携帯音楽配信や着メロが消える?──韓国で「音源供給中断」宣言韓国携帯事情

» 2006年06月12日 23時55分 公開
[佐々木朋美,ITmedia]

 韓国でもいち早くサービスが始まり、活況を呈している携帯電話向けの音楽配信や着メロのサービス。しかし、そんな携帯電話向けの音楽市場が危機に直面している。音楽配信による収益の分配率を巡って、韓国の音楽業界や関連団体と、携帯キャリアが対立中なのだ。音源供給の停止も辞さない音楽業界側と、利益を損なわない程度の分配率で事態を収拾したいキャリアが合意する日は来るのだろうか。

「音源供給中断」宣言

 5月27日、30人以上の有名アーティストと音楽製作会社が記者会見を開き、携帯向けの音源供給を中断するという衝撃的な宣言を行った。

 300以上の音楽製作社が所属している韓国演芸製作者協会は、それまでにもキャリア3社と音源に関する収益分配の条件について交渉を続けていた。音楽製作者の収益分配率は、現在売り上げ高の25%となっているが、同協会はそれを45%にまで引き上げるよう要求している。

 27日以前に行われていた3キャリアと韓国演芸製作者協会との交渉では、韓SK Telecom(以下、SKT)との協議が決裂。韓KTF、韓LG Telecom(以下、LGT)とは今後の方策を模索していくことで合意した。

 同協会が提示した条件で合意が形成できない場合、6月7日から順次音源の供給を中断するというのが、27日に発表された内容だった。もし音源供給が中断されれば、ユーザーは音楽配信だけでなく、着メロや呼び出し音用のメロディ(リングバックトーン)まで利用できなくなるという危機。相互の利益が絡むことから話し合いは難航し、結局最終交渉は6月2日にまで持ち越されることとなった。

 そして6月2日、韓国演芸製作者協会と3キャリアが会した最終会議の場で決定したのは「今後1カ月間で最終案を発表する」こと。そして「1週間ごとに同協会のタスクフォースチームと、キャリアで会議を開き、合意していく」ことだった。

 ただし、音楽会社の中にはこの時点で既に音源の供給を止めたところもあり、キャリアやユーザーに少なからず影響が出始めている。これほど強硬な姿勢を見せる音楽業界と、あくまで自分たちの利益を守りたいキャリアが、どのような妥協点を見いだすのか注目が集まっている。

転機を迎えた音楽配信サービス

 韓国における音楽配信などによる収益分配率は、約33%程度に設定しているキャリアが多い。このほか先にも出たように音楽製作者が約25%、コンテンツプロバイダー(CP)などが約19%、残りは歌手などの当事者や作詞家、作曲家などで細かく分配する。ただしCPはキャリアの子会社である場合も多いため、キャリアは多いときには約60%以上の利益を得ていると見られる。

 キャリアがここまで大きな利益を得られる理由はなんだろうか。それは韓国における携帯電話向けの音楽配信市場が、キャリア主導で育てられてきたことに起因する。

 それまで不法な音楽配信やP2Pでのファイル交換などが主流だった韓国において、2004年末から次々と開始されたキャリアによる音楽配信サービスは、大々的な宣伝と携帯電話で音楽を聴けるという利便性から、いくつかの不法音楽流通サイトを廃止させるほどの勢いで広まった。一方でユーザーに「音楽は有料」という意識を植えつける効果もあげ、ここまで市場を作り上げたキャリアの努力は大きく評価される。ただしこうしたサービスが、キャリア中心の市場を作ってしまう原因にもなった。

 3キャリアの音楽配信サービスの利用料が、基本的に5000ウォン(約590円)/月でダウンロードし放題で、ストリーミングなら聞き放題となっている点も問題視されている。こうした料金は当初「音楽は無料」という認識が強かった韓国のユーザーが、有料になっても抵抗がないようにと設定されたものだが、これではユーザーが音楽をダウンロードすればするほど収益分配が少なくなることにつながる。

 収益分配率への不満論に対し、キャリア側は音楽配信システムの管理などにかかる手間などを挙げ、現行の収益分配率は妥当なものとの意見を示している。有料音楽市場の基盤を作り上げたキャリアと、携帯音楽市場が大きな収入源となっている音楽業界は、お互い一歩も譲らない。

 収益分配に関してというよりは、今になって論議が湧き出てきている点にも問題を感じざるをえない今回の騒動。逆にサービス開始当時にはこうした状況が予想だにできなかったほど、韓国の携帯電話向けの音楽市場が急激に成長している証拠かもしれない。やっと根付いてきた有料音楽市場を萎縮させない、慎重な対応が必要だろう。

佐々木朋美

 プログラマーを経た後、雑誌、ネットなどでITを中心に執筆するライターに転身。現在、韓国はソウルにて活動中で、韓国に関する記事も多々。IT以外にも経済や女性誌関連記事も執筆するほか翻訳も行っている。


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