HSDPAによりモバイルは次の時代へ──Ericsson3GSM World Congress 2006

» 2006年02月15日 12時50分 公開
[末岡洋子,ITmedia]

 2月13日、「3GSM World Congress 2006」にて、大手ネットワーク技術ベンダのEricsson(スウェーデン)はプレス発表会を開催。CEOのカール−ヘンリック・スヴァンベリ氏がHSDPAIMSなどの最新技術動向と同社の事業戦略について展望を話した。

Photo EricssonのCEO、カール−ヘンリック・スヴァンベリ氏

HSDPAは高速モバイルブロードバンドの始まり

 まず、昨年からテスト運用やデータ通信カードでのローンチが始まっているHSDPAに関して、スヴァンベリ氏は「HSDPAにより高速モバイルブロードバンドの時代が幕を開ける」と述べた。HSDPAは既存技術である3G(W-CDMA)のアップグレードであることから、オペレータにとってリスクが少ないだけでなく、将来も投資保護を約束する技術だという。また、その速度と容量により、新しいエコシステムの確立が可能で、「オペレータにとっては重要なマイルストーンになるだろう」とも話す。

 ネットワーク技術であるHSDPAと合わせて同氏が言及したのが、インフラ技術のIMS(IP Multimedia Subsystem)だ。IPベースのソリューションとして、コンテンツ側のモバイルブロードバンド時代を支えるという。FMS(Fixed to Mobile Substitution:固定からモバイルへの移行)で重要となる技術で、Ericssonは18件の契約を獲得、トライアルも37件が進んでいるという。

 Ericssonはこの日、最新の3Gベースの基地局「RBS 3000」を発表。大きな支出になる基地局用の敷地を30パーセント削減できるほか、キャパシティは最大で150パーセント改善できるという。データのスループットでは、1Gバイトを転送するのに要するコストが1ユーロにまで削減できる、モジュールベースの構成をとり、オペレータの技術ステップにあわせて、柔軟にソリューションを最適化できるという。同社によると、RBS 3000は今後、スーパー3Gをサポートする予定だ。同社のGSM/W-CDMA網におけるシェアは35パーセントで、2007年には3G(W-CDMA)のカバーエリアが全携帯電話加入者の8割になると予想している。

 スヴァンベリ氏はモバイルブロードバンド時代のコンテンツの例として、モバイルテレビを挙げる。テレビはユーザーにとって体験済みのコンテンツであり、親しみやすいことなどから、モバイルでは音楽の次に来るトレンドといわれている。既に世界に40のネットワークが立ち上がっているという。

 なお、同社は昨年発表したネットワークベンダー、英Marconiの買収に関して、固定、メトロネットワーク、IPバックボーン、IMS、サービスのすべてにフィットするとして、合併効果が期待できることを強調した。今後もMarconiブランドを維持するという。

米Napsterと提携、サービス事業を強化

 Ericssonはこの日、米Napsterと提携し、音楽サービスをオペレータに提供するホスティングサービス「Napster Mobile」も発表した。オペレータは自社でインフラを持つことなく、Napsterの持つ120万曲のラインアップを利用した音楽サービスを開始でき、成長に合わせて拡大できる。同サービスでは、NapsterがPCで提供しているのと似た操作体系をモバイル端末でも提供、楽曲の購入のほか、顧客の嗜好を学習し、お薦めの楽曲を知らせる機能もある。すでに米SunCom Wirelessが採用を決定しており、2006年前半に開始するという。

 Ericssonは現在、サービス分野で管理サービスとホスティングの2つの事業を展開している。顧客はそれぞれ約30社で、現在同社の全売り上げの28パーセントを占めるという。現在、サービス担当者は世界に2万1000人おり、オンサイトでのサポートからワールドワイドの展開まで幅広く支援している。ネットワーク機器市場の成長がゆっくりと減速する中、今後はコンサルティング、トレーニングを含め、サービスを強化する。

 インタビューに応じたスヴァンベリ氏は、「次のフェーズの始まりに過ぎない」と語る。「音声通話のための携帯電話がマルチメディア端末になり、モバイルテレビ、エンタープライズとさまざまなサービスが生まれている」とスヴァンベリ氏。今後も「顧客のニーズに応じてサービスを提供する」と述べ、今回のようなホスティングサービスのラインアップ拡充についても意欲的な姿勢を見せた。

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