からは学びの宝庫だ」と、UI設計の観点からビジネス構造を分析するポストも投稿されている。
月額980円という魅力的な数字の裏に、“年間2万6340円”という現実が隠されていた、今回の料金表示に関する騒動。サブスクリプションサービスが乱立する現代において、企業がどこまで消費者の心理を突いたマーケティングを行っていいのかという、企業モラルの境界線を問い直す典型例といえる。
分かりづらい表示とはいえ、年間プランと記載されている以上、直ちに「詐欺だ」と断じることは難しいかもしれない。しかし、結果として多くのユーザーが「だまされた」と感じ、企業への不信感を募らせていることは、SNSの反応からも明らかだ。大げさだが、目くらましだ――といわれても仕方がないだろう。
消費者ひいてはサービスの利用を検討する人は、目先の安さに飛びつく前に、契約期間、総額、解約条件、支払い方法の制限、実際に使った人の声をしっかり確認して自衛していくしかない。特にスポーツの国際大会など、一時的な熱狂に乗じてサブスクリプションを契約する際は、十分に気を付ける必要がある。
特に他人が使った感想は要確認だ。参考になる意見ばかりではないかもしれないが、実体験に基づく反論や感想は注意深く確認し、少しでも怪しい点や納得のいかない点があれば契約を控えよう。
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