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» 2006年03月30日 20時25分 UPDATE

第4世代移動通信システムワークショップ:携帯キャリア3社が語る、次世代の移動通信

総務省主催の「第4世代移動通信システムワークショップ」で、携帯キャリア3社がそれぞれの次世代通信網戦略について話した。

[江戸川,ITmedia]

 4Gとは何か。研究開発はどこまで進んでいるのか。横須賀リサーチパーク(YRP)で、総務省の主催する「第4世代移動通信システムワークショップ」が3月29日に開催された。各社の取り組みを紹介しよう。

 第4世代移動通信、いわゆる4Gは、その時々で「Beyond 3G(B3G)」「Beyond IMT-2000」「IMT-Advanced」のように呼び名を変えることがある。Beyond(かなた)やAdvanced(上級の、進歩した)の名のとおり、4Gは3G(IMT-2000)の進化系という位置づけだ。ここに、3GLTE(LongTerm Evolution)が加わって、4Gに至るまでの各社のロードマップができつつある。

ドコモの4Gは2015年にスタートか?

Photo 尾上氏は、FOMA契約者の順調な伸びの要因は、料金体系の整備、端末の品ぞろえ、サービスエリアの拡大などにあるとし、「日本以外で商用サービスを開始したオペレーター数の増加にも比例している」と国際的な広がりも強調した

 今回のワークショップでは、関連団体やメーカーの講演だけでなく、国内の携帯キャリア3社もそろって登壇した。キャリアの1番手として登場したのがNTTドコモ。IP無線ネットワーク開発部長の尾上誠蔵氏は、2年前の発表段階から計画が順調に進んでいることを踏まえ、4Gに向けた3Gの展開シナリオを紹介した。

 ドコモでは2006年にHSDPAを採用し3Gの高速化を果たした後、上りを高速化するHSUPAの導入に着手。さらに「スーパー3G」の準備に入る。スーパー3Gは「3.9G」とも呼ばれ、3Gから4Gへのスムーズな世代交代を実現するという役割を担う。

Photo 2015年ごろの4G登場によって2Gが完全になくなり、2020年ごろに向けて3Gは徐々にスーパー3Gに置き換わっていくと予測する

 さらに尾上氏は4Gの実験の模様として、時速30キロ程度で走行する実験車で、安定したスループットが得られることを動画で紹介。MIMOの採用によって24チャネル(約700Mbps)分の映像がスムーズに受信される様子が会場のスクリーンに映し出された。

4Gさえも飲み込むKDDIの「ウルトラ3G」

Photo 2010年ごろのウルトラ3Gでは「FTTHでネットワークに接続された家庭用テレビに相手の顔を映し、会話は携帯電話で行うというスタイルのテレビ電話も実現できる」と話す安田氏

 KDDIの執行役員で技術統轄本部長を務める安田豊氏は、同社の今後の計画として、3.1Mbpsでの通信に対応したCDMA 1x EV-DO Rev.A端末を2006年に投入することを明言。さらに約15Mbpsを実現するRev.B(NxEV-DO)や、IMT-Advancedに相当する、通信速度100MbpsオーバーのEnhanced CDMA2000を投入する予定だ。

 KDDIの提言する「ウルトラ3G」は、ネーミングだけをみるとドコモのスーパー3Gによく似ている。しかし本命となる4Gへの助走路という位置づけのスーパー3Gに対し、ウルトラ3Gは4Gの概念も含んだものとなっているのが大きく異なる。ウルトラ3Gとは、3Gや4Gといったモバイルネットワークだけでなく、無線LANなどのワイヤレスネットワークから光ファイバやADSLなどの固定網を含めたいわゆるFMC(Fixed Mobile Convergence:固定と移動の融合)ネットワークのことである。

 ウルトラ3Gでは、IPベースのネットワークにアクセスする手段として、さまざまな技術を組み合わせられる。現行の3Gはもちろん、IEEE802.11a/b/gから11n、11e、11iといった無線LAN、IEEE802.16eとして標準化された「モバイルWiMAX」、そして第4世代移動通信のIMT-Advancedだ。ここであえて4Gという言葉を使わないのは、ウルトラ3Gのネーミングと混乱させないための配慮かもしれない。

Photo 2006年中にEV-DO Rev.A対応の製品が登場。音楽配信、電子マネー、地上デジタルなどを今後の重要なコンテンツサービスと位置づけているのが分かる

ボーダフォンは4Gで増加するトラフィックなどを研究

Photo 「これまでは加入者の伸びが収益に直結したが、これからはトラフィックが伸びても定額制導入の影響で収入は伸びない。設備投資がこれまでと同じようにできるとは限らない」と語る野寺氏

 キャリアとしては最後に登場したのがボーダフォン。技術本部テクノロジー開発部長の野寺義彦氏は、ソフトバンクによる買収の件(3月17日の記事参照)が関係しているのか、HSDPA導入など将来への具体的な戦略には触れず、業界全体を見渡し4Gの普及に必要な条件などを発表した。

 「2Gから3Gへの流れを見ていると、3Gから4Gに切り替わるのに5年かそれ以上かかるように思われる。だが、グラフの縦軸を加入者数ではなく、トラフィックのボリュームに置き換えると、携帯電話の市場がまだ飽和していないことが分かる。1人当たりのデータ量が数倍、もしくはこれから先10倍以上になるという予測もできる。ネットワークに必要な容量も相当に大きくなるだろう」(野寺氏)

 将来的に端末が50Gバイト程度のHDDを搭載したり、外部メモリカードも10Gバイトクラスへと進化することが考えられるが、これらは単に記憶領域が大きくなったというだけでなく、蓄えられたデータがネットワークに流れ出すということを表していると野寺氏は指摘する。一見、無関係なように見えるVGA液晶画面の採用も、ネットワークにとってみれば負荷が増す一因となるわけだ。

 また、2Gと3Gのようにネットワークが全く異なる場合、急速な世代交代によってある日突然新しいネットワークに負荷がかかるようになる。4Gの準備期間として各社が3.9Gを採用しようとしている理由の1つがこれだ。ボーダフォンではこうした研究を重ね、自社のネットワーク構築に生かす考えのようだ。

 野寺氏は最後にIPR(Intellectual Property Rights)、すなわち知的財産権の問題に触れた。「プレーヤーの少なかったGSMの頃とは違い、業界の拡大によって今は関係するプレーヤーが多すぎる。どこがどういうIPRを持っているのか早い時期に整理しなければならない。IMT-Advancedの標準化にあたってIPRのライセンス問題を解決し、各社が安心して公平に利用できるよう実現していきたい」

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