インタビュー
» 2005年10月03日 17時38分 UPDATE

「デザイン」とは「つなぐ」こと──コラボレーションの結晶「P701iD」(後編) (1/2)

「開発者、デザイナー、通信キャリア」という異なる分野の専門家が、互いの言い分を理解しながら開発を進めた「P701iD」。3者共同プロジェクトは端末にどんな付加価値をもたらしたのか。

[野田幾子(聞き手:後藤祥子),ITmedia]
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 「P701iD」(記事一覧参照)のデザインを担当した佐藤卓氏に開発プロセスをインタビューする本企画(前編参照)。後編では、3者のコラボレーションが端末にどのような付加価値をもたらしたのかを聞いた。

 テレビ番組のアートディレクションから食品のパッケージまで、幅広いジャンルにわたってデザインを手がける佐藤卓氏。P701iDをデザインするのは、ほかのプロダクトのデザインを手掛けるのと、何か異なる点はあったのだろうか。佐藤氏は「チューインガムをデザインするのと似た感覚でした」と話す。

 「例えばメガネならたくさん所有できるし、気分によって変えられます。でも、ケータイを複数持つ人はまれでしょう。ファッションや状況にこだわらず同じケータイを持ち歩くわけだから、その点において、チューインガムと立ち位置が同じ。ですから、P701iDの外観はニュートラルでなければならないと考えました」

 こうした発想から、P701iDのフォルムやメニュー画面のグラフィックは可能な限りシンプルなものにしたという。また「光を使ったコミュニケーション」が引き立つようにボディの色は強い彩色を避けている。以下、佐藤氏が特に力を入れたというポイントをいくつか紹介しよう。

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  • 生き物のように光る「ヒカリドロップス」
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 例えば人が、「今日は○○さんの元気がない」と判断する決め手は目や口元のちょっとした動きや表情だったりする。そんなコンマ何ミリの微妙な情報を受け取る能力が人間に備わっているのであれば、光をデリケートなコミュニケーションツールとして捉えたらどうか──。こうしたコンセプトから、光を単純に点灯・点滅させるのではなく、生き物の鼓動のように感応的な光り方をするよう工夫を重ねた。

飛行機内のベルト着用サインのオン/オフ時に鳴る「ポーン」という音、潜水艦のレーダー、水滴、カウベルなど、シンプルながらも個性的な音を揃えた。佐藤氏自らがスタジオで演奏したコンガのリズムも搭載。サルサやメレンゲ、ボンバなど、ラテン音楽好きなユーザーを“にやり”とさせるラインアップになった。

  • 形状/色
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 佐藤氏がドコモにプレゼンテーションしたのは、「ケータイに見えないケータイ」という考え方。一見したときの意外性から、ユーザーの興味を導き出すのが狙いだ。最初に提案したモックアップは、まさに「長方形の板」に近いもので、カメラや背面液晶は備えていなかった。ドコモとパナソニック モバイル、佐藤氏の3者間でユーザーが本当に必要としている機能は何なのかを何度も議論した結果、普及モデル」としての使命を持つ701iシリーズにはこうしたデバイスを搭載することが決まった。

 「1枚の板」というコンセプトをそのまま形にしたスクエアさは、とがったものになりすぎていた。「これでは一般のユーザーが戸惑うのではないか」──この意見を受けて佐藤氏は、角に丸みを付けた端末もデザインしてみた。しかし、丸みのある形状ではこれまで発売されていたものと似通ってしまい、3者コラボならではの存在感が薄れてしまう。

 どちらか一方の形状を選ばなければならないが、エッジが効きすぎても埋没しても困る……。結論を出せずに行き詰まったところで「2つの形状を出したら面白いのでは」というアイデアが生まれた。1つの端末をベースにバリエーションが2つというのは、かつてない試み。コスト面などを考えると端末メーカーとしては難しい選択だったが、企画・開発陣の熱意がGOサインを引き出した。

 直線をより際だたせるためスクエアには「グロス」を、丸みや親しみやすさを表現したいラウンドには「マット」を──。それぞれのフォルムをより引き立たせる質感を選択したのもポイントだ。

  • 待受画面
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 多くの端末にプリセットされる待受画面は、動物や都会/自然の風景写真など無難なものが選ばれている。しかし佐藤氏は、ほとんどの人は自分の家族やペットの写真など、好きな画像に差し替えて使うだろうと思った。「それならP701iDには、普段手に入らないような画像を入れたらどうだろう」(佐藤氏)。そこでP701iDには原寸の畳や方眼紙など、「どうしてこれが待ち受けに?」とユーザーが不思議に思うような画像を用意。佐藤氏がこれまで発表してきた連作のインスタレーション作品、「バーバーサインのある風景」も収められている。

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