キャッシュレス決済が普及し、人によっては現金を直接やりとりする機会は減っただろう。中でもPayPayの「送る・受け取る」機能は、日常の割り勘や家族間での送金などに非常に便利で、多くのユーザーに日常的に利用されている。しかし、手軽にワンタップでお金が送れてしまうがゆえに、「宛先を間違えて送金してしまった」というトラブルがネット上のQ&AサイトやSNS、個人のブログなどで後を絶たない。
例えば、「友達や家族の昔使っていた電話番号のアカウントに送ってしまったが、既にその番号は別の人に使われているようだ」というケースや、「電話番号を打ち間違えた」「PayPay IDを検索して全く知らない人に送ってしまった」といった悲痛な声が多数聞かれる。中には、送金後にメッセージを送り返して返金をお願いしても未読スルーされたり、着信拒否をされたりして、泣き寝入りを余儀なくされるケースもあったと聞く。
万が一、誤送金をしてしまった場合、焦らずにまず確認すべきことがある。それは相手の受け取り状況だ。「送る・受け取る」機能で送ったPayPay残高については、相手がまだお金を受け取っていない「受け取り待ち」のステータスであれば、システム上で自ら送金をキャンセル(取り消し)することができる。
相手が手動で受け取る設定にしており、そのまま受け取り手続きをしなかった場合は、一定期間が経過すると「受け取り期限切れ」となり、自動的に自分の残高にお金が戻ってくる仕組みにもなっている。
しかし、ここで注意すべきなのが「自動受け取り」設定の存在だ。相手が設定で「自動受け取り」を有効にしていると、こちらが送金ボタンを押した瞬間に、相手の操作なしで即座に「受け取り完了」となってしまう。こうなると、誤送金に気づいてすぐにキャンセルしようと思っても隙がなく、システム上で取り消すことは一切できなくなる。結果として、公式ヘルプにも記載されている通り、「お客さま同士での解決」、つまり相手に直接連絡を取って返金をお願いするしかなくなるのだ。
明らかな宛先間違いであっても、なぜPayPay側で強制的に送金をキャンセル(組み戻し)してくれないのか。「運営なら対応できるのでは」「なんとかしてほしい」と疑問や不満を抱くユーザーの生々しい声をネット上でよく見る。
この点について、PayPay広報は「相手が受け取り完了する前はキャンセルできます。ただし、受け取り完了後は、相手方の残高に渡った状態のため、PayPayで留保している資金等はありません」と、システム上既に資金が移動しきっている事実を説明する。
さらにPayPay広報は「(銀行での組戻しについても相手方の同意が必要だが)PayPayにおいても、相手方が受け取り完了した残高については、相手方に同意・返金していただくことになります」と述べる。金融ルールの観点からも、銀行の振り込みと同様に、一度相手の口座に入った資金を運営が一方的に引き戻すような強制的な介入はできないという明確な理由があるのだ。
そのため、PayPay広報は「PayPayでは、相手方と直接やりとり・相手方からの送金・譲渡ができるため、直接のやりとりをお願いしています。既に受け取りが完了している場合は、受け取り側に連絡を取り、残高を送り返していただくことを検討してほしい」とした上で、「連絡が取れないような、知らない相手との送金のやりとりなどはしないよう、十分に気を付けていただきたい」と注意を呼びかける。
誤送金に気付き、見知らぬ相手に対してPayPay内のチャット機能で「間違えました、返してください」とメッセージを送っても、無視されたり、新手の詐欺と警戒されたりして返金されないケースは多い。このような場合、どう対処すればよいのだろうか。
PayPay広報によれば、「PayPayでは、ユーザーが第三者による乗っ取りなどの不正利用に遭った場合は全額補償していますが、ユーザーが自らの意思で誤送金した場合などには補償の対象外となります」という。自発的な送金操作である以上、運営の補償制度には頼れないのが現実だ。
「飲酒後などに割り勘で誤送金した場合などには、送金相手に連絡を取り、残高を送り返していただくようお願いしています。(「PayPay」では送金などの手数料がかからない)繰り返しとなりますが、連絡が取れないような知らない相手や、あやしい相手などとの送金のやりとりはしないよう、十分に気を付けていただきたい」とPayPay広報は語る。
とはいえ、相手が悪意を持って着服しているような悪質なケースにおいて、ただ泣き寝入りするしかないわけではない。当事者間での解決がどうしても困難な場合は、警察に被害を相談し、公的機関を通じた解決を図る道が残されている。警察等への相談について聞くと、「警察などとの連携については、捜査関係事項照会に基づく情報提供など、事件解決に向けた協力を行っています」と説明する。企業として、警察の捜査には全面的に協力する体制が整っている。
企業側もこうしたトラブルをただユーザーの自己責任として放置しているわけではない。誤送金やそれに乗じた詐欺を防ぐため、システム面での対策を日々強化している。
PayPay広報は「これまでに『PayPay』上でやりとりのないユーザーから請求が来た際は、『心当たりのない請求にご注意ください。初めて請求を受け取る相手です。』という警告を出しています。万が一、誤送金後に請求をする場合は、請求側も、請求を送る前に表示名を設定しないと請求できません」とその仕様について説明する。
さらに、「2023年11月には、過去の利用状況などが一定の基準を超えたとシステムが検知したユーザーに送金する場合に、『詐欺にご注意ください』という警告メッセージを掲出する機能も搭載した」と明かす。また、2024年5月22日からは、誤送金防止策として送金時に相手の表示名だけでなく「PayPay ID」も表示される仕様に変更されており、ユーザーが宛先を確認しやすい環境作りが積極的に進められている。
PayPayは2023年11月から「送る・受け取る」機能での送金時、送り先のこれまでの取引状況に応じて警告メッセージを掲出する機能を搭載し、当時のニュースリリースで詐欺被害の防止に役立てると発表していた(出典:PayPayが2023年11月14日に発出したニュースリリース)不正アクセスやフィッシング詐欺などの対策についても、PayPay広報は「心当たりない請求や督促のメールやSMSを受信した場合には、URLやリンクボタンを開いたりせずに削除してほしい。正当な請求・督促かどうかの判断が難しい場合には、メールやSMSに記載のリンクには絶対にアクセスせず、サービス提供元や納付先の公式サイト・アプリを必ず確認してほしい」と呼びかける。
PayPay広報は、自社での取り組みやユーザー自身でできることについて、次のように回答している。
「弊社側でも、24時間365日のAIシステムと専任スタッフによる不正検知はもちろんのこと、警告メッセージの掲出、利用制限、二要素認証の導入、銀行口座登録時の本人確認、フィッシング通報フォーム、ユーザー向けの注意喚起強化などを実施しています。万が一、詐欺等の疑いがある『送る・受け取る』の取引を行ってしまった場合は、PayPayアプリから報告できます。お知らせいただいた内容は、詐欺被害の防止対策に活用します」(PayPay広報)
手軽にお金が送れる便利なサービスだからこそ、ワンタップの重みは大きい。一度相手の手に渡ってしまえば、法的な原則やシステムの仕様上、企業側が強制的に介入することは難しくなる。送金ボタンを押す前には、表示名やPayPay ID、アイコン画像をしっかり確認し、見知らぬ相手とはやりとりをしないこと。そして、万が一の不正利用やトラブルに備えて、アプリ内の「利用可能額の設定」機能などを活用し、私たち自身の基本的な自衛策を徹底することが何よりも重要だ。
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