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» 2006年03月02日 23時53分 UPDATE

MediaFLO Day:携帯向けに特化した放送技術「MediaFLO」

米Qualcommがまもなくキャリア向けのサービスを開始する「MediaFLO」は、携帯向けに特化して真っさらの状態から開発された放送技術だ。

[園部修,ITmedia]

 日本では、一部地域で「ワンセグ」(ISDB-T)の試験放送が既に始まっていることもあり、米Qualcommの「MediaFLO」はワンセグのライバルとなる新手の携帯電話向け放送技術として取り上げられることもある。しかし、「MediaFLOは、ほかの放送技術とはそもそもの成り立ちが異なる」とロブ・シャンドック副社長はいう。同氏にMediaFLOの優位点と特徴について聞いた。

MediaFLOの優位点は「携帯電話向けに特化していること」

Photo 米Qualcommのエンジニアリング&マーケット・デベロップメント担当副社長、ロブ・シャンドック氏

 MediaFLOの最大の特徴は、当初から携帯電話をターゲットに開発している点だ。日本のワンセグや、欧州などで導入が進んでいる「DVB-H」のように、もともと常にコンセントから電源が取れるテレビをベースに、携帯向けに設計しなおしたシステムでは、消費電力を抑えるために機能を間引いたりしているため、快適さも同時に失われてしまうことがある。しかしMediaFLOは、真っさらな状態から携帯での利用に特化した設計を採用しているため、低消費電力と快適な操作を両立している。

 この違いが如実に表れるのが、チャンネルの切り替え速度だ。例えばDVB-Hでは、消費電力を抑えるため、チャンネルのデータ(放送波)を数秒間に1回しか取得しない仕様になっている。このため、チャンネル切り替え操作を行っても、3から4秒待たされるのが普通だ。高速にチャンネルを切り替えようとすると、チャンネルデータの取得を頻繁に行うよう設定する必要があるが、そうすると電力消費量が高くなってしまい、バッテリーで駆動する機器には向かない。

 一方MediaFLOは、あまり電力を使わずに、秒間4回チャンネルデータの取得を行う。テレビのように瞬時にとまでは行かないものの、1.5から2秒(最終目標では1.5秒以下)という、より短い時間でチャンネルが切り替えられる。レスポンスのよさは快適さに直結するため、非常に重要視している要素だという。

 ちなみにワンセグ放送では、チャンネルを切り替えると数秒間は何も表示されないか「選局中」といったメッセージが表示されるが、MediaFLOの放送ではチャンネル切り替え操作を行った後、実際にチャンネルが切り替わるまでの間は前のチャンネルがそのまま流れ続ける。画面が停止したりブラックアウトしたりしない点も、なかなかよく考えられているといえる。

 消費電力の目安としては、850mAの電池を使った一般的な携帯で、約4時間の連続視聴が可能という数値を公表している。周波数の利用効率も高く、同じ周波数幅を利用した場合、ISDB-TやDVB-Hよりも多くのチャンネル数を確保できるという。

MediaFLOで配信する情報は4種類

Photo MediaFLO USAでサービスを提供する際の、配信情報の種類と数

 「放送」の面ばかりが話題になっている感もあるMediaFLOだが、扱える情報は以下の4種類となっている。

  • ビデオストリーム
  • オーディオストリーム
  • クリップキャスティング
  • IPデータキャスティング

 ビデオストリームは、H.264ベースのコーデックを用いた、QVGA(320×240ピクセル)の30fpsで放送される番組で、いわゆるテレビ的な放送の部分だ。このほか、aacPlusコーデックを採用したオーディオストリームの配信も可能で、ラジオのような形態のステレオ放送にも対応する。

 クリップキャスティングは、KDDIが提供しているEZチャンネルのような、一定間隔で動画コンテンツを端末に配信して蓄積しておき、ユーザーは好きなときに再生できるというもの。配信間隔や配信するデータの長さなどはコンテンツ毎に設定可能だ。米Qualcommでは、MediaFLOの機能の中でもクリップキャスティングこそが最も利用される機能だと考えているという。

 IPデータキャスティングでは、端末に向けて一斉に情報配信が行える。BREW上で動くユーザーインタフェース(UI)カスタマイズ技術「uiOne」と組み合わせれば、例えば株価や天気、スポーツの試合結果などを待受画面に表示したり、緊急災害情報を配信したりすることも可能だ。

 端末の性能にもよるが、高機能な端末ではビデオとIPデータキャスティングの配信データを同時表示するようなアプリケーションも実現可能だという。

PhotoPhotoPhoto ここに挙げたのはMediaFLOの配信技術を応用したアプリケーションの例だ。左はビデオオンデマンドのようなサービス、中央はIPデータキャスティングの応用例、そして右がさまざまなアプリケーションのイメージとなっている。

 米国でMediaFLO USAが提供予定の、700MHz帯の6MHz幅を使ったサービスでは、ビデオストリームが最大20チャンネル分、オーディオストリームは最大10チャンネル分配信できる。クリップキャスティングでは1日に合計800分(13時間20分)ぶんのデータが配信可能。この800分とデータを配信するタイミングは自由に分割でき、10分のコンテンツを80本配信したり、5分のコンテンツを160本配信したりと、コンテンツ側が個々に設定を選べる。IPデータキャスティングについては特に制限はなく、多くの人に大量のデータが送信できる。

 米Qualcommでは、MediaFLOの日本市場への展開も当然検討しており、すでにKDDIとクアルコムジャパンが共同で企画会社「メディアフロージャパン企画」を設立している(2005年12月22日の記事参照)。現段階では周波数の獲得もまだであり、不透明な要素は多いが、機能自体はRF受信用チップとOFDM復号化チップを追加するだけで対応できる。コスト的にもワンセグ用のチューナーを搭載するよりは安い上、有料課金モデルを採用すれば携帯電話キャリアにもメリットは大きいため、早ければ2007年ころからのサービス提供を目指したい考えだ。

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