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» 2005年10月20日 00時05分 UPDATE

“キュートな小さなカラフルなもの”――“TT”のデザインに込められた意味は?

工業デザイナーが、W-SIMモジュール設計の段階から関わった“TT”。TTのデザインの意味は? ターゲットユーザーは……? デザイナー山中俊治氏に聞いた。

[吉岡綾乃 斎藤健二,ITmedia]
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リーディング・エッジ・デザインの山中俊治氏

 山中俊治氏は、自動車、ロボットなど、幅広いジャンルの製品を手がける工業デザイナーだ。Suicaの読み取り機に付いている、カードを手で持ってかざしているデザインも、山中氏の手によるものである。

 今回発表された“TT”“DD”の開発だけではなく、山中氏はW-SIMモジュールの開発から関わった。“2年半という、通常の携帯電話としてはかなり長い開発期間がかかりました。しかし、基礎技術からと考えると(2年半は)かなり短い。すべてのデザインはここから始まりました。単なるデザインプロジェクトではありません」(山中氏)

 山中氏は、もともと携帯の開発に興味があったわけではないという。「2年半前のことですが、ウィルコムの“ミスター104”と呼ばれる人から電話がかかってきて、『新しいアイデアがあるんだけど、どうだろうか』と話がありました。私は、最初から携帯をやりたかったわけではないのです。こんなにのめりこんだのは、技術コンセプトを(ウィルコムから)聞いたから。話を聞いて、『これは世界が広がる』と思ったのです」

 TT、DDはそれぞれ“Tiny Talk”“Data Driver”の略だとプレスリリースには書かれているが、もっと前からTとDと呼ばれていたと山中氏は話す。「もともと、“T”と“D”と呼んでいました。ただの開発コードだったんです。そのうち、“TT”“DD”とダブルクオーテーションで囲んで呼ぶと、リズム感もあっていいね、ということになりました。そこで『Tiny Talk』『Data Driver』とそれらしい名前を付けて、“TT”“DD”という名前にしたのです」

ay_tt00.jpg 山中氏が手がけた製品群。右上に見えるのが、Suicaの読み取り機に採用されているデザインだ

キュートな小さなカラフルなもの――従来のウィルコム商品と違うターゲットを

 TTはサイズが小さいだけでなく、機能的にも絞ったものになっている(7月7日の記事参照)。TTにはWebブラウズ機能が付いていない。メール機能も、ライトメール(全角45文字まで送受信可能)とライトEメール(受信は全角123文字まで、送信は全角103文字まで)しかない。先に発表されたウィルコムの通常端末(9月27日の記事参照)が機能満載だったのに比べると、TTの機能は非常にシンプルだ。

 「TTは、W-SIMモジュールの出発点。最初のものだから、モジュールを受け止める、ミニマルなものにしたかった」(山中氏)

 TTのターゲットは、と山中氏に聞いてみた。「コンセプトは“キュートな小さなカラフルなもの”。従来のウィルコムの商品はビジネスマン向けだった。今回はそうでない人──女性もそうだし、携帯を深く理解していない人に向けた製品にしました。Easy to useを意識しています」

ay_tt01.jpg 本体サイズが小さいだけでなく、背面がゆるやかな弧を描いているため、手にすっぽりとなじむ。66グラムという重さも適度だ(左)、ボディカラーは、グリーン、ブルー、レッドの3色。本体にぴったりフィットする専用充電器が付属する
ay_tt02.jpg 通常、数字キーの上に配置されている発話キー/終話キーが本体の側面にある点が珍しい。「ボディ全体を使うデザインにした。最初はとまどうかもしれないが、手に持ったときに発話キーと終話キーが使いやすい位置に来るようになっている」(山中氏)

 携帯電話の開発では「より小さく」「より薄く」がしばしば話題になる。しかしTTの場合、単に小さく薄くするだけではだめだった、という。

 「メーカーによっては、最初から形が決まっていて『これを格好よくしてくれ』と(デザイナーは)依頼されます。それでもプロとして全力を尽くしますが、今回は違った。制作側から『ここまで薄くするのにどれだけ苦労したと思っているんですか』と言われました。でも『この端末は小さくすることだけにすべてを賭けてはいけません』と逆に説得したんです」

 もう1つ、山中氏のこだわりが表れているのが、W-SIMモジュールの抜き差しだ。TTにW-SIMモジュールを抜き差しするには、本体の中央部にW-SIMモジュールを深く差し込み、上部のフタをかぶせてロックをかけるようになっている。これは“抜き差しの作法をデザインしたもの”だという。「抜き差しの方法が分かりやすく、しかしあまりに抜き差しがしやすすぎるのもいけないと考えた」(山中氏)。また、W-SIMモジュールの上部にはゴムに似た柔らかい素材が使われている。「他の部分とは違う素材を使いました。重さは増えますが、抜き差しするときに緩衝材としての役割を果たします」

ay_tt03.jpg W-SIMモジュールとTT(左)。W-SIMモジュールの上部には、グレーのゴム素材が使われている(中)。裏側にはくぼみが少し付いており、手にフィットする。なお、底面の銀色の突起はストラップを付ける穴(右)

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