携帯電話によるフル楽曲配信。それは、PCプラットフォームでの音楽配信サービスへの挑戦状かもしれない。
KDDIは11月下旬から、楽曲を1曲フルに配信するサービス「着うたフル」を1X WIN向けに提供すると発表した。6サイトで約1万曲が配信される予定で、価格はサイトにもよるが「1曲数百円になるだろう」(KDDI)。
携帯上で楽曲を再生して楽しめるほか、従来どおり着信音としても設定できる。バッテリーの持ちは、スピーカーで連続再生した場合で5時間弱、イヤホン再生なら9時間程度となる。
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KDDIの小野寺正社長は、同社はこれまでも「着うた」「FMチューナー搭載携帯」などで携帯で音楽を聴くサービスの可能性を模索していたと話す。
「その結果、着うたは2004年9月末時点で1億2700万ダウンロード。auを代表するコンテンツに成長した」(同氏)。しかしこの流れの中で、30秒のサビだけでなく、1曲まるごと配信してほしい――というニーズも聞こえてきたという。
そのため「レーベルなどと共に可能性を探っていた」。
着うたフルを実現させるにあたり、KDDIが工夫したことの1つがコーデックだ。同社コンテンツ・メディア本部長の高橋誠氏は、新コーデック「HE-AAC」(High Efficiency AAC)を採用したと話す。
「端末に盛り込めるか分からなかったが、やっと実現できた」(同氏)
HE-AACは、AACとして標準化されている最新の規格。日本で音楽ダウンロードサービスに利用されるのは初めてで、「携帯向けにいち早く採用した。今後は、対応する音楽プレイヤーも出てくると聞いている」(KDDI)。
KDDIによれば、既存のMP3やAACコーデックでは音質とファイルサイズの兼ね合いに課題があった。HE-AACでは48Kbpsのビットレートで、ファイルサイズを1.5Mに抑えることが可能。音質は、ブラインドテストで「オリジナル音源の75%以上の音質」との評価を得たという。
「もっとクオリティ上げることも可能だが、この音質が一番いい、おとしどころだと判断した」
著作権保護にも気をつかった。KDDIは今回、着うたフル用にオフィシャルのサーバを立て、コンテンツプロバイダとIP-VPNで結んだ。これにより、楽曲をセキュアにアップロード可能にしている。
端末側は、CPRMによる暗号化に対応したほか、「ユーザーバインド方式」(7月12日の記事参照)のムーブに対応。端末の番号が同じなら、コンテンツをSDカード経由で移動させることができる。
もっとも、SDカード経由でムーブできるようにするかどうかはエンコード時に、コンテンツプロバイダが判断する。KDDIでは「おおむね(ムーブを)許容しているようだ」とした。
高橋氏はまた、auならではの2.4Mbpsの高速通信、ダブル定額による料金体系も着うたフルを提供する上で欠かせないと強調する。
「楽曲は、30〜40秒でダウンロードできる。着うたフルは、我々の執念みたいなサービス。簡単には追随できない」
小野寺社長は、最近ではiPodのヒットなどで音楽配信サービスも市場を拡大しつつあると言及する。その上で、着うたフルはPCの音楽配信を上回るものだとコメント。
「身近な携帯に“直接”、この直接ということが重要だ。iPodはネットで落とした後、端末に楽曲を入れ替える作業が必要。我々のサービスでは直接楽しめる」
高橋氏も、着うたは従来から「人に聞かせて楽しむ」「自分で聞いて楽しむ」ユーザーが多いことを紹介(下写真参照)。単なる“着信音”を超えたサービスであり、延長線上には音楽配信ビジネスが成立しうることを示した。
小野寺氏は、着うたフルは人を感動させるクオリティを持つとして、auは「感動ケータイ」を目指すとコメント。「auは感動ケータイへ。これからも進化を続ける」とうたった。
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